「カラスをいじめると17年間復讐される」という研究結果に学ぶもの。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:カラスに付きまとわれているあなた。最長17年間のカラス・ストーカーに悩まされるかもしれない。でも、それでも人間は身近な動物との共生を考えなくてはならない理由とは。
カラスの復讐が始まっている
僕の知り合いに、犬の散歩に行くといつもカラスに襲われる人がいます。
カラスは急降下して、彼の頭をつつき、また飛び立っていきます。
彼は10年間、カラスの襲撃に悩まされています。
思い当たることはないのか、と聞いたところ、「カラスが巣を作ったので、排除した」とのことでした。
しかし、彼を襲うカラスは、同一人物いや同一カラスではないというのです。
なぜなのか。
ニューヨーク・タイムズ(New York Times Weekly 2024年11月10日号 Resentful crows just won't let a grudge go カラスは単に恨みを晴らすだけじゃない)によると、カラスは恨みを忘れず、それを仲間に伝えるだけでなく、子どもにまで伝える、というのです。
だから、もしカラスをいじめると、そのカラスが死んでも(カラスの寿命は12年)、3世代にわたってあなたは復讐される、というわけなのです。
僕の知り合いが10年にわたって、見知らぬカラスからの攻撃を受け続けてきたわけがわかりました。
彼はあと何年、カラスハラスメントから逃れられないのでしょうか。
カラスのウェブサイトに集まる襲撃報告
カラスの襲撃事例を報告するサイト、クロゥトラックスには、たくさんの事例が集まっています。
サイトの運営は8年前からですが、すでに8000件を超える、襲撃情報が寄せられています。
家を襲撃する、クルマのワイパーを破壊する、ガラスの窓をくちばしでつつくなど、凶暴なカラスの行動が報告されています。
あるシアトル在住の男性は、カラスがこまどりの巣を襲撃したところを追っ払ったことをきっかけに、カラスのハラスメントを毎日受けています。
カラスは彼の乗るバスを特定、毎朝彼の乗るバス亭にやってきて、攻撃を仕掛けるのです。
男性は引っ越しを余儀なくされました。
仲間の葬式をするカラス
カラスの知能が高いことはよく知られています。
人の口真似はするわ、道具は使うは、仲間の死に際して葬式のような儀式をする、ともいわれています。
人間とカラスの関係性を研究するワシントン大学のジョン・マーズルフ教授は(John Marzluff)こう話します。
マーズルフ先生は、ワシントン大学のキャンパスで、鬼のお面を被って、カラスを引っ捕らえる実験を繰り返しました。
カラスはすぐに開放するのですが、その恨みは忘れず、鬼のお面を被った教授の研究室の学生を、いつも襲うというのです。
カラスとの共存を
僕がなんでこんなことを今日持ち出したのか。
それは、環境の時代、僕らは他の生き物と共存しなくてはならない、と考えるからです。
この間、ペットと食べ物の話をしました。
コロナ以降、人間がどんどん動物の気持ちに寄り添う傾向がある、ということを申し上げました。
いい傾向だと思うのです。
一方で、最近テレビでは、クマやトドやヌートリアなどの”害獣”を駆除しなくてはならない現実を取り上げています。
東京都も10年以上前に、カラスの大量捕獲を行ったことがありました。
動物は、人間のもっとも近い環境であり、もっともっと共生の余地があるのではないでしょうか。
カナダのバンクーバーは、カラスと人間の共生を真剣に考えています。
専門家と協議の上、カラスの巣を撤去しないことに決めたというのです。
このことで、カラスの生体数は増えました。
しかし、バンクーバーは重要なメッセージを世界に伝えることに成功した、というのです。
それは、カラスとの共存が同市の掲げる「エコロジーecology(生物と環境との調和)」ということです。
ニューヨーク・タイムズは、記事のラストでこんなことを書いています。
野呂 一郎
清和大学教授