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ホンダのニッサン離縁の決定は早すぎる。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:ホンダが早々と日産離縁を宣言したが、拙速にすぎるって。日産は確かに官僚的だけれども、まだ「目に見えない資産」はたくさんある。例えばニッサンという名前。これがなくなると怯えた日産幹部は正しいって。ホンダは結婚相手の判断のやり方を間違えたようだよ。トップ画はhttps://x.gd/05UXx
ホンダは欠点しか見てない
頭の回転の速い貴女は、結婚に失敗しやすいのかもしれません。
例えばお見合い、マッチングアプリを通じて、初めてのデートでファミレスに行ったとします。
彼はなかなか決められません。
3分、5分、「ステーキにしようか、ピザにしようか、それもパスタかなぁ」などと呟いています。
貴女は、「こんな決断に時間がかかる男はダメだ!あたしを幸せにできない!」と男を見限ることにしました。
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今回のホンダが日産との離縁に踏み切ったのも、まさにこれなのです。
今回、ホンダが提携を解消する決め手になったのは、「日産は意思決定が遅すぎる」からだと伝えられています。
工場の稼働率が6割しかなく、どこかをクローズして、人員削減をしないとやっていけないのに、その決断が遅すぎる、というわけです。
要するにこれは、組織として一番ダメな「官僚主義」が日産に蔓延しており、こんな組織と組んだら自分たちの未来はない、そうホンダが判断するのは、極めて合理性があると言っていいでしょう。
しかし、しかし、です。
ファミレスで食べるものを決められない彼も、リストラ判断ができない日産も、他にいいところがあるはずです。
その意味で、貴女が彼を捨てる判断もホンダの日産切りも、拙速にすぎるともいえます。
他にいいとこ、あれば、致命的な欠点も半分に薄まるかもしれないし、あなたの力で直せるかも知れるかもしれませんよ。
インタンジブル・アセットという考え方
日産を救うのは、インタンジブル・アセット(intangible assets目に見えない資産)理論です。
提唱者のエコノミスト、ユーゲン・ダウム(Juergen Daum)氏によれば、
目に見えない資産、つまり企業の非物質的な価値、たとえばビジネスパートナーとの関係性、ブランドの認知度、新しいビジネスアイディアが出せること、イノベーション力、企業文化などであるが、ここ20年間、これらの重要性が高まってきている。
このトレンドは数字で立証されている。
1980年代初期には企業の目に見えない市場価値の割合が、帳簿価格の40%だったのが、1990年代の終わりには80%を超えているのだ。
ということなのです。
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確かに日産の物質的な、目に見える価値は落っこちています。
北米や中国での売上の下落、現有技術でいくとハイブリッドも高速では燃費が悪いし、EVも中国BYDにコストで勝てないし、工場の稼働率も悪いです。
でも、日産の中に何かまだ従業員すらも気がついてない、宝が眠っているはずなのです。
ホンダは数週間足らずで、「日産はリストラやれっちゅーのに、グズグズして大事な経営判断すらできない、使えねぇ!」とどこかの大女優みたいに吐き捨てたのです。
コンサルティングのやり方を知らないホンダ
僕がホンダの社長ならば、日産のインタンジブル・アセットをまず、半年かけて探しますね。
どうやるか。
ここで経営コンサルティングの基本である、「聞き取り調査」が登場するのです。
聞き取り調査とは、文字通り、コンサルタントがあらゆる現場に入って業務を観察し、そこで働く人から、働く実態についての話を聞くことです。
もちろん、日本の組織ですから、上に忖度し、ありきたりのことしか言わない社員もいます。
しかし、それは事前にコンサルタントが社長が頼んで、この一言を言わせれば解決します。
「日産を良くするために、忌憚ない意見をコンサルタントの先生方に言ってくれ!」。
全部門での”事情聴取”が終わって、コンサルタントのあなたはきっとひらめくでしょう。
「これだ。日産の本当の強みは。ホンダが日産のここを活かせば、1+1は100になる!」
外部の目で組織をチェックせよ
すべての経営刷新のキーワードは「傍目八目(おかめはちもく)」つまり内部じゃなく、外野の目で、予断なく判断すること、です。
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世間で言われている日産の官僚主義も、管理職に成果主義を取り入れれば治る、そんなヒントがかならず見つかるはずなんです。
コンサルタントと言えば「どうせ、欧米の高っかい価格の最新コンサルティングノウハウとやらを買わされるだけなんだろ?」、そう思われがちですが、僕に言わせれば、この地道な「聞き取りスキル」こそが、経営コンサルティングの真髄だと思っています。
聞き取りスキルで、「世上では色々言われているけれど、本当の現状はどうなんだ」が嫌でもあぶり出されるからです。
しかし、世の多くの一流コンサルティング会社は、この地道な現状分析をおろそかにして、超高価格の最新経営刷新メソッドを売りつけるだけなのです。
やっぱりね、ホンダは、この聞き取りを信頼のおけるコンサルタントにやらせるべきだったんですよ。
これからは、コスト体質と競争力を強化するために、戦略的提携がまたブームになるでしょう。
その時の黄金律が「聞き取り調査」なのです。
野呂一郎
清和大学教授