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日本衰退の原因は「東大至上主義」にあり。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:池上彰さんの番組で取り上げられた「日本衰退の原因」それはソフト化に乗り遅れたのでもなければ、慢心したのでもない。無意味な勉強をやらされすぎて、日本人の脳がイカれてしまったからだ。えっ?自覚がない?だから危険なんだって。
池上さんのご指摘はもっともだが
きのう、池上彰氏がMCを務める教養番組の最後で、「日本の格差はどうして生まれたんですか?」という問いに、池上さんと「今でしょ!」林修氏が答える場面がありました。(僕はこの問いを「日米の格差」と解釈しました)
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池上さんのアンサーは「日本の製造業がもてはやされて、油断したのではないか。ハードからソフトの時代シフトに遅れた」というものでした。
僕のアンサーは、「日米社会人の勉強意欲が違うこと」です。
「その頃のアメリカをウィットネスしているから、わかるんです」、って言いたいんですが、例によってトンデモですんで、バカなこと言ってると思ってお付き合いください。
もう30年以上前のこと、いつもお話していることですが、僕はアメリカの大学生に日本語を教える代わりに、ビジネススクールでの学びをタダにするという「教育交換プログラム」のメンバーでした。
1988年のことですから、まだ日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと持ち上げられていた頃です。
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僕の通っていたビジネススクールは社会人学生がほとんどで、彼ら彼女らは夕刻6時に始まるクラスに出席するわけです。
僕はその姿だけを見て、圧倒される思いがあったんですよ。
それは2つあり、一つは「えー、日本人はこんな時間に学校で勉強するなんて考えられないよなあ」であり、もう一つは「奴ら燃えてるなあ」です。
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日本人は意味のない残業や、職場のコミュニケーションとの大義名分での、事実上の強制参加の飲み会で時間と体力を奪われ、疲れが慢性化している間に、アメリカ人はどんどん知識を蓄え、ビジネスに欠かせない論理と創造性を強化していたのです。
ひるがえって、このころの日本人の様子は、池上さんには「油断、慢心」と映ったのかもしれません。
しかし、僕は、日本の人間性をないがしろにする、社会システムが相対的に日本を弱くした、そう考えるのです。
いい加減5時で帰らせろ
確かにアメリカもマイクロソフトみたいな、エンジニアは徹夜も厭わないみたいな労働文化のところもありますが、ざっくり言って9時ー5時ですよ。
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それは、ジョブ・ディスクリプション(job discription職務記述書)という労働契約書にそう謳われているからです。
ジョブ・ディスクリプションには、はっきりとあなたの仕事の具体的内容が書いてあります。
記述されている仕事以外は、しなくていいのです。
だけどあなたの仕事ときたら、電話は無差別に取らなければならない、急に入ってきた関係ない仕事も上司がやれと言えばやらなくてはならない、他の部署の手伝いもやる、はては秘書課の女性の「これ英語で何ていうんですか」にも対応しなければなりません。
非効率な職場で疲れ果てる日本人
自分の部屋などなく、プライバシーのない大部屋で、戦略を練ったり、思索に集中するなんてできません。
今もどうせそうでしょ、効率のいい、集中できる職場環境なんてどこもないんだから。
アメリカは違いますよ。
僕のいた会社ですら、プライバシーが守られる自室に近い環境が与えられてましたから。
非効率な職場と働くシステムが、日本人から生産性のみならず、学習の機会も意欲も奪ってきたのです。
アメリカのスパイ大作戦?
ジャパン・アズ・ナンバーワン、日本的経営に学べ、なんていう日本礼賛の風潮も、こういう非効率な職場環境が改善されずにきた理由かもしれません。
アメリカは、たしかに日本企業や日本的経営の研究をしてきたことは間違いないのです。
僕が日本語を教える代わりに、ビジネススクールでの学習を許されたというのも、アメリカの深謀遠慮かもしれないのです。
アメリカ人に日本語を学ばせ、日本企業の強みと弱みをスパイさせようというのです・・・って、それはうがちすぎか。
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ビジネススクールの「格差」
80年代終わりあたりから、アメリカの巻き返しが急速になってきたのは、データはありませんが、ビジネススクール教育の役割は大きかったと思います。
今でこそ日本の大学もビジネススクールとか、MBAプログラムなどを掲げ、アメリカ風の実戦的な経営教育をするようになりました。
しかし、その中身と言えばよくも悪くもアカデミックに染まった日本人の教員が教える座学でしかなく、ビジネススクールの華であるケース・スタディなどはやらないし、常に最新を学びとりいれるという米ビジネススクールの精神がそもそも欠けた、ビジネススクールもどきの教育でしかありませんでした。
ただ、例外もあり、本場のビジネススクールと提携し、日本語で学んでもそのエッセンスを上手く、新しい経営教育に昇華した学校もあります。
あくまで僕の個人的ジャッジメントですけれど、例えば英国国立ウェールズ大学大学院MBAプログラム、とか、慶應ビジネススクールとかです。
これも私見ですが、僕はビジネススクールというのは「態度」を学ぶところだと思っています。
それは、常に勉強する、という態度にほかなりません。
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それは常によりよい問題解決を目指して、自ら考え、関係者とディスカッションするという態度です。
日本のビジネススクールは、その点、刺激が足りないような気がしますね。
武道で言えば、ビジネススクールを卒えたことは、初段をとったに過ぎず、それをもとに高段者を目指し、飽くなきチャレンジに挑む通過点でしかありません。
日本のビジネスマンは学習障害
結局、日本がアメリカを追い越すには、継続的に学ぶという姿勢しかないんですよ。
でも、日本人はそれがアメリカの大学のMBAであれ、日本の大学のそれであれ、学位が権威みたいになっちゃうんですよね。
東大出たから、勉強しない、みたいな。
なぜかというと、あくまで僕の勝手な意見でしかありませんが、日本人は大学入試を終えた瞬間に「燃え尽き」ちゃうんですよ。
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なぜなら、日本の学校システムは、学ぶことが楽しいことだという根本をまったくやらないし、無意味な暗記中心の勉強で心身ともに子供を疲弊させるだけだからです。
特に、大学合格を勝ち取るために受験教育という無意味なことをやらせ、若い脳をクタクタにしてしまうことは、国家的ムダで、日本をダメにしている元凶なのです。(きっぱり)
そこいくと、アメリカ人は、大学入学の頃、向学心と新しいことを学びたい好奇心に溢れ、可能性を引き出すケース・スタディ教育もあって、ますます勉強が楽しくなって、そのポジティブなループが一生続くのです。
そうなんですよ、みなさんだって同じなんですって。
大学入学までに、ムダな脳の使用で疲れ果て、ある種の「学習障害」になってしまっているのです。(きっぱり)
日米格差の犯人はあなたの「権威主義」、だ
皆さんは「オレは東大だ、私大卒のお前ごときにそんな事言われたくないわ」とおっしゃるでしょう。
それがいけないんですって。
本当に実力がある人は、そんなことひけらかさないでしょ。
東大だろうが、京大だろうが、実力ありゃ、関係ないじゃないですか。
だけど、未だに日本って「東大生のノートのとりかた」だの、「東大卒タレント」だの、「東大脳の秘密」だの、東大という権威をこれでもかと持ち上げる風潮は相変わらず、というよりも、過去一番ひどいんじゃないですか。
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これって、日本人にとって大事なのは権威であり、実力じゃないってことの、これ以上ない証拠じゃないかと思うんですよね。
ひょっとして、格差(池上さんの番組ではこれは日米格差、だと思いますが)の理由は、仕事の仕組みだとか、ビジネススクール教育の違いだとか、受験地獄とかじゃなくて、「日本人は権威主義だから」が答えなのかもしれませんね。
皆さんのことを、受験勉強の犠牲者扱いしたり、東大バカ扱いしたり、挙句の果て異常者扱いしてごめんなさいね。
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「権威主義」に訂正、です。
もちろん、そうじゃないあなたもいるかも、ですけど。
野呂 一郎
清和大学教授