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架空実況:資本主義の悪魔vs天使。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:またぞろ出てきたアメリカの消費促進策。クレジットカードに代わるBNPLとは何か?金融危機より怖い信用危機。資本主義は死なない?
悪魔の新兵器BNPLとは?
👼天使:あんた、また人間を騙すつもりなのね。
今度はアプリだって?スマホに入れて人を狂わせるって聞いたわ。
😈悪魔:天使のお嬢ちゃん、それは人聞きが悪いなあ。
僕は人間に便利を与えようとしているだけだよ。
かっこいい名前もつけたよ、BNPLだ。Buy Now Pay Later(今買って後で支払う)の略だよ。
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👼天使:つまりツケ払いね、古典的な手口でモノを買わせようっていうのね。
😈悪魔:いやいや、こんどのBNPLは、お得なんだよ。
というより未曾有のインフレ、物価高に苦しむすべてのアメリカ人に福音を与えようっていう、壮大な夢なんだよ。
インフレ前675ドルの買い物が、今は1,000ドルもかかるんだよ。
今買って後で払うなら、そんなこと気にならないさ。
ポイントもつくし、後で買えば物価高で高くつくから、今買ったほうが経済的だろ。
それに経済っていうのは、消費のことさ。
モノを売って、モノを買う、これがどんどん行われていれば、経済は安泰なんだよ。
そのお手伝いをしてる、僕を非難するのはお門違いだよ、天使ちゃん。
👼天使:それで助かる人もいるかもしれない。
でも、あんたはこのBNPLを誰でも簡単に使えるようにしてるでしょ。つまり、信用調査なんてほとんどやってないって聞いたわ。
クレジットカードの方がずっとマシよ。
ポスト・クレジットカードとしてのBNPL
😈悪魔:よく聞いてくれた!
BNPLはクレジットカードに代わる画期的な商品だ。
あんな高いものを買わせるしくみこそ、ボッタクリで非道徳的だよ。
僕らは、グロサリー(食料品)に特化しているんだよ。
食料品はまさにそれなしには生活できないよね。
生活費が3000ドル足りなくても、食料品は買わないと生きていけない。
そんな人にとって、これ以上のグッドニュースはないだろ。
信用調査?庶民を助けるシステムなんだよ、そんなに厳しくしてどうするの?
👼天使:悪魔の悪知恵って、やっぱりすごいわ(苦笑)。
人はグローサリーなら、ってつい使っちゃうわよね。
借金が膨れ上がるに決まっているでしょ。
審査もロクにしないなんて、それ自体犯罪でしょ。
そもそもあのリーマンショックって、あんたが貧乏な人たち向けに、安い住宅ローンを作って、「マイホームが手に入りますよ」なんて嘘っぱちを振りまいたせいでしょ。
あのときも、信用調査なんてやらなかったわよね。
今回もあの時の二の舞いだわ。
あのときは住宅っていう高い買い物だったけれど、今度はグロサリーっていう安い日用品ってところがミソね。
でもこれで借金が返せないで、自己破産する人が増えるのは間違いないわ。
悪魔さん、あんたはカネが儲かりすれば、人が、社会がどうなってもいいの?
😈悪魔:買うことが正義。いつかキミも僕のいうことがわかるだろう。
2年後、架空未来。日本の時代が来た!
天使が心配していたように、BNPLアプリのダウンロード数は、2023年だけで3億件を突破した。
スーパー、グロサリー業界は空前の売上を記録、それに引っ張られるようにしてアメリカの景気は回復した。
しかし、BNPL破産が膨大な数に上り、社会不安が広がり、「キャッシュレス決済や暗号資産が元凶」、という世論が沸騰し始める。
そして、日本礼賛論がにわかに勃興。
なぜか。
いわく「日本人は今だに現金を使う人が多い。お財布にしっかり現金が残っているから、日本人は常に自分の残金を把握して、身の丈にあったお金の使い方ができているのだ」。
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世界は、これまでキャッシュレス時代に周回遅れをとっていた日本を非難していたが、手のひらを返したように「日本の知恵、ワンダフル!」と一転、日本が「正しい資本主義のロールモデル」ともてはやされるようになった。
同時に、電子マネー、キャッシュレス化の流れがとまると、「デジタル化もやりすぎるとよくない」との世論が噴出、中途半端だった日本のデジタル化は、ピタッと止まった、という。
以上、「2年後の日本はこうなる」架空実況でした。
つまらない実況を聞いて頂き、ありがとうございました。
じゃあ、またあした。
野呂 一郎
清和大学教授