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「インフレ殺し」は、単独犯ではない。
この記事を読んで、あなたが得られるかもしれない利益:昨日に続いて今回のインフレの正体と現在の世界経済について、BusinessWeekの記事から考えます。どうやら犯人は3人いて、新たにもう一人加わった模様です。
インフレの功徳とは
インフレは物価上昇を意味しますが、必ずしも経済に悪いものではないのです。その理由はこうです。
1.中央銀行が不景気と戦うことで、経済が良くなる。
物価が上がらなければ、中央銀行は経済にテコ入れをせず、逆に経済は停滞します。
今のベネゼエラみたいな5桁のインフレではどうしようもありませんが、ちょっとのインフレは経済を活性化するのです。
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たとえば、中央銀行は通常インフレが起これば、経済を活性化するために人々がお金を借りやすいように、利率を下げます。
それは通常、インフレ率よりも低く設定します。
しかし、インフレがゼロだと、利率はゼロ以下にせざるを得ず、銀行の利子収入がなくなり、銀行経営がひいては経済全体が衰えます。
適度のインフレは経済に必要なのです。
2.企業が給料をあげないですむ
インフレだと企業は、給料を上げない言い訳ができます。
特にアンダーパフォーマー(underperformer仕事ができない人)の賃上げを拒否することができます。
賃上げをしないどころか、ステルス賃下げ、つまりインフレを理由に「便乗賃下げ」も可能になるのです。
企業の内部留保を増やすことで、企業経営を安定させることができるのです。
でも、給与を据え置くことは、物価は少しは上がりますから、従業員にとっては実質的な賃下げになり、経済全体にはよくないですが。
世界の中央銀行は、みなフリードマン信仰
ミルトン・フリードマンといえば、マネタリズムの元祖として知られていますね。
マネタリズムとは、マネーつまり貨幣供給量の変動こそが、インフレに対して、決定的に重要な影響を与えるとする考え方です。
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フリードマンは1980年代に日銀の顧問も務めたことがあり、バブルについて「日本が円の供給を増やしてドルを買い支えた結果、通貨供給量が急増してバブルを招いた」としています。
フリードマンの口ぐせは「インフレはいつでもどこでも、お金の供給量が関係している現象なのだ(Inflation is always and everywhere a monetary phenomenon)」です。
通貨供給量を左右するのは、中央銀行なので、中央銀行のエコノミストたちが、フリードマン信仰者なのは納得です。
インフレを殺した三人とは
結局インフレが死んだ真の原因は、労働者が企業に対して賃上げを要求しにくくなったことなのです。
では、犯人は誰か。
その3人とはグローバリゼーション(globalization)、オートメーション(automation)、非組合化の進展(deunionization)です。
この三人は単独犯でもあり、共犯関係ともいえます。
グローバリゼーションは、労働力が最低賃金の国々に行ってしまう現象です。
結果、モノの価格は安く抑えられるわけです。
オートメーションは、機械が人間の代わりに何でもやってくれる現象です。
グローバリゼーションと同じく、モノの価格は安くなりますね。
非組合化の進展は、グローバリゼーションとオートメーションという世界の流れで、企業が安く大量にモノが作れ流通できるという時代の流れに逆らえないと悟った労働者のあきらめに他なりません。
賢明な読者の皆様は、「これからはこれに生成AIとやらが加わるのか!」と気が付かれたと思います。
僕もそう思います。
結局、インフレを殺したのは、カネがすべての「資本主義」ってわけか。
野呂 一郎
清和大学教授