プロレス新連載⑥岸田政権、究極の一手としてのプロレス立国 最終回日本文化としてのプロレス。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:世界に日本の文化を伝える”映画”という可能性について考える。WWE最高の成功を遂げた異能レスラーTAJIRI分析。
前回まで、日本のプロレス世界化計画の5WIH戦略をやっていて、whatまできました。
何を(What)は、ファイトの内容ということになります。
ぶっちゃけ米国ファン相手ならば、これまでのデータから言うと、まず、身体がでっかくて、直線的なわかりやすいファイト、となります。
キラーカーンがまず当てはまりますね。坂口征二もそうです。
次には東洋の神秘のアピールです。これは前回紹介した、ザ・グレートカブキにとどめを刺すでしょう。TAJIRIもこのカテゴリーです。
TAJIRIの成功はもっと評価されるべき
TAJIRIはもともと日本人ばなれしている感覚がありました。大日本プロレスからWWEへ移籍などの離れ業は、行き当たりばったりなどではなく、綿密な計算と戦略があってのことに違いありません。
著書などを読むと相当異文化感覚に優れ、勉強もしていると感じます。英語がうまくないというのは、謙遜でしょう。
著作の「プロレス深夜特急 プロレスラーは世界をめぐる旅芸人」を読むと、WWEのレギュラーになったことで、彼の世界的価値がいかに上がったかがわかりますね。
WWEは世界中で放映されているため、思いがけない土地で知られており、TAJIRI自身が自分の知名度にびっくりするエピソードが何回も出てきます。
試合の組み立てや、パフォーマンスを見ると、異文化をしっかり理解して、考え抜いたファイトをしているように思えます。
アメリカで、全盛時のイチローと並ぶ知名度を得た日本人は、TAJIRIだけで、彼は別格ともいえるでしょう。
TAJIRI選手のこの本はとても面白いですよ。おすすめします。
TAKAみちのくは、英語がうまくないのですが、WWEが吹き替えを使って、彼を上手にプロモーションしたという印象です。
しかし、言葉でなく、ムーブが米国ファンに受けたのです。
特に彼は意識して米国仕様のファイトを展開したわけじゃないのに、WWEからの評価は非常に高かった稀有の例といえるでしょう。
業界横断組織とコミッショナーの必要性
つぎは、どうやって(How)です。
どうやって日本のプロレスを世界に広く知らしめたらいいのか。
それは長期的な視野と戦略が必要です。まず、それには業界の共通意思が欠かせません。
業界の共通利益を守る団体、そしてその代表としてのコミッショナーがぜひ必要です。
このことは、過去何度も関係者の口にはのぼるものの、結局は真剣に議論されずに終わっています。
もしこうした正式な業界団体が発足していれば、無益な格闘技挑戦なども行われず、行われたとしても、プロレスに不利な条件を押し付けられることもなく、惨敗を重ねることも、今なお尾を引くプロレスのイメージダウンもなかったでしょう。
ここですよね、プロレスの発展の源は。
映画「狂猿」に学ぶ
いまやデスマッチの神となった葛西純選手の自伝的映画、「狂猿」がヒット、葛西選手が所属する団体・フリーダムスの会場には、いままでプロレスを見たことがない新しいファンが続々駆けつけています。
「狂猿」を見て、葛西選手のファンになって、プロレスに興味を持つようになった層です。
じゃあ、プロレスを題材にした映画を作って、海外に配給すれば、日本のプロレスを知ってもらえるかというと、勿論そう簡単じゃありません。
しかし、かつて1970年代から80年代にかけて、一世を風靡した極真カラテのこの映画3部作は参考になると思うんです。
極真カラテにも学べ
地上最強のカラテ、地上最強のカラテ Part2、最強最後のカラテ。
いずれも作家で格闘技プロデューサーであった、梶原一騎氏のプロモートによる作品で、世界的なヒットを飛ばしました。
勿論日の出の勢いの極真カラテというコンテンツの魅力もさることながら、空手という日本文化の魅力が、大成功につながったのです。
同じように、プロレスも新たな日本の現代的な”武道”と位置付ければ、魅力的な映画ができるのではないでしょうか。
”日米プロレス決戦”という起爆剤
もう一つのアイディアは、WWEと提携し、プロレス日米対決トーナメントを開催するのです。
かつてのUインターvs新日本プロレスは、プロレス界史上最高の3億の収益をもたらしたとされる、ドル箱興行となりました。
潰すか、潰されるかのスリルがそこにはありました。だからの大成功、でした。
WWEの企画力があれば、爆発的なヒットになるのではないでしょうか。
なぜならば、WWEの人気はコロナ前には戻っていないからです。
少し停滞気味の米プロレス界への、カンフル剤として効くのではないでしょうか。
もう一つの理由は、日本のプロレスのアイディアが、アメリカマット界に生かされたことがあるからです。
有り体に言えば、パクリ、です。
そう、1986年に新日本プロレスがやった、イルミネーション・マッチです。
5対5の団体戦、一人ひとりが戦って破れたものは消える(eliminatation消すこと)が、イルミネーション・マッチのコンセプトでした。
翌1987年、WWEがこの形式のマッチを行い、それが現在のWWEの”イルミネーション・チェンバーElimination Chamber"に引き継がれているのです。(異論もあり、著者の見解です)
パクリなどといいたくはないですが、日米プロレス界が、お互い胸襟を開けば、互いのプロレスを世界により浸透させることができるのではないかと思うのです。
いずれにしてもカギは、日本プロレス界の大同団結です。
東スポあたりが音頭をとってくれるといいのですが。
さて、今回の連載は一応これで終わりといたします。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー