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コストコに学ぶ「アリ地獄マーケティング」とは何か。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:上はコストコのでっかすぎるマフィン。店舗という空間に魔力を住まわせろ。これがコストコ・マーケティングの真髄だ。でっかいフードがその象徴かな。
ハナマサvsコストコ
今日、新聞のチラシに「特価、サケ4切れ490円」とあったので、近くの「肉のハナマサ」に行ってきました。
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去年は一切れ100円のサケが、今年は150円から200円くらいしますよねー、どうしても価格の安いものは魅力です。
でも、肉のハナマサも、もう少しやり方があるんじゃないかなあ。
チラシは初めて見たし、一回きりの安売りでなくて、常に店に客を呼び込むような工夫がないなあ、と感じたのです。
そんな事考えているとき、ニューヨーク・タイムズのこんな記事が目に止まりました。
「どうやってCostocoはアメリカの買い物客を捕まえたか(How Costoco won over shoppers in America)」という記事です。
コストコは、日本ではテレビなどで「コスパ最高!」フードが紹介されることが多いですが、アメリカではむしろ、日本のドンキホーテのようなイメージが強いようですね。
コストコは、アメリカでは完全にクルマで、かさばる商品を買いに来るお客さんに特化しているビジネスです。
2019年には、アメリカ人の4分の1が、コストコで買い物をしました。
2024年は、これが3分の1に上がりました。
クルマ社会の、ダイナミックな消費をまざまざと見せつける、その象徴がコストコなのです。
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Costocoの一人勝ちマーケティングの秘密
ニューヨーク・タイムズが分析する、Costocoマーケティングをキーワードでみてみましょう。
1.宝探し(treasure hunting)をさせる
とにかくその巨大な倉庫風のフロアに、これでもか、の多種多様なモノがおいてあります。
どれも容量が多く、コスパがよく、おまけに珍しいものがたくさんあり、まさに宝探しに来ているような感覚が味わえます。
お宝といえば、金の延べ棒(gold bar)も2000ドル(30万円)で売っていますよ。
2.緊急性(sense of urgency)を迫る
この商品はもう次来たときはないから、いま買わなきゃ、と思わせる。仕組みです。
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ある日、ブランド好きの中年女性が、バーバリーのショルダーバッグを発見、1000ドル(15万円)で即買いしました。
世界で最も高いワインと言われるロマネ・コンティの4本パックは4万ドル(600万円)で売られています。
平均小売価格は215万円ですから、お得で、「この機会を逃すまいと」富裕層のお客がどんどん買っていくのです。
3.必要のないものを買わせる誘惑(temptation)
コストコに来る人々は、単に物見遊山に来るのであって、特定のなにかを求めてくるわけではないのです。
でもお店を出る頃には、カートに実に色々なものが入っていることに気がつくのです。
2メートルのクリスマスツリー、ソーラーパネル、ペットのハウス、ベルギー製ミニシュークリーム3ヶ月分パック・・買った覚えはないんだけどな、人々はそうつぶやきながらコストコをあとにするのです。
シカゴ大学の行動心理学者アヤレット・フィッシュバッハさん(Ayelet Fishbach)は、「買わせる誘惑に買い物客たちは気がついてない」ことを指摘します。
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「本当にその買い物は必要なのでしょうか。おそらく違います」、彼女はこう指摘します。
誘惑とは「魔力」である。
何かを買いに来たわけじゃないのに、知らないうちに買っていた。
これがコストコマジック、ですよね。
でも、それがお金を出すだけの価値がある、そう判断させる魅力があったわけですよね。
そうです、誘惑とは魅力であり、衝動的に買わせるならば、それは「魔力」とでも言うべきものでしょう。
その正体は、上記あげた3つではあると思います。
でも、それは「魔」のチカラなのかもしれません。
プロレスラーで言うと、ミル・マスカラスとザ・デストロイヤーです。
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って、誰もプロレスを出せ、なんて言ってないのに!
勝手に続けると、ミル・マスカラスのあだ名は「悪魔仮面」(後に「仮面貴族」に変更)、ザ・デストロイヤーは「白覆面の魔王」です。
マスカラスのドロップキックは、悪魔に魅入られたような、感じです。
デストロイヤーの4の字固めは、4の字に対戦相手を引きずり込む空間は、まさに結界。
魔力のバリアが張ってあるアリ地獄、その中心には悪魔の大王デストロイヤーが待ち構えている、といった風なのです。
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うーん、プロレスファンでもこの下手くそな形容はわかりにくいなあ。
もう、シンデレラタイムがきたから、強引にこうまとめてみよう。
魔力とは、魂が引き込まれる力、です。
そういうモノ、空間を創れという、身も蓋もない結論でした。
野呂 一郎
清和大学教授