バイデン「台湾失言」はアメリカ人の集団的無意識だ。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:バイデン「台湾発言」は失言か。アメリカ・ビジネススクール(昔の)の一風変わった訓練。アメリカの強みは、「潜在的な知的好奇心という集団的無意識」。
毎日新聞、バイデン氏を称賛
今朝の毎日新聞一面は、バイデンさんの「有事の際に台湾を守る」という”失言“についてとりあげていました。
中国に対し建設的な威嚇になった、と好意的な論調です。
バイデンさんは「プーチンは戦争犯罪者」と言い放ったときと同じ、「正義の感情の一つの表現をしたに過ぎない」と、関係者が慌てて火消しするのを横目に涼しい顔です。
このバイデンさんの「失言」で、僕は思い出したのです。そういえば、あの時のあれも失言だったのかなあ、って。
ビジネススクールで課された”取材実習”
僕がアメリカのビジネススクールで学んでいた頃の話です。
かれこれ30数年も前の話ですが。
えっ、MBAってこんなこともやらされんの、と思ったことがあったんです。
それは電話取材、でした。
ケース・スタディに登場した企業や関係者に電話をかけて、
「ケースではこう書いてあったが、実際どうだったのだ?」、などと取材をするのです。
門前払いだろうって?
そう思いますよね。
僕は30件くらい電話をしましたが、にべもなく断られた、というのは
一件もなかったのです。
もちろん、こちらもビジネススクールの研究課題だからと
意図を説明はします。
そうすると、おおむね協力的なのです。
これにはこちらがびっくりしました。
もっとも、30数年前の話ですから、そして80年代アメリカがまだまだ世界の警察で、唯一の経済超大国だった頃ですから、「教えてやろう」という余裕があったのかもしれません。
今は社会がいろいろ複雑で、見ず知らずの学生、それも外国人とわかる人物に、電話で経営に関することなど話したら、大きな問題になるでしょう。
「アメリカ・花王」で待っていた衝撃
この電話取材で僕は忘れられないことがあるんですよ。
ケース・スタディで、日本の消費材メーカー「花王(Kao America」を取り上げたときのことです。
僕は、これは割り当てられた宿題というわけではなかったのですが、個人的な興味から”花王アメリカ”に電話したんです。
大学院生の取材だとを話したら、社長につないでくれたんです。
もちろんその時の話を明かすわけにはいきませんが、社長の大変フレンドリーで、誠意のある対応に感激したんです。
「えっ、こんなこと言ってもいいの?」的なことすら教えてくれました。
でも、それはパブリックな発言ではないものの、バイデンさんと同じく、「失言」だったかもしれません。
しかし、その時の社長とのやり取りを通じて、僕はアメリカという国の大きさを思い知った気がしました。
当時のアメリカは間違いなく知的な価値というものを社会が、ビジネス界が理解していて、学ぶものを応援し、温かく育ててくれるような雰囲気があったと感じます。
アメリカは”合衆国”だ
いや、それは、でも、アメリカを知らない者の言い分かもしれません。
アメリカはユナイテッド・ステーツ(合衆国)という名の通り、ステートつまり州というよりは”国”の集合体なのです。
だからアメリカをひとくくりに論じるのは誤りですよね。
それは僕のいた、ウィスコンシン州に限った話かもしれません。
でも、僕がこの電話取材で感じたことは、住んでいる州に関係なく、アメリカ人の集合的無意識、のような気がしてならないのです。
いろいろな州で、似たようなことに遭遇しましたから。
それは、
知的な何かを問いかけると、前のめりになってそれに応えるという気質、
です。
それこそがアメリカ社会の強みなのではないか、今そう思うのです。
言ってみれば、一種の社会に存在する知的好奇心。
その集合的無意識が常に社会を刺激し、知的創造を生むのです。
それは、今回のバイデン失言にも一脈通じるものがある、そう思ったのです。
知的な好奇心がない社会
日本人は皆、どの世代も疲れ切っていて、知的なことに反応しません。
政治の話も、社会の話もしない。
おそらく無意味な受験勉強のやり過ぎで、おとなになっても、知的な呼びかけに応える気力がないんです。
心が疲れすぎていて、好奇心が発動しない。
僕はスマホしか見ない学生が大嫌いなんですよ。
勉強する気がある、ないじゃなくて、その態度からは、他律的な刺激だけに身を委ね、主体的な知的好奇心が失われているように思えるからです。
日本の政治家の反応を見てくださいよ。
受験勉強のなれのはてなのかなぁ。
下むいてペーパー読んで「北朝鮮がミサイル飛ばしました。よいことではありません」とか「ロシアがウクライナに侵攻しました。困ったことです」なんて他人事のようにコメントを出すだけでしょ。
バイデンさんの失言は、主体的な知的好奇心の発露なのです。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー