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プロレス&マーケティング第8戦。なぜ極真ルールがプロレスルールよりも強いのか?

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:エモいの理論的解説。エモーショナル・ブランディングをプロレス的に解釈する。武道・格闘技エモさマップ発表。なぜ、極真ルールがエモいのか。

エモいの図解

昨日、幻のジャイアント馬場ミュージアム計画で、プロレス博物館の売りは「エモさ」だというお話をしました。

エモさとは、感情に訴えかけるアピールのことです。

すっかり若者言葉として定着しましたが、この言葉はマーケティング理論の「エモーショナル・ブランディング」と妙に符合します。

僕はこれは理論と現実がシンクロした、文字通り一種のシンクロニシティ(意味ある偶然)だと思っているんです。

これからますますマーケティングの世界では「エモい」つまり、エモーショナル・ブランディングが影響力を持つことでしょう。

今日から数回に分けて、プロレスファンとプロレスファンじゃない方々に向けて、マーケティング理論としてのエモーショナル・ブランディングの紹介をしたいと思います。

エモーショナル・ブランディング図解

まずは、エモーショナル・ブランディングの図解です。

「ナウエコノミー -新・グローバル経済とは何かー」より(野呂一郎 学文社 2006年 )

めんどくさい解説

以下の解説は僕が本に書いたものをほぼ写したものです。一応、学問的なものを言っとこうと思って(笑)

ですから、ここはめんどくさいと思った読者は、ここをスキップして、次の
「プロレス流解説」をお読み下さい。

でもめんどくさいけれど、ここを読んでいただいたほうが、広く応用ができるかもしれません。

上図はエモーショナル・ブランディングの考え方を典型的に説明したものです。

例示されているブランドは上段左から下へAT&T、ナイキ、アップル・コンピューター、そしてMTVです。

縦軸はエモーショナル・ブランディングのブランド価値である“消費者の感情に訴える度合い”を示し、横軸は4つのブランド・ロゴのグラフィックな表現の性質をあらわしています。

縦軸の度合いの尺度は、企業主導と個人主導となっていますが、これはロゴのイメージが“消費者の感情に訴える度合い”に関して、企業がイニシアチブをとっているのか、それとも企業はイニシアチブをとらず、消費者に訴えるメッセージの受け取り方、解釈を消費者にまかせているのか、の度合いを示しています。

 エモーショナル・ブランディングの価値観でいうと、縦軸に関してはAT&Tよりもアップル・コンピューターの方が、ナイキよりもMTVの方がエモーショナル・ブランディング的なのです。

なぜならば、エモーショナル・ブランディングでは、企業からの価値の押しつけ、イメージの押しつけはタブーだからです。

エモーショナル・ブランディングの価値である、個人の内面に訴えるとは、あくまで個人にどう感じてもらえるかが問題なのであって、企業が力ずくである一定の感情を消費者に抱かせる考えは、それと相反するものです。

これはエモーショナル・ブランディングが消費者をパートナーであると見なしている立場からきています。

従来のブランドは、消費者は敵であり、どう攻略するかという視点に立っています。だからこそ、消費者を読もうとし、それに対して力で働きかけてくるのです。

横軸の「グラフィックな表現」で、インパクト、とあるのは企業が消費者に与えようとしたブランドのインパクト性であり、コンタクトと表現してあるのは、消費者とのコンタクトの度合いです。

インパクト性とコンタクトとは全くベクトルの向きが違う概念であり、消費者へのコンタクトが強いブランドは、消費者とブランドとの結びつきは強いが、企業から消費者への強い意図的な働きかけが弱いことを示しています。

またインパクトが強いブランドは、企業から消費者への働きかけは強いが、消費者とのブランドを通じたコンタクトは弱いことを示しています。

エモーショナル・ブランディングを体現しているのは、企業が考えるブランドのインパクトではなくて、消費者とのコンタクトでです。

消費者といかに関係を強く築けるかという価値観の方です。だからAT&Tよりもナイキの方が、アップル・コンピューターよりもMTVのほうが、エモーショナル・ブランディングを体現しているといえます。

プロレス流解説

下の図をご覧下さい。

題して、格闘技界エモさマップ、です。上の理論的な難しい説明をもとに、武道・格闘技界にこれを当てはめて説明しますね。

筆者作成

縦軸は「エモさの度合い」です。エモさはあくまで主観的なものなので、エモいは僕の感覚です。

左の端の軸をみてみると、エモいのは順番に合気道、伝統空手、総合格闘技としました。

えっ?「お前は総合格闘技に萌えないのか」と非難されるんですね。ですね、プロレス者はひねくれてるんですよ(笑)

横軸は動き、派手さの度合いです。
一番下の横軸を見てみると、プロレス、柔道、合気道となります。

この順番は客観的にもこれでいいでしょう。プロレスがチャンピオンなのは明白ですね。

柔道、合気道どっちが派手かも議論がありますが、今回は柔道が派手としました。

図は縦と横の価値観をかけ合わせて、各競技を当てはめてみました。

ポイントは縦軸、横軸ともに、
「ファンのためにやってるのか、それともビジネスのためにやってるのか」という一点です。

エモいのは、ファンのためにやっている方です。

この点で、総合格闘技とプロレスを比較してみましょう。

結論は

結論は総合格闘技はビジネスのためにやっているが、プロレスはファンのためにやっている。

総合格闘技vsプロレスエモさ比較

です。

要するにエモさっていうのは、「ファンを喜ばせる」度合いなのです。

総合格闘技の選手は、プロレスの影響からか最近は「勝つだけじゃなく、ファンの喜ぶ試合をします」なあんて言いますよね。

でも、見せるより勝つ方が大事です。

なぜならば、ビジネスにつながるからです。

勝てば、格闘技界でいい位置につけることができ、よりギャラの高いマッチのオファーがくるからです。

極真カラテのエモ&ビジ戦略

動きの派手さも、あくまで観客を意識してのものが、よりエモいです。

極真カラテの華は上段回し蹴りKOですが、これはビジネス主導の蹴りです。

https://qr.quel.jp/pv.php?b=415ifYC

本当に勝つならば、もっと地味な技をチョイスするのが正しいのです。

しかし、極真カラテは顔面なしのルールなので、勝つためには一発逆転の一本を取れる可能性のある、上段回し蹴りをせざるをえないのです。

上段回し蹴りという派手な技を多く出させるのが極真カラテのビジネスだ、などというと袋叩きにされますので、そこまでは言いません。(言ってるだろ!)

いや、あくまでうがった見方ですけれども、よく言われるように、僕も極真ルールは真の強者を決めるルールではないと思うんです。

「ビジネス的」な「企業寄り」のルールです。

しかし、同時にこのルールが客を楽しませるというエモい方に向いている、という巧みさにも注目して下さい。

エモい競技は絶対に人気が出るからです。

読者の皆様は、エモければマーケティング的にもいいと思われるでしょうが、それは正しいです。

何故ならばエモさの正体とは、「あくまでファン寄りの姿勢」だからです。

しかし、ビジネス寄りでないと、企業戦略としてみた場合、うまくいかないことも多いのです。

今日はちょっとわかりにくかったかなあ。

まあ皆さんのリクエストで、どっかで「公開無料授業」でもやりましょうか。

今日のプロレス&マーケティングを他業種に応用する

1.プロレスがなぜ永久不滅と断言できるかというと、ルールを含めすべてが「ファンを喜ばせる」ように設計されているから。

2.エモさとは顧客寄りの姿勢のこと

しかし多くの企業が顧客寄りでなくて、ビジネス寄りになっている。損して得取れだ、まずはファンを、お客さんの都合ですべてを考えよ。

3.エモいは主観的

エモければ売れる、などと言ったが、あくまで「エモさ」は主観的なもの。だから、エモいにこだわって商売するならば(笑)、エモい製品やサービスとはなんなのかを、会社全体で考えた方がいい。

4.プロレスにヒントが

やっぱり今日証明したように(笑)、エモさの王者はプロレス。

できれば、御社も年に2,3回は希望者で後楽園ホールや新潟産業会館に”密航ツアー”(遠距離プロレス観戦)を敢行したらどうだろうか。

今日はこのくらいにしておきましょう。

ではまた明日。明日は普通のをやろうと(笑)思います。

野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー



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