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都知事選「見せない」という「見せ方」。
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見せ方戦略はあったのか
小池さんの場合
小池さんは、「見せない」戦略をとりました。
何を見せないか、それは「疑惑」です。
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その疑惑をいちいちは取り上げませんが、見せないことも「見せる戦略」なのです。
例えば、彼女はもっとはやく出馬宣言をしてもよかったはずです。
しかし告示ギリギリに参戦表明したのは、なるべく批判されている疑惑を突かれることを、最低限にしたかったのです。
また、彼女にとって都合の悪いことへの追求をブロックするために、事前に相当時間とエネルギーを費やした様子もうかがえます。
石丸さんの場合
石丸さんは、「喋らない」という見せ方を選択しました。
例の選挙参謀は、こう言ったのではないかと推測します。
「笑顔で手でも振っとけ」。
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彼の選挙の見せ方のポイントは、「ムードに乗り切る」ということです。
短期決戦なんです、いちいち自分の政策や考えを大声で叫んでも、都民に浸透なんか無理です。
今吹いている風に乗るのです。
ネット界隈では「田舎の議会で、旧態依然の爺さんたちに孤軍奮闘する、これまでにないクリーンで清新なちょっとイケメン」という、イメージができつつありました。
石丸陣営は、期せずしてできたこの空気に乗るのが得策だと考えたのです。
本当は、もっと政策について語りたかっのですが、ネットが作り上げた勝手なイメージに乗ることが、もっとも選挙効率のいい戦い方なのです。
今、石丸さんはいわゆる「石丸構文」とあだ名される独特の受け答えで物議を醸してますが、くだんの参謀はこう話しています。
「わざわざエネルギーを使って批判されるなんて、もったいない」。
我慢していた、議論スキがでてしまったのです。
これは、ある意味で申し上げた「選挙中は寡黙で」という戦略があたったことを示してます。
もし選挙中多弁を許していたら、清新で彼のイメージは崩れていたはずです。
蓮舫さんの場合
蓮舫さんは、出来もしないと思われる公約ばかりで、「物言えば唇寒し」状態で墓穴を掘ったと思います。
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彼女は組織の長になったことがなく、何か結果を求められるポジションについたことがありませんから、「・・をやります!」「・・・ができます!」と言えばいうほど、空虚に響くのです。
それよりは、政治的功績ではなく、過去に何をやって、どんな成果を上げたから、都知事になってもこれができる、という論法で勝負すべきでした。
しかし、ご自身のさしたる実績がないから、それも披露できなかったのです。
マスコミと放送法
都知事選が終わったあとに、候補者たちを集めて、共同インタビューが行われ、その席で敗因を問われた石丸氏は、「最初の頃、マスコミがまったく取り上げなかったからです」と答えたことが話題になりました。
しかし、これは放送法に照らすと間違いではありません。
「政治的公平原則に従った選挙報道の自由」があるからです。
放送法第四条には、こうあります。
放送事業者が番組を制作するに当たって、公安及び善良な風俗を害しないこと、政治的に公平であること、報道は事実をまげないですること、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること、の四項目を義務付けている
ただ、この4条を守っているか否かは、証明が極めて困難で、各局やりたい放題というか、選挙での報道のあり方は上層部が恣意的に決めている、そう言われても仕方ないでしょう。
情報不足がかえって有利になることも
都知事選における候補者の見せ方は、やはりテレビ報道にかなうはずはないのですが、テレビを見ないZ世代には届かず、情報不足がゆえにインターネットで美化されたイメージを選挙戦に持ち込んだ石丸氏に追い風が吹いた、とも、言えます。
テレビの影響は、いまだ選挙の行方を左右するものがあります。
インターネットは、現在放送法4条の規制を受けませんが、今後はこれが崩れていくと僕は見ています。
それはAIが、インターネットの映像を飛躍的に「見せるものにする」からです。
しかし、仮にテレビがいくらいい絵を届けても、インターネットでかっこいいサイトを作っても、YouTubeで大食らいを映しても、それが候補者の価値につながらなければ、票には結びつかないでしょう。
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究極の見せ方は青島幸男
1995年4月9日に行われた都知事選、タレントで放送作家だった青島幸男氏は、選挙運動を全くせずに当選しました。
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あれも一つの「見せ方」に違いありません。
あれは「選挙運動をまったくやらない」という、世間に対してのサプライズが、強力なマーケティングになったからです。
いずれにせよ、都知事選に限りませんが、もしあなたが「選ばれる」局面に立たされたら、「どう見せるか」は大変重要だと考えます。
野呂 一郎
清和大学教授