
石丸伸二氏の善戦を分析する。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:石丸伸二氏が得票を伸ばした要因は、彼が時代の申し子だったからだ。彼のスタイルは、日本社会の変化のみならず、世界の潮流にも合致していた。勝因は「彼のジェンダーレスなたたずまいにある」というのは、暴論だろうか。トップ画はhttps://x.gd/Lfo6i
なぜ石丸伸二なのか
小池氏の圧勝に終わった都知事選ですが、あなたは街頭演説に行かれたでしょうか。
データじゃなくて、現場の空気に触れることこそ、今のマーケティングに欠けている最大の要素ではないでしょうか。

さて、
蓮舫を抜いて石丸伸二が2位につけたのは、事件と言えましょう。
街頭演説をのぞいて感じたのは、支持者の熱でした。
選挙に興味がないとされる10代、20代の支持が最も多かった石丸氏の人気は、街頭演説での若者の多さでわかりました。
僕なりに彼の人気を分析するとこうです。
1.母性本能に訴えた
このあいだ、大学のスポーツマネジメントで「カープ女子の研究」というテーマで、なぜ広島カープを応援してやまない”カープ女子”がこんなにいるのかという講義をしました。

その一つの理由が「弱いから」です。
V9時代の読売ジャイアンツみたいに強くないからこそ、応援したいのです。
そこには、弱いものを庇護する母性本能があるからではないでしょうか。
(ってこの言葉が女性差別といわれると、そうかも知れませんが。)
広島の安芸高田市の市長として、真面目に市政に参加しない議員の理不尽ないじめを受けながらも、孤軍奮闘する石丸氏の姿は、インターネットを通じて多くの女性のハートに訴えたのです。
2.反自民という価値観
結局、自民党の旧統一教会との癒着、裏金問題の本質は、彼らは人々のしあわせを追求するよりも、自分の私利私欲に夢中だ、ということですよね。
石丸氏はそれを「政治屋の一掃」と表現し、スローガンに掲げました。
時代がそれを後押しするのは当然のことでした。

3.インターネットでの人々のつながり
今や日本の何処かで起きていることは、インターネットの力で即時全国ニュースになります。
安芸高田市のひどい議員のふるまいと、それをたしなめる「石丸劇場」はYouTubeでまたたく間に広がり、石丸氏はローカルヒーローから、ナショナルヒーローになったのです。
選挙に勝ちたければ世界の動きをつかめ
僕はこれから選挙に立つ人は、仮説を持つ必要がある、と思っているんですよ。
もちろん、政治家としての主義主張は必要ですよ。
しかし、勝負に勝つ、というマインドと科学性がないと、真の意味で人々に信用されません。
いわゆる選挙戦略ということですが、基本は自分の政治的スタンスは崩さないで、妥協できるところは妥協することです。
そのためには、自分なりの仮説を持つことです。
たとえば、僕は「女性であることにあぐらをかかず、男性にも寄り添う姿勢を持つ候補者が有利」という仮説を持っています。
これはバージニア大学の社会学者ブラッド・ウィルコックス(Brad Wilcox)さんの受け売りです。
ウィルコックスさんの主張は「世界のジェンダー状況は、『韓国化』しつつある」というものです。
どういうことか。
韓国では女性が結婚を避け、デートを避け、肉体的接触を避け、その結果出生率は世界最低の0.7になっている、同じムーブメントがアメリカのみならず、西欧社会全体に起こっている、というのが彼の研究結果なのです。

ニューヨーク・タイムズWeekly6月9日号はLess marriage, less sex, less agreement(結婚が減り、セックスが減り、話し合いが減る)というショッキングな見出しで、韓国化が進むことに警鐘を鳴らしています。
話し合いが減る(less agreement)というのは、アメリカでは離婚のほとんどが、女性から切り出す、つまり男が問答無用で捨てられるという現実のことです。
ニューヨーク・タイムズはこう結論づけます。
「男は女の権利が認められすぎる現実に怒っており、差別も感じている」。
日本は、まだここまで来ていませんが、アメリカのムーブメントはいずれに日本に来ると考えているので、この現実はうけとめています。
いや、それよりも、これは世界的な潮流なのです。
ジェンダーレスな候補が勝つ時代
いや、僕は男性が逆差別されている、おかしな時代だ、などと言いたいわけじゃないですよ。
きのうのnoteで、「経済とは嫉妬に過ぎない」と申し上げました。
男は、女性に嫉妬しているんですよ、理不尽だけれど、それが現実なんです。
女性の時代だからって、女性候補が勝つわけじゃない、って今回の知事選で蓮舫さんが石丸さんの後塵を拝したことで、証明されたんじゃないでしょうか。
石丸さんの健闘は、僕の私見に過ぎませんが、彼は両性具有っていうと語弊があるけれど、ジェンダーレス的な印象があるからではないでしょうか。
見た目はフェミニンな感じがしますが、ハートはマニッシュつまり男性的な価値観を持っている、というのが僕の見立てです。
女性であることが、有利でなくなったのがいち早く世界で証明されたのが、2016年のヒラリー・クリントンがまさかのトランプに敗北した事件です。
って、決めつけちゃいけませんね。
いずれにせよ、経営学の立場からは、スローガンだけをがなって、自分の選挙戦略がまるでなってない候補者はダメ、だと言っておきます。
野呂 一郎
清和大学教授