岸田経済政策(案)第4弾 会社5時強制終了。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:アメリカ企業の最新パークス(給与以外の特典)情報。現代における教育の重み。アメリカの労働市場逼迫の現実。日米どちらのサラリーマン・サラリーウーマンが幸せか。以上に対する考察が深まるかも。
アメリカの深刻な労働力不足。労働者の子供の教育費まで負担する企業も
The Wall Street Journal2021年9月10日号一面トップ記事の見出しは、Amazon workers get tuition perk(アマゾンの労働者が、大学授業料タダの特権ゲット)です。
英語でパークス(perksとは給料以外の臨時収入,役職員の特典,役得を意味します。日本流に福利厚生と考えていいでしょう。
ワクチンでコロナが収まり、経済が再開している米国では、労働市場が逼迫しています。
労働力が足りないのは、飲食だけではありません、サプライチェーンと呼ばれる製造から販売までに関わる労働者がすべて足りないのです。
アメリカ企業は、いま、こぞって労働者に与える特典を競い、労働者の獲得、引き止めに血眼です。The Wall Street Journalは以下の企業の例をあげています。
ウォルマート(世界最大のスーパー)
150万人の大学での単位獲得に対し、授業料をフルに援助する。以前は教育を受ける労働者1日につき1ドルを支払わなくてはならなかったが、これを撤回。時給労働者も働く初日からこの特権を与えられる。
ターゲット(ウォルマートに次ぐ規模のスーパー) 34万人の労働者に対し、この8月、低コストの大学教育をオファーすると発表。
チポトレ・メキシカン・グリル(Chipotle Mexican Grill メキシコ料理レストランチェーン)
週に最低15時間働く労働者全員に、大学授業料を無料にする。 4ヶ月働けばこの資格をえられる。
スターバックス
2015年から週平均で最低20時間働く従業員に対してアリゾナ州立大学で取る単位の授業料を無料にする。
JBS USA (食肉加工大手)
フルタイムで働く1800人余の従業員への教育サービスを充実させてきており、現在は短大卒にかかる学費を全額補助する、それを扶養家族にまで広げる。600人の従業員の扶養家族が短大で学んでいる。
以下がポピュラーな履修科目。アニマルサイエンス(動物科学)、ビジネス・アドミニストレーション(経営学)、教育学、リベラルアーツ系科目、看護学。
ウェイスト・マネジメント社(Waste Management Inc.)自前の4年制大学修了プランに更に特典をつけたプログラムを今年中に発表予定。
アマゾン:75万人の従業員に対し、学校の授業料とテキスト代を全額カバー。
新傾向
従業員に対して教育サービスを無料で受けさせる企業が多くなってきましたが、正社員に対してがほとんどです。しかし、今後は時給労働者に対しても増えていくとみられています。教育機会を与えることが、給料に変わる新たな報酬になりつつあります。
アメリカ企業が従業員に教育費全面補助をする理由
ポイントは、アメリカの労働市場が非情にタイトである、逼迫しているということです。
多くの企業が時給労働者に対しての賃上げをしています。企業は、いま、従業員にやめられたら困るのです。
教育サービスを無料にするという最新の傾向は次のような意味があります。
1. 教育課程を終えるまでは、仕事をやめない(だろう)保証がもらえる
2. 金銭に代わる新・インセンティブ
3. 企業の教育を重要視する姿勢への共感を育むことで、企業に対する忠誠心を強め、ひいては長く働いてもらえる可能性が上がる
4. 教育により企業の競争力が強化される
プライドという問題
先に上げた JBS USA (食肉加工大手)の人的資源担当ヘッドのクリス・ガディス氏(Chris Gaddis)氏はこう言います。
「扶養家族まで無料で教育を受けさせるという我々の姿勢は、従業員にとってプライドなんです。従業員たちは、自分たちの子供を食肉工場で働かせたいとは思ってないからです。もちろん彼らはこの食肉加工で働くことに大いなる誇りを持っています。でも、世界はもう牛肉加工工場という枠を超えて動いてますからね」。
僕はこの会社で思わず働きたくなりましたよ。
仕事は肉体労働で、いわゆる3K(きつい、きたない、きけん)だ。でも仕事は重要極まりない食料供給という聖業。
現実は、でも、教育がない労働者が働く場所になっている。
会社はそのことを理解して、自分たちの子供にここで働かなくていいようにサポートしてくれる。
僕もこんな素晴らしい会社には、プライドを持って働けるな、そういう気がするんです。
アマゾンのダブルスタンダードで考える日米労働文化の違い
アマゾンが労働者に対し、不当な労働負荷を強いていて、カリフォルニア地裁がこれに法的なペナルティを与えた、という記事を以前書きました。
しかし、そのアマゾンも人が足りません。
フルフィルメントセンターというアマゾンの発送拠点では何十万人足りません、だから、授業料というインセンティブを強調しているのです。
効率のために過剰なノルマを与え、いっぽうでは教育費負担してあげると優しい言葉をかける。
アマゾンの今回の措置で注目は、時間給労働者でも90日以上働けば、授業料免除の資格がもらえることです。
日本型終身雇用に近づく?アメリカ企業
今日のポイントは申し上げた通り、アメリカ労働市場の逼迫です。
もう一つは、日米労働文化の違い、です。それとそれが少し変化の兆しが見えてきたということなんです。
一見、アメリカ企業やるじゃない、大学の学費も面倒見てくれるんだ、子供の学費まで面倒見てくれるんだ、と思うかも知れません。
しかし、これは先程あげた4点で、企業にとって経済合理的な行動です。
基本的にアメリカは労働流動性が高い社会、つまり、転職率が高い社会なのです。
そして、企業が従業員をクビにすることは、日本よりも制度的、文化的に遥かにたやすいという現実があるのです。
ただ、今日お話した米企業の動きを見ると、これからコロナのような変化が案じられ、労働者を長期に渡って確保することが、世界中の企業の命題になってきている。
アメリカ企業の動きは、日本企業の終身雇用に期せずして近づいているのではないか、そう考えるのは、間違いではありません。
日米労働環境の一長一短
しかし、基本はアメリカは労働流動性が高い国で、終身雇用はお国柄ではないことも事実です。
日本ならば、年功序列、終身雇用の文化があるから、なかなか人はやめない。
しかし、アメリカではいつクビになるかわからない不安と恐怖が労働者を支配しています。学位を取ってこいというのは、「クビになったときの保険をやるよ」という意味でもあるのです。
気まぐれに、給与以外の特典をくれるけれど、すぐクビを切るアメリカ企業と、大学進学の授業料は出さないけれど、首を切らず一生面倒見てくれる日本企業と、あなたはどっちを取りますか。
なぜそれでも日本はアメリカに勝てないか
終身雇用vsきまぐれ雇用、どちらも一長一短なのはわかります。
しかし、そもそも、なんでアメリカ企業は、従業員に対し大学で勉強することを奨励するのでしょう。
それは、基本残業がないからです。
僕もこれはいやといういうほど体験したけれど、9時5時で終わることがどれだけ心身の健康によいことで、自分の時間を持てることがどんなに素晴らしい喜びかということです。
5時以降、アメリカ人は学校の通えるんです。そこで賢くなり、キャリアアップもできる。おまけにその学習を金銭面でフルサポートしてもらえたら。
こう考えると、もう社会構造の、文化の違いということになります。
企業だけみると、日本のほうが安定してていいように思えるけれど、残業文化がない幸せは、ものすごい喜びですよ。そして、それがあるから、アメリカは強いんだ、それが僕の信念です。
ひらめいた。というか、思い出した。
だから、岸田経済政策第4弾は、残業ゼロ改革です。
DXの前にこれをやってほしい。そうすれば、サラリーマン、サラリーウーマンは、もっと勉強できる。そして賢くなり、日本経済が復活します。
Economics for dummiesP350にもEducation rises living standard(教育が生活水準をあげる)とあります。教育は経済成長の基本的なエンジンなんですよ。
なんでね、DXが足りないとか世の中が言ってるかっていうと、日本のサラリーマンは優秀だけれど、新しいことを学習する暇がないからなんですよ。案外、ないよ。みんな。DXだけじゃないけどね。国内MBA取りに行くって言ったって、無理でしょ。だから日米の差は永久に埋まらないんだよ。
最後ヤケになって(笑)すみません。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
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