停滞する日本経済を救うのは、“マッチメイカー”だ。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:シリコンバレー銀行の隠れた善行。スタートアップ受難は当分続く。マッチメーカーがなぜ、日本経済を救うのか。トップ画はhttps://qr.quel.jp/pv.php?b=41jZqzS
スタートアップの救世主としてのシリコンバレー銀行
BusinessWeek2023年4月3日号P14-15はThe Silicon Valley Bank Hangover(シリコンバレー銀行が残した物)というタイトルで、同銀行がベンチャー、スタートアップ企業の救世主というべき存在だったと、ほめたたえています。
具体的には、こう持ち上げているのです。
記事は、これから金利がまた上がり、ベンチャー、スタートアップはいよいよカネを借りることができなくなり、倒産が相次ぐだろう、シリコンバレー銀行を潰したのは誰だ、どうしてくれる、と結んでいます。
これからしばらくは、スタートアップの受難が続くでしょう。
お金を用立てることができないからです。
シリコンバレー銀行の消滅で、IT企業に金を貸すところがなくなります。IT企業は金利が高すぎて、他の銀行からは金を借りられません。
スタートアップらは、ダウン・ラウンド(down round)つまり、従来より安い価格で株式を発行して増資を行うことを余儀なくされ、折からのIT企業に吹く逆風も手伝い、冬の時代に入ったようです。
マッチメーカーという先見性
しかし、シリコンバレー銀行は、大銀行ができなかったことをやっていたんだな、とこの記事を読んで思いました。
それは冒頭にあげた、スタートアップに対しての様々なサービスであり、とくに”マッチメイカー”業務には感心させられたのです。
マッチメーカーというサービスは、その企業にあったパートナーを紹介することです。
企業Aはある技術を求めていて、それを作る能力がある企業Bを紹介する。企業Cはあと一歩で新製品を開発できるのだが、大量生産のノウハウがないから、アセンブリーに強い企業Dに話を持ちかける。
これがマッチメーカーとしての、シリコンバレー銀行のビジネスです。
M&Aアドバイスという業務はよく知られています。しかし、それは大企業が企業の数字だけで機械的にやるマニュアルに過ぎません。
想像するに、シリコンバレー銀行は、常日頃から、小規模IT企業から、様々な相談を受けていたのではないでしょうか。
そして財務諸表だけではわからない各企業の情報を持っていたのです。だからこそ、マッチメーカーが務まったのです。
AIが何でもかんでも答える時代が、きました。しかし、AIはマッチメーカーには向いていません。
無論、両者の数字だけで協働の可能性について、Yes,Noくらいは答えられるでしょう。
でも、そもそもAIは企業の隠されたデータや情報を知る由もなく、それがマッチメイカーとして最大の欠点です。
シリコンバレー銀行は、インターネット上にない企業の情報をたくさんもっており、その意味でマッチメイカーとしては相当優秀だったのではないでしょうか。
しかし、米国の金利政策の犠牲となって、その存在自体が消されてしまったのです。
雑談ができるのが人間の強み
おそらく、シリコンバレー銀行は地元密着で、常日頃企業とのコミニケーションを取っていたのでしょう。
言ってみれば雑談をしていたのです。
僕は雑談こそが銀行業界、スタートアップ業界にとって非常に大切なことだと思うんですよ。
ゆるい雑談を出来る関係こそが、お互い込み入った情報をやり取りする間柄に発展するからです。
このマッチメーク事業、発展する可能性があったのに、金利が上がりもうシリコンバレー銀行みたいな銀行は過去の遺物になってしまいそうです。
日本政府はマッチメイク事業に補助金を
ひるがえって、日本はどうでしょう。
日本の地銀は、アメリカよりももっと地元密着型であり、金利が上がったからと言って取り付け騒ぎが起こり、預金が引き出され倒産することはまだまれです。
地域経済を活性化するために、政府は地銀にテコ入れすべきです。
僕は地銀がシリコンバレー銀行のように、マッチメイク事業を推進すべきだと考えます。
なぜならば、アベノミクスの「成長分野に投資をする」というのは幻想に過ぎないからです。
バイオ、細胞、再生エネルギーが成長分野と言われてますが、実証できていません。
僕は成長分野などを無理くりに決めるのではなくて、マッチメイクで新しい事業を生み出せば、おのずと経済は上向くと考えています。
マッチメイクを求めている企業はたくさんあると思うんですよ。しかし、仲介者がいないんです。
シリコンバレー銀行ばりに、マッチメイクが出来るような銀行が増えれば、どんどん画期的な新規事業が生まれ、これが日本経済を活気づけることは間違いないと考えます。
政府はこうした地域を発展させるマッチメイク事業に対して、補助金を出したらどうなのか。
新しい技術は、使われないと意味がなく、利益を生みません。
仲介、マッチメークが今こそ求められています。仲介することにより、両社のいい部分を持ち寄り、補完し合うことで新たな産業を創るのです。
それこそが停滞している経済へのカンフル剤だと思うのですが。いかがでしょうか。
野呂 一郎
清和大学教授
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