インスタvsTik tok仁義なき戦い
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:写真・画像・映像SNSの世界で今何がおこっているか。なぜフェイスブックいやメタが収益半分になってしまったのか。トレンドセッターのパワー。
インスタのあからさまな提案
昨年インスタグラムは、9万3千人のフォロワーを持つ24歳のジャスティナ・シャープ(Justina Sharp)さんを呼び出しました。
「彼女のファンベースを更に拡大するためにお話をしたい」、ということだったので、Noというのも芸がないと思い彼女はOKしたのです。
話しているうちに、彼女はちょっと嫌になってしまったんです。
担当者のあまりのフェイスブック愛というか、フェイスブック=神みたいな話しぶりに。
シャープさんは担当者が30分くらい、ありきたりなフォロワー拡大策、例えば「最初の5秒見てくれないとダメ、ハッシュタグの使い方、ポスト(投稿)のタイミングはこう」などの説明を聞いていました。
で、最後にシャープさんはインスタグラムのとんでもない提案にびっくりしたそうなんです。
それはこんな会話でした。
インスタ担当者:「あなたがこの世界で最も成功するにはどうしたらいいと思う?」
シャープさん:「???」
インスタ担当者:「それはあなたのインスタ投稿を全部インスタ・オリジナルにすればいいのよ」
シャープさんは、インスタ側が何を言いたいか、やっとわかったのです。
要するにTik tokには動画を上げるな、ということだったのです。
彼女は「え、それかよ」と拍子抜けしたのでした。
インスタの対Tik tok戦略
僕も思うのですが、もうYouTubeはどうかな。長すぎますよね、30分とか平気で長いものが珍しくない。だからみんな早送りで見るんですよね。
「もう時代は15秒で終わるTik tokだ」と言われても、そのとおりだなと感じます。
ジジイの僕でさえそうなんだから、トレンドセッター(trendsetter)と言われるプレ・ティーン(13歳未満主に8-12歳)のSNSユーザーたちは、「Tik tok一択でしょ」ということになりますよね。
そうなんですよ、インスタの対Tik tok戦略は、このトレンドセッターたちにすがることなんです。
手っ取り早くインフルエンサーを買収でもなんでもして、取り込んでしまえ、というのが、さっきのシャープさんへの「悪魔の誘い」だったわけです。
もう一つの戦略は、ものまね、英語でコピーキャット(copycat)という古くて新しい手法ですね。
皆さん御存知の通り、インスタはリール(Reels)と呼ぶ、Tik tokの15秒動画を真似した投稿フォーマットを開発しました。
BusinessWeek2022年5月30日号は、You know what's cool?ほんとのクールを知ってるの、というタイトルで、こうしたフェイスブックいやメタ・プラットフォームの姿勢を「なりふりかまわない、プライドないのか?」の論調で批判しています。
ちなみにフェイスブックはインスタの親会社で、今は名前がメタ・プラットフォーム社、通称メタに変えたことはご存知のとおりです。
中国企業>アメリカ企業なのか
フェイスブック(メタ)はどうして、中国企業であるTik tokに、差をつけられちゃっているんでしょう。それはまたお話しますけれど、現実はこうです。
フェイスブックは1年前、その企業価値は1トリリオンダラー(100兆円)でしたが、今はその約半分までに落ち込んでいます。昨年の第四四半期の収益は251ビリオンドラー(約250億円)と、過去最低を記録しました。
昨年報道された、子供向けインスタが社会的な大ブーイングを巻き起こしたこと、フェイスブック本体の時代遅れの仕様などがマーケットから評価されてないことが原因です。
しかし、賛否あるのですが、ザッカーバーグさんはまっとうなこともやってます。それはTik tokが中国資本であることを理由とした、反Tik tokのキャンペーンです。
ワシントン・ポスト紙(Washington Post)によると、昨年メタは共和党びいきのコンサル会社・ターゲテッド・ビクトリー社(Targetted Victory)に頼んで、新聞の社説や意見欄を通じて「若者の心身の健全さを損なう」などとTik tokの悪口を書かせています。
しかし、どうやらこうした反Tik tokの試みも、若いトレンドセッターを囲ってしまっている中国企業には痛くも痒くもないみたいですね。
皮肉ではなしに、資本主義というフィールドでは、アメリカ企業のアントルプルヌアーシップ(企業家精神)よりも、ソーシャル・キャピタリズム(中国の共産主義的資本主義)のほうが強いのか、などと感じる次第です。
またこの件についてはお話したいと思います。
沖縄の皆様、台風は大丈夫でしたか。
秋の荒天には、皆様お気をつけ下さい。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー