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大量解雇はグーグルの破壊か創造か?
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:IT企業解雇の波がグーグルにも及ぶ。大量解雇でグーグルの企業文化の危機。IT企業の組織論はアバウト(ゆるさ)からタイト(ひきしめ)へ。
失業ドミノ発生
グーグルの親会社アルファベットが、グーグルを含む関連会社の従業員1万2千人の解雇を発表しました。
ツイッターが昨年暮れ大量解雇に踏み切り、アップル、マイクロソフトが1万人規模のリストラで追随、今度はグーグルかよ、という感じですね。
失業の連鎖、ドミノ倒しは、今日のThe Wall Street Journal曰く「現実の経済を反映していない」のです。失業率は史上最低ですし、求人市場は求職者が圧倒的に有利なのですから。
ではなぜ。
たしかに、この2年間IT各社は、コロナで生活がオンラインにシフトしたのをいいことに、業務拡大し大量に人を雇い抱え込みました。
それがパンデミックが明けて、人々のオンライン熱が冷めビジネスが落ち込込み、人がダブついたというわけです。
IT企業のトップたちは、コスト度外視で成長を追っかける時代(growth at all cost )は終わり、これからはいかに利益を確保していくか、堅実で賢い金の使い方が大事と口をそろえます。
まあ、言ってみれば、より金を儲けるための堅実な組織改革をこの際やろうってことなんでしょう。
便乗リストラ
しかし、僕はこれは「便乗リストラ」だと思うんですよ。
今日付けのThe Wall Street Journal電子版はGoogle Parent Alphabet to Cut 12,000 Jobs Amid Wave of Tech Layoffs (グーグル親会社のアルファベットがテクノロジー企業のレイオフの波のさなか1万2千人の人員削減)というタイトルをつけて、この件を報じています。
レイオフの波とは、自然現象というよりも、人が作ったものなのです。
その先鞭をつけたのが、イーロンマスクでした。
彼がツイッターを買う前から赤字続きだったから、リストラは不可避だったとはいえ、各社は「おぉ、言いにくいことを言ってくれた」と喝采を送り、「我々も今がレイオフのチャンス」、とこれに乗っかったのです。
いわば便乗リストラ、です。
世間はマスクを叩いてるから、ここでリストラしても、とばっちりはあまり来ないだろうと踏んだのです。
イーロンマスクとの違い
でも同じ大量解雇でも、グーグルはツイッターとの違いを見せました。
Alphabet アルファベットのCEOサンダー・ピカイ氏(Sundar Pichai)は、「今回の決定の責任はすべて私にある。不徳の致すところ」、と全従業員にウェブサイトを通じて謝罪のメッセージを送りました。
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パンデミックの2年間は同社の成長期であり、これに乗じて従業員を雇いすぎたという反省です。
謙虚な姿勢ですし、また辞めさせる従業員に対しても、制度上の援助はきちんとします。2か月前の解雇通知、メンタルヘルスへの対応、外国人に対しては移民ステータスの保全、再雇用援助などです。
とはいえ、誰も解雇されてうれしい人はいません。
グーグルの労働組合の委員長はこう言っています。
「グーグルは直近の四半期で、がっつり170億ドルも儲けている。今回の決定はあまりにひどすぎて、とても受け入れられない」。
グーグルが失ったもの
今回のリストラを受けて、当の首を宣告されたものを含めて、多くの元従業員はこう嘆いているそうです。
「今回の大量解雇で、グーグルの「ゆるくて、大学キャンパスのノリを大事にする大切な企業文化(loose and collegial culture)が失われた」。
グーグルはいろんな手当も充実していました。例えば洗濯機手当。
洗濯機を買えば費用を補填してくれるというのは、独身者の生活まで応援してくれているのかも、です。
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また、残業代もアバウトで、多少時間を多めにつけても大丈夫でした。
こうした目に見えない空気は、クリエイティブな若者をひきつけ、他の多くのIT企業が称賛し、真似をしました。
グーグルの企業文化は、ある意味イノベーションというITの本質とシンクロしているといえるでしょう。
しかし、どうやらゆるさも大学キャンパスも、グーグルから、いやIT企業から姿を消すようです。
パンデミックという最後の宴が終わり、自由なキャンパスライフを謳歌していた若者たちも、これからはまっとうな大人の世界の囚人になるのです。
規律や規則に縛られた、官僚主義が支配する企業ライフを送ることになるのです。
まるで足並みをそろえたかのような、今回のIT業界の大刷新。
これはIT時代の終わりを告げる号砲なのか、それとも新しい時代への、のろしなのでしょうか。
どちらにせよ、これまでのIT企業の組織論が壊れたことは間違いないようです。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー