推薦状はAIに書かせちゃ、受からない。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:推薦状も含め、ビジネスライティングスキルが、求められている。AIに任せればいい、という考えは、はっきりいって間違っている。トップ画はhttps://x.gd/6AvzB
推薦状を頼まれました
学生A君から大学院に行くんで推薦状を書いてほしいと言われ、もちろん快諾しました。
ここで僕は2つの選択肢に迫られました。
1.形式通りに書くか
2.形式を無視して書くか
1の形式を踏んだほうが無難だし、そうしないと「あのバカ教授、推薦状の書き方も知らねえのか」という反応をされ、「こんな非常識な教授に教わった学生は願い下げだな」となり、学生の将来を奪ってしまうんではないか、そういうまっとうな考えが浮かびました。
しかし、僕はやっぱりと言うべきか(笑)2を選択しました。
それはこういう理由です。
形式を踏まない推薦状を認めない大学院の先生は、真面目だが今後の世の中では柔軟性が足りず成功しないだろう、学生指導も無難なことしか教えないだろう。結果フツーの大学院生にしか育てられず、その学生は群雄割拠の学界で勝ち残ることはできないだろう。
それでも、もやもやしているものは少し残りました。
「A君も責任あるよ。僕に推薦状なんて頼むバカいるかよ!自業自得だ」、などと、「オレ流判断」を非難する良心に無理やりフタをしたのです。
アメリカのコミニケーション本の説得力
推薦状は、A君をとるべき理由を情熱のままに、熱弁を振るっただけのもので、欠点も正直に記しました。
ポイントは「正直さ」です。
いいところもあれば、悪いところもあり、受け入れてもらうという責任とことの重大性を考えれば、両論併記にすべきと考えました。
形式的な書き方の推薦状よりは、よくも悪くもインパクトはあるはずでしょう。
さて、推薦状をA君に渡したあと、研究室の本棚の一冊に眼が止まりました。
その本には、こんなことが書かれていたんです。
地位が高くなればなるほど、文書に創造性が求められる
この有名なコミニケーション本の著者ロッカー女史は、こう続けます。(ここはオレ流『超意訳で』)
これをA君に書く推薦状にあてはめれば、こうなりますよね。
おまえとAくんの状況、直面している問題は、大学院に受からなくてはならないという、ルーティン処理などできない極めて難しい局面。
だからこそ、フォーマットに頼らないクリエイティブな文書が必要。
僕は正しかったのです。
いや、これがアメリカのコミニケーションの学術書という権威だから、という理由ではありません。
「まさにその通り」だと、僕が納得したからです。
クリエイティブな文書とは何か
読者の皆様は、こう反論するでしょう。
「じゃあ、お前の書いた推薦状が、AIのそれより効果的な証明をしてみろ」、と。
結論を言うと、「データの揃え方に関する仮説構築力」は人間のほうが優れている、ということです。
僕は宛先の先生のプロフィールを調べ、学者のみならず、プロフェッショナルな実務家であることを突き止めました。
その先生の大学のゼミの様子をSNSでチェックし、先生の育てたい学生像を把握しました。
教えている大学院の、商業的に置かれている状況を把握しました。
文科省の、大学のその分野に対する指導要領をチェックしました。
以上のデータに鑑み、A君の長所の中で、その先生に最も刺さると思われる美点を書き連ねたのです。
あくまで拙い読みでしかありませんが、AIは人の心まで読めないので、人間の創造性(想像力)の方がトータルでまさると考えます。
さあ、A君、受かるといいなあ。
野呂 一郎
清和大学教授