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アメリカvs中国のサプライチェーン戦争に勝者はない。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:泥沼化する、中国への関税強化を発端とする新貿易問題。中国はこれを「サプライチェーン戦争」と位置づけた。一方アメリカは、中国抜きの国際サプライチェーン、つまり中国以外で原材料をゲットする作戦に転じたが、現状はムリ。どっちが勝つにせよ、ムダな消耗戦になるのはわかりきっている。日本は漁夫の利を獲よ。トップ画はhttps://x.gd/Efnp2

中国が握っているアメリカの国家セキュリティ

きのう、トランプのアメリカ・ファーストはプロパガンダにすぎないと申しました。

選挙に勝ちたいがためのアメリカ国民に耳障りのいい、アメリカ・ファーストだというのは、国家最大の利益であるナショナル・セキュリティ国防を無視した言葉だからです。

ウクライナ戦争でも明らかになったように、今後の戦争の帰趨は自動飛行するドローンにかかっていると言われています。

各国は安くて性能の良いドローン開発に血眼ですが、アメリカのスカイディオ社(Skydio)がこの分野では図抜けた存在です。

https://x.gd/BoroU

そのスカイディオが今、存亡の危機に立たされているのです。

なぜならば、ドローンの中枢部である電池の供給が滞ったからです。

11月のトランプ選挙の直前、中国がアメリカへのバッテリーの供給を制限したのです。

もちろん、これはトランプが中国産品への関税を100%にするという宣言に対しての報復です。

サプライチェーン戦争勃発

2019年から中国は制裁対象の企業のブラックリストを作成することを法律で定め、ほとんどの製品に必要なレアアースやリチウムの供給をストップし始めました。

https://x.gd/Prn7s

もちろん中国にしても、アメリカの仕打ちは打撃です。

電気製品に欠かせないマイクロチップ、牛の肥料につかう大豆の輸入に高額の関税がかけられるのは痛手ですし、多くの国営企業のパソコンにはインテル製品が使われています。

それでも、ニューヨーク・タイムズは、「中国よりも、アメリカ企業の打撃のほうが大きい。中国はこれをサプライチェーン戦争(supply chain warfare)と位置づけ、「倍返しだHit us and we will strike back harder(やるならやれ、でももっとひどい反撃するぞ)と息巻いている」、と報道しています。

ニューヨーク・タイムズWeekly2024年11月17日号Beijing is getting serious about a new trade war(中国が新貿易戦争に真剣)より

中国共産党が発行するタブロイド紙(大衆新聞)グローバル・タイムズ(Global Times)の見出しには

「中国政府から制裁を受けたアメリカ企業は苦しみに泣いている。ざまをみろ、だ!アメリカ企業よ、中国を封じ込めようとするアメリカ政府の道具になるな。いわんこっちゃないぞ」

前掲ニューヨーク・タイムズ

との、強がり、いや勝利宣言の言葉が踊りました。

報復合戦に勝者はない

関税倍増がアメリカを利する行為なのか、この件を見ただけで明白に「それは違う」とわかりますよね。

確かに中国の台頭を許せば、噂される国防に関する情報が漏れる可能性が大きくなるというのはわかります。

TikTok の禁止もこの流れです。

しかし、安い中国産品がアメリカ経済を傷つけている、というトランプの主張は、この件を見ても表面的な主張だとわかります。

トランプが愚かなのは、物事を白か黒かの二元論で判断することであり、結局この手の制裁合戦は、両者の感情をエスカレートさせるだけで、無益だということがわからないことです。

まあこれは、彼一流のディール戦術に過ぎないともいえますが。

https://x.gd/zXK5Q

中国憎しを焚き付ければ、票が取れると踏んだビジネスマンの感覚は正しいにせよ、です。

国家セキュリティに大きな不安要素を抱えてまで、中国への制裁をやるのはアメリカの国益にはならない、と言うしかないでしょう。

日本は隙をつけ

報道されているように、つい先日、日中の外相会談で、日本を訪れる中国人の観光客向けのビザの発給要件や手続きを緩和することが発表されましたね。

アメリカとの関係が険悪になりつつある中で、漁夫の利を得て中国との関係改善に踏み出そうという、日本政府にしては悪くないタイムリーなアクションです。

このアクションだけで終わらせず、日中友好に向けて打てる手はどんどん打つべきです。

外交に限りませんが、僕にとっては、タイミングこそすべてであり、世界の動きを注視することが大事なことを考える機会になりました。

野呂 一郎
清和大学教授


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