ロシアを襲う巨大な”ブーメラン”。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:戦争の本質を理解していないロシア。ロシア3つの誤算。世界はもはや大きな一つのパイである。
ロシアは最初から負けていた
戦争は時として、長期的な戦いをサポートする経済的資源をより多く持っているものが勝利します。
戦闘に必要な物資がなければ、戦いは続けられないからです。
この点から現在の時点では、西側から戦うための物資の供給が絶えないウクライナが優勢、という報道が出てきました。
よくよく考えてみると、このことは真理ではないでしょうか。
ロシアは、今のウクライナを西側が必要物資の供給で支えているという現実を、もし戦争を始める前に読めていたら、戦争はやらなかったかもしれません。
もう一つロシアの誤算があります。
それは、世界はもはや一つの経済圏だという事実です。
これはウクライナ戦争に端を発する、今の世界同時不況がそれを証明しています。
ひとたびエネルギー危機が起これば、アメリカのガソリンが高騰し、ヨーロッパの暖房費が倍になり、原材料の値上がりが日本にも波及します。
ロシアが起こした戦争が、世界的なインフレを起こしているのです。
ロシアは経済制裁もなんのその、こっちには石油と天然ガスがあるとばかり、エネルギーのボッタクリ商法、売り惜しみをしてきました。
その結果ロシア産原油と天然ガスが高騰、このエネルギー価格の上昇により、ロシアは収益が拡大しました。
しかし、ロシアの連邦政府の財政は先月は赤字でした。
エネルギー関係の収益が減ったからです。
マドリッド・IEビジネススクールでファイナンスを教えているマキシム・ミロノフ氏( Maxim Mironov)は「ロシアにとってエネルギー価格の上昇は棚からぼたもちであった。エネルギーはロシア経済の唯一の強みだが、エネルギーは価格はピークに達した模様」と話しています。
ミロノフ教授は「石油と天然ガスからの収益が枯渇(dry up)し始めた。これはロシアの経済に深刻な打撃を与え始めている」、と警告を鳴らします。
世界経済は一つのパイ
ロシアは石油と天然ガスを握っていることは、世界経済のリーダーシップを握っていることだ、と勘違いしていたのです。
どんなに天然資源を独占的に持っていたとしても、「売り惜しみという意地悪をすれば、世界の経済を牛耳ることができる」などという、かつての中東が享受していたような「持てるものが強い」という世界は終わったのです。
なぜならば、グローバリゼーションという相互依存が強くなりすぎて、一国だけが経済繁栄を享受することはできなくなったからです。
ロシアがエネルギーを売り惜しみをすることで世界不況が起こり、それが巨大なブーメランとなって原油価格を下落させ、ロシアの首を絞めにかかっています。
世界経済は一つのパイである、つまり世界は海や国境で隔てられていますが、実質はEUのような地続きの共同体である、という現代的認識がロシアにはないのです。
30万人徴兵令の愚かさ
ロシアの計算違いは、ここに来てまた出てきました。
例の30万人のドラフト(draft徴兵令)です。
数日前に発令された徴兵令の直後に、国内投資家に制限されているロシア株式市場は暴落しました。
ある投資家は
と、話します。
そもそもこの30万動員は、徴兵された兵士のために必要な施設増強、教育訓練、給与という新たなコストを強いられます。
それに加えて、経済の主体である企業が動かなくなるわけです。
ロシアは、戦争の帰趨を論じる前に、内部崩壊するのではないでしょうか。
それより何より学生、高齢者、障害のある方にも召集令状を送りつけたことで、国民をとうとう戦争に巻き込んでしまった、これが問題です。
ロシア国民は他国に逃げ、頭脳流出(brain drain)も止まりません。
戦争をすると返ってくるブーメラン効果は、結局自滅への道です。
現代という時代の本質を理解しないリーダーを持った国の悲劇、というべきでしょうか。
世界平和への貢献という視点がない日本
今日僕が言いたかったことは、世界はもう巨大なEUみたいな存在で、運命共同体であり、共存共栄しか道はないんです。
アメリカ・ファーストという誰かさんのスローガンは、その意味で矛盾しているんです。間違っている。
世界のリーダーは、世界平和に貢献する、世界経済の安定に貢献するという姿勢が求められていると考えます。
弔問外交で、いったい我らのリーダーは一体何をやったというのでしょうか。
岸田さんは先週、国連改革論をぶったというのですが、何の具体策もなく、笑っちゃいますね。せいぜい、日本の精鋭部隊を国連に送る、とか言えばいいのに。
一事が万事です。
ロシアの問題に、では日本はどういう立場でコミットするのか。単にアメリカに同調し制裁に加わるだけではないでしょうか。
僕はこれを政治家の無能などと言いたいわけではありません。
日本全体が、意見や主張を持ったり、具体的に考えたり、議論しない国なのです。
こういう態度や習慣が染み付いているから、世界に対して積極的な物言いなどできないのです。
首相の態度も、そういう日本のあり方の反映に過ぎません。
フランスのマクロン大統領は、プーチンと粘り強く話し合いを続けています。
世界に対してフランスが貢献しないとならない、そう信じているフランス国民の意思の反映でしょう。
そろそろ日本も、世界という一つの共同体を守るという意識のあるリーダーが待望されていると思います。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー