石破茂の本質を、圧倒的に簡潔にわかりやすく表現する英語のチカラ。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:日本の新聞を読むより、アメリカの経済紙を読んだほうが、日本の現状がよくわかるという皮肉。これは英語の特性ゆえなのか、記者が伝え上手なのか。
出だしの3行ですべて伝えるThe Wall Street Journal
The Wall Street Journalは、今回の石破勝利の記事で、英語の持つ「わかりやすく、はっきり明快に物事を伝える機能」が、日本語に比べて格段に優れていることを示した、そう思うんです。
いや、そうじゃなく、「日本語であれ、英語であれ、わかりやすく、明瞭に考え、書く記者の能力にすぎない」読者の皆様はそう反論されるかもしれません。
まあたしかにそれはそうかも。
ただ、英語は結論から言う、とよく言いますよね。
それは英語の特性であり、文化であり、価値観です。
新聞記事で言うと、見出しと、ファーストパラグラフ(最初の段落)が勝負なのです。
ここに、読者に伝えるべき最重要な情報をぶち込むのです。
見出しと第一段落の数行で、記事の概要と最重要ポイントをまとめてしまうんです。
実際のThe Wall Street Journalの石破茂記事の見出しと、最初の段落を見てください。
見出しはこうですよ。
続けて第一パラグラフはこうです。
ここでもう勝負あり、ですね。
たった3行で、記事のまとめと最重要情報をわかりやすく伝えきっています。
英語は3行ですべて伝える
出だしの3行で何を伝えたか。
1.何についての記事か
Military alliance (軍事同盟)、Former Defense Minister(元防衛大臣)という単語で、日米の軍事同盟が問題になっていることが伝わります。
2.日本の新リーダー、石破茂とは何者か
石破茂を全く知らないアメリカ人に説明するのですが、元防衛大臣と明快に伝えています。
石破氏を全く知らない、アメリカ人にも「元・防衛大臣」といえばはっきりわかります。
3.石破茂の主張とは何か
日米軍事協定(日米地位協定)を不平等と批判している、と明言しています。
英語は一言で本質を表現する
日米軍事協定、いわゆる日米地位協定ってなんなのか?
記事はそれを英語のワンワードでこう言っています。
アシンメトリー(asymmetrical 左右非対称)。
要するに「いびつ」という意味ですよね。
日本語でも、最近、ファッション業界を中心に、「アシンメトリー」という言葉が市民権を得てきました。
アシンメトリー、まさにいびつな日米地位協定の本質を、この一言で表しています。
もう一つは、石破氏の主張である「主権国家」です。
石破さんは、米軍の軍用機が沖縄の中心部に墜落したが、日米地位協定を警察の捜査すら拒否した例の事件で、「これで主権国家かよ」と息巻いたと、日本の新聞は伝えました。
「主権国家」。
僕は、わかりそうでわからない表現だと思ったのです。
でも、The Wall Street Journalでは、それをindependent nation (独立国家)と表現していました。
インディペンデント・ネーション、つまり独立している国家か、それならわかります。
The Wall Street Journalは、こう書いています。
もう一つ、石破氏をワンワードで表現しています。
マーベリックな政治家(the maverick lawmaker 一匹オオカミの政治家)。
英語は速報をいれる
こんな描写もありました。
「石破氏最大の懸案は、日本の軍事だ」とし、
ロシア機の領空侵犯は、昨日一昨日のニュースですよね、英語は新しい情報が大好きな文化があり、このような表現になったのです。(きっぱり)
英語は本質を簡単に表現する
日米地位協定を不平等だ、と批判する石破氏。
しかし、「それは虫がいいんじゃないの」といいたげな反論をThe Wall Street Journalは展開しているのです。
それは、圧倒的に簡単な言い方です。
やはり、このThe Wall Street Journalの石破記事を見ると、記者の技能よりも、英語の特性が簡潔でパンチのある表現を生み出しているのではないか、
そう思うのです。
野呂 一郎
清和大学教授
野呂一郎プロフィール
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