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石破茂の本質を、圧倒的に簡潔にわかりやすく表現する英語のチカラ。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:日本の新聞を読むより、アメリカの経済紙を読んだほうが、日本の現状がよくわかるという皮肉。これは英語の特性ゆえなのか、記者が伝え上手なのか。

出だしの3行ですべて伝えるThe Wall Street Journal

The Wall Street Journalは、今回の石破勝利の記事で、英語の持つ「わかりやすく、はっきり明快に物事を伝える機能」が、日本語に比べて格段に優れていることを示した、そう思うんです。

いや、そうじゃなく、「日本語であれ、英語であれ、わかりやすく明瞭に考え、書く記者の能力にすぎない」読者の皆様はそう反論されるかもしれません。

まあたしかにそれはそうかも。

ただ、英語は結論から言う、とよく言いますよね。

それは英語の特性であり、文化であり、価値観です。

新聞記事で言うと、見出しと、ファーストパラグラフ(最初の段落)が勝負なのです。

ここに、読者に伝えるべき最重要な情報をぶち込むのです。

見出しと第一段落の数行で、記事の概要と最重要ポイントをまとめてしまうんです。

実際のThe Wall Street Journalの石破茂記事の見出しと、最初の段落を見てください。

見出しはこうですよ。

アメリカとの軍事同盟を作り直したい新しいリーダーが日本に誕生
(Japan Gets a New Leader Who Wants to Remake the U.S. Military Alliance)

The Wall Street Journal電子版2024年9月27日号
https://x.gd/ALryx


続けて第一パラグラフはこうです。

5回目の総裁選で初めて勝利した、元防衛大臣の石破茂は、この軍事協約を不平等だと批判している。
(Former Defense Minister Shigeru Ishiba, elected on fifth try, criticizes security treaty as unequal)

前掲The Wall Street Journal

ここでもう勝負あり、ですね。

たった3行で、記事のまとめと最重要情報をわかりやすく伝えきっています。

英語は3行ですべて伝える

出だしの3行で何を伝えたか。

1.何についての記事か
Military alliance (軍事同盟)、Former Defense Minister(元防衛大臣)という単語で、日米の軍事同盟が問題になっていることが伝わります。

2.日本の新リーダー、石破茂とは何者か

石破茂を全く知らないアメリカ人に説明するのですが、元防衛大臣と明快に伝えています。

石破氏を全く知らない、アメリカ人にも「元・防衛大臣」といえばはっきりわかります。

3.石破茂の主張とは何か

日米軍事協定(日米地位協定)を不平等と批判している、と明言しています。

英語は一言で本質を表現する

日米軍事協定、いわゆる日米地位協定ってなんなのか?

記事はそれを英語のワンワードでこう言っています。

アシンメトリー(asymmetrical 左右非対称)。

要するに「いびつ」という意味ですよね。

日本語でも、最近、ファッション業界を中心に、「アシンメトリー」という言葉が市民権を得てきました。

アシンメトリー、まさにいびつな日米地位協定の本質を、この一言で表しています。

もう一つは、石破氏の主張である「主権国家」です。

石破さんは、米軍の軍用機が沖縄の中心部に墜落したが、日米地位協定を警察の捜査すら拒否した例の事件で、「これで主権国家かよ」と息巻いたと、日本の新聞は伝えました。

https://x.gd/kauVJ

「主権国家」。

僕は、わかりそうでわからない表現だと思ったのです。

でも、The Wall Street Journalでは、それをindependent nation (独立国家)と表現していました。

インディペンデント・ネーション、つまり独立している国家か、それならわかります。

The Wall Street Journalは、こう書いています。

私(石破氏)は、日本が本当に独立国家だとは思えない。
“I don’t think Japan is a truly independent nation yet,”

前掲The Wall Street Journal

もう一つ、石破氏をワンワードで表現しています。

マーベリックな政治家(the maverick lawmaker 一匹オオカミの政治家)。

https://x.gd/QavmT

英語は速報をいれる

こんな描写もありました。

「石破氏最大の懸案は、日本の軍事だ」とし、

中国の急速な軍事拡大、北朝鮮のミサイル実験、そしてロシア機が日本の領空侵犯をした件、をあげています。
China’s fast-growing military, North Korean missile tests and an aggressive Russia that recently sent a plane into Japanese airspace.

前掲The Wall Street Journal

ロシア機の領空侵犯は、昨日一昨日のニュースですよね、英語は新しい情報が大好きな文化があり、このような表現になったのです。(きっぱり)

英語は本質を簡単に表現する

日米地位協定を不平等だ、と批判する石破氏。

しかし、「それは虫がいいんじゃないの」といいたげな反論をThe Wall Street Journalは展開しているのです。

それは、圧倒的に簡単な言い方です。

この協定は日本が攻撃されたら、アメリカは日本を救助する義務がある、しかし、アメリカが攻撃されても、日本がアメリカを助けなくてもいいのだ。
A treaty obligates the U.S. to come to Japan’s aid if Japan is attacked, but doesn’t require Japan to do the same.

前掲The Wall Street Journal

やはり、このThe Wall Street Journalの石破記事を見ると、記者の技能よりも、英語の特性が簡潔でパンチのある表現を生み出しているのではないか、
そう思うのです。

野呂 一郎
清和大学教授

野呂一郎プロフィール



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