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ドローン誤爆でアフガン人10人犠牲にみる、指導者が戦争意思決定する難しさ

この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:アメリカ大統領がアフガンに継続して関わるか、撤退するかの意思決定における難所の理解。あなたが大統領や首相になった時、自国民の命と他国民の命のどちらを大事にすべきかを迫られたときの心の準備。ドローンという最新テクノロジーの本質的な欠点の理解。

ドローン攻撃失敗は人類への警告

アメリカ軍のドローン誤爆で8月29日、子供を含む10人のアフガニスタン人がなくなりました。このことは、ドローン攻撃の是非という単純な議論を離れて、以下の非常に重要な教訓を我々に投げかけています。(The Wall Street Journal2021年9月28日号を参照)

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1. ドローンの長所と短所
2. 軍隊を外国に駐留させることの是非
3. 機械(IT、AI含む)vs人間という古典的かつ本質的な問い
4. 人の命をどう考えるか
5. 戦争と平和におけるコストの考え方

ドローンの長所と短所

ドローンは確かにテロリストや目標物に対して正確に攻撃をしかけることができます。しかし、今回ドローンは米兵を襲う敵ではなくて、無辜の民を爆撃してしまったのです。

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WSJによればその理由は、No American boots on the ground(地上に駐留する米兵がまったくいなかった)からだというのです。

ドローンは完璧な兵器ではありません、人間の判断にはかなわないのです。

こうした非戦闘員の一般人を殺しかねないリスクを伴う攻撃を、英語でオーバー・ザ・ホライゾンover the horizonといいます。この記事はまさにこのオーバー・ザ・ホライゾンのコスト、つまりマイナス面を真剣に考えろ、という主張です。

軍隊を外国に駐留させることの是非

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 結局、アメリカは今回イスラム国などの、タリバンに敵対するテロリストたちが、米兵にテロを仕掛けることを危惧して、先制攻撃を仕掛けたのです。

でも本来ならば、ドローンでなく、ある程度のしっかりした人数の地上軍が人間の感覚をフルに使って、また現地のリアルタイムの情報なども勘案して、テロリストを攻撃すべきだったのです。

しかし、もうアメリカ兵はほとんど帰国してしまった。米兵を守るために省力ドローンを使って戦うしかなかった、というのが米政府の言い分です。

バイデン大統領は、このアフガン撤退について「アフガンに関わる国家的利益がない」と何度も繰り返しています。

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日本ではこうした状況はありませんが、他国に武力介入も含めて関わるアメリカは常に、その国にどのくらいの程度関わるかの意思決定をしなくてはなりません。

今回、アメリカは他国への軍事を含む介入に関して、やるか(Go)かやらないか(No Go)の二択しかないとの意思表示をしたのです。

やる、はその国と米軍の安全を確保できる規模の介入です。

やらない(No Go)は完全撤退です。

今回はこの二択の中間にいる、あやふやなところを突かれた失態と言えます。

アメリカはほとんどの国に米軍を駐留させています。

「世界の警察官はやめた」とは口だけで、やめてません。

でもアフガンはイスラム国圏で、欧米的価値観とまったく違うから、駐留して国を管理、監視するコストは大変で、見切りをつけた、ということなのでしょう。

でも皆さん、思いませんか、このアメリカのアフガン放置という意思決定は、果たして正しかったのかどうか。

アメリカしかアフガンを監視する存在はいないわけで、それを放棄した悪影響は、アフガンの女性が男女差別社会に逆戻りして苦しむだけに終わらないでしょう。

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機械(IT、AI含む)vs人間という古典的かつ本質的な問い

アメリカは今回の失敗に懲りず、これからもアメリカ人をテロから守るためドローンを使いつづけます。

世界中どこにいてもアメリカ人は、他国から敵視されることが多いからです。

しかし、先程もふれたようにドローンは人間の代わりはできないのです。

目標を正確にとらえ、そこから攻撃を仕掛けることはできますが、そこに人間がいるか、いないか、その人間がテロリストか否か、攻撃をそこですることが適切かなどの、様々な文脈を読む力なんてないんです。

これは考えてみると、昨今議論が沸騰しているロボット(AI)vs人間の論争と同じですよね。

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確かにアマゾンの物流倉庫はAIで動いていますが、戦争のように人間の命に関わるようなことは、絶対ダメなんじゃないでしょうか。

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自動運転だって、もう結論出てるでしょ。公道で使えるわけないじゃないですか、やっぱり。

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人の命をどう考えるか

今回、国務長官だったかが、アメリカのミスを認め、公式に遺族に謝罪しましたよね。

10名もの犠牲を出したことに、アメリカは今回、国益という観点からこれをリスクと考えているようなんですよ。

他国の何の罪もない人々を殺めたことは、明らかに両国の友好や外交、アメリカの国際的評判も傷つけました。

ここでそれを認め、謝罪することで、バイデン大統領は「トランプとは違う」という人道路線を強調したかったというのもあるでしょう。

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戦争と平和におけるコストの考え方

かつて、イラク戦争の時、アメリカは無人自走機関銃、無人爆撃機等の遠隔テクノロジーを駆使して機械的に人殺しをした、と非難されました。

それ以前にも中東諸国で大量に民間人を巻き込み犠牲にし、それが反アメリカの怨念になり、9.11の引き金になったことが指摘されています。

今回のアメリカの謝罪はこれらを踏まえ、他国民を犠牲にしたことを大きなコスト、としてとらえ始めたのではないでしょうか。

また、いつものことですが、僕は、このアメリカの態度の変化の背後にはwokeという流れがあると思います。

今回のアメリカの、他国人の命を誤って奪ったことに対する「コスト意識」という問題は、以前と違うものを感じます。

アメリカはひょっとして、ちょっとヒューマンな国になってきたのかなあ、それとも世界の世論が気になるだけなのか。

今日も最後までお読み頂きありがとうございました。

ではまた明日。

                             野呂 一郎

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