最強企業論 エコシステムとしてのプラットフォーマー
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:最強企業シリーズだよ。今日はITプラットフォームが信頼あるエコシステムであるべき、という条件を吟味しよう。
ITプラットフォーマーは責任を取るべき
先日の最強企業の条件の一つ、信頼がおけるデジタル・エコシステム(trustworthy digital ecosystem)、を考えましょう。
エコシステムとはなんでしょう。
英和辞典の訳では「生態系」となっていますが、もともとの意味はこんな感じです。
デジタル・エコシステムとは、何のことはない、グーグル、アップル、メタ、アマゾン等のプラットフォーマーのビジネスが、今や「デジタル生態系」と例えられる位、人類の生活に密着している、というたとえなのです。
それも、彼らは人類の生活の中心に躍り出てしまっています。
でも、彼らの実態はどう出しょう。
一言でいうと、「信頼がおけない」です。
信頼がおけないプラットフォーマーの現実
きのうNHKで「サイバースペースに児童ポルノが野放しにされている問題」を取り上げていました。
テレビでは、アメリカの議会にこれらプラットフォーマーのトップが招集され、議員たちに激しい叱責を受けるシーンが映し出されています。
メタのCEO、ザッカーバーグに上院議員がこう迫ります。
「Your company is responsible for what you company has done!」
(あんたの会社がやったことの責任を取れよ!)
この議員の発言の背景には、アメリカではリベンジポルノ、つまり交際相手に裸の写真を送らせ、それを外部にだすと言って脅し、金品を巻き上げる許せない犯罪に巻き込まれ、自死に追い込まれるティーンの両親の訴えがありました。
10歳以下の小児がレイプされている動画等が、取引されている実体も、赤裸々に報じられていました。
もうここ20年、電子掲示板での誹謗中傷、詐欺事件、アカウント乗っ取り、などありとあらゆる新しいサイバー上の犯罪が起こっているのに、プラットフォーマーたちは責任を取ろうとしません。
番組では、アップル社の元幹部のこんな発言を、カメラにさらしました。
「アップル社は、こうした被害に対しての救済に関しては、優先順位が低かった」。
資本主義が守るプラットフォーマー
こうしたITデジタルネットワークの無責任を糾弾し、正すことはこれからの人類の課題であり、企業としても最優先事項であるべきです。
しかし、ここに大きな壁が立ちはだかります。
資本主義、です。
これらのITデジタルエコシステムを動かしているプラットフォーマーたちの、生誕地&主戦場はアメリカでしょ。
アメリカの経済を動かしているのは、間違いなくアップルやグーグルなんです。
だから、彼らの活動に足かせをはめることは、アメリカ政府としてははっきりいってやりたくないのです。
プラットフォーマーたちの動きを規制しているのは、もっぱらヨーロッパです。
裁判も頻発していますが、大型案件には、ITプラットフォーマーたちは金にあかして、ロビー活動(政治家を動かす寝技)やら、敏腕弁護士団を結成、自らの権益を守ろうとします。
資本主義経済の厄介なところは、ステークホルダー(利害関係者)が意外なつながりを持っていることです。
ITプラットフォーマーを規制したはいいが、巨人に依存している中小企業に累が及ぶこともあり、大企業の独占を崩すのも、慎重にやらねばならないのです。
それでも責任を取るべき
この問題は難しいですよね、なぜならば、我々は被害者であると同時に受益者でもあるからです。
被害者救済や予防に莫大な金がかかり、そのコストを我々が負担しなくてはならないはめになったら・・・
でも、消費者は、責任を取らない企業をそれでも糾弾するでしょう。
最強企業は、言われてやる企業ではないのです。
あれこれ言われる前に、自ら高い倫理を持って、動く企業なのです。
ザッカーバーグさん、わかっているのかな。
野呂 一郎
清和大学教授
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