バイデン大統領サウジ訪問に見る、自由貿易理論の破綻。
この記事を読んで高校生のキミが得られるかもしれない利益:国際貿易が経済成長を促進させる、という法則を考える。ロシアが仕掛けた戦争が世界秩序を変え、この経済法則にクエスチョンがついている現状を多角的に捉える。トップ画はhttps://www.yomiuri.co.jp/world/20220716-OYT1T50187/
自由貿易こそイノベーションへの道
経済法則その7は、「国際貿易はいいことであるInternational trade is a good thing」である。
自由貿易は諸悪の根源なのか
自由貿易はグローバリゼーションと呼んでもいいだろう。
確かにグローバリゼーションが、世界経済を発展させてきたことは間違いないし、イノベーションも起こしてきた。
しかし、グローバリゼーションは多国籍企業がローカルな企業や産業を食い荒らし、優勝劣敗の資本主義が国境を超えて広がっただけ、なのかもしれない。
マクドナルド進出への抗議などが、世界各地でしばしば社会問題化してきた。
だがしかし、今回のロシアのウクライナ侵攻は、もっと深刻なかたちで世界に自由貿易の、グローバリゼーションの意味を問い直している。
グローバル化とは、国境を超えて世界がどんどんヒト・モノ・カネを相互依存する現象である。
しかし、グローバリゼーションで資源やエネルギーを他国に頼りすぎることのリスクがこの戦争で明白になった。
もちろん天然資源やエネルギー、食糧は天候にも左右されるし、政変等国内に不足の事態が起これば供給が滞ることは、リスクとしてもともとある。
今回は、また今までにないグローバリゼーションのリスクを世界は思い知った。
戦争による西側諸国vsロシア・中国という構図だ。
民主主義国家と専横主義国家との、抜き差しならぬ対立である。
これまでは、グローバリゼーションは、不測のリスク込みで経済的な損得だけ考えていればよかった。
しかし、この戦争を潮に、各国は自由貿易に関して、経済的な計算以外に様々な思惑を凝らさなくてはならなくなった。
具体的には、長期の視野に立った以下の見直しである。
最強経済国家アメリカが抱えるジレンマ
世界最強国家アメリカもいまや、「グローバリゼーションが経済成長を促す」という単純な経済法則に従うわけにはいかなくなっている。
それが象徴的に表れたのが、先日のバイデン大統領によるサウジアラビア訪問であった。
アメリカは、ムハンマド皇太子がジャーナリスト殺害に関与を疑い、敵対を続けてきた。
しかし、今回バイデン大統領は心ならずも、皇太子に頭を下げた。
石油増産の要求のためだ。
ロシアに経済制裁を加え、エネルギー輸入を制限しているアメリカは、ガソリン代の高騰にこれ以上耐えられなくなったのだ。
もちろんバイデン自身も再選のために、男芸者を決め込む覚悟だった。
「背に腹は代えられない」、これはアメリカだけでなく世界の現実だ。
それを含めて、世界はグローバリゼーション政策の再構築に追われている。
結論として、いまやこの「自由貿易を核とした国際貿易の重要性」という経済理論には、たくさんの「ただし書き」がついてしまった、ということだ。
世界がますます複雑化する中、経済の問題一つとっても、経済理論だけで解決できる時代は終わった、そう拡大しても大きな誤りではないだろう。この問題はそれを象徴している。
今日も最後まで読んでくれて、ありがとう。
じゃあ、また明日会おう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー