プロレス&マーケティング第7戦。プロレス体験という「消費」を拡大せよ。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:プロレスは消費財。幻の「ジャイアント馬場博物館計画」の全容。プロレス観戦以外の消費をどう創り、どう売るか。女子プロレススターダム躍進の秘密とは。
ファンにもっと消費させろ
プロレスを正面切って取り上げると、お客さんがつまりnoteの読者がそっぽを向くというのはありますが、この新連載はプロレスをあなたのお仕事の業界と考えていただくとよろしいか、と。
さて、いきなりですが、マーケティングの要諦はなんでしょうか。
それは消費を増やすこと、ですね。
マーケティングではよく「消費財」ということがよく言われます。
消費財とは冷蔵庫やテレビ、衣服や食品などのように、人々が個人や家庭で使用するために買うものすべてを意味します。サービスも消費財です。
さて、マーケティング的に言えばプロレスは「消費財」です。
プロレスを観戦する、楽しむという行為はマーケティング的に言えば、消費に他なりません。
しかし、これまでのプロレスマーケティングは、ただ単に試合観戦という消費を売ることだけしか考えてこなかった、といえるでしょう。
プロレス観戦周辺のコト・モノ価値を上げて、ファンに消費してもらいましょう。それがプロレスの発展に繋がります。
もちろん各団体すでにいろんなことをやっています。グッズ制作、販売。ファンクラブ、えーとあとは・・・。
あんがい試合以外の消費機会、ってないんだね。
まあこの連載を続けているうちに、読者の皆様との双方向のやりとりで、これからたくさん出てくるでしょう。
その1つとして、今日は「プロレス・ミュージアム(博物館)」を考えてみたいと思います。
幻のジャイアント馬場ミュージアム計画
あれからもうちょうど干支が一回りたつんですが、つまり12年前、僕は新潟の大学で教えていて、「プロレス界に革命を起こそう!」と密かに仲間たちと策をねっていたんですよ(笑)。
それを地元の新聞「新潟日報」に嗅ぎつけられ、秘密会議をしているとことをすっぱ抜かれてしまったんです。
下のがスクープされた(笑)記事ですよ。僕は真ん中。
この鳩首会議?の目的は、「新潟が生んだ世界のジャイアント馬場のミュージアム(博物館)を作ろう」という、身の程知らずの野心的なものだったのです。
結局この直後に、僕が今勤めている千葉にある大学に異動になってしまい新潟を離れたこともあり、このプロジェクトは頓挫するのです。
エモさを感じさせる、という新しい消費
この博物館計画は、日の目を見ませんでしたが、今日のテーマ「プロレス消費」から見ると一つの新しい意味があると思います。
それは「エモさの消費」ということです。
もちろんプロレスの試合観戦はそれ自体が「エモい」体験ですが、ミュージアムは、また別のエモさを経験、消費させる装置なのです。
どういうことか。
ミュージアムに展示しようとしたのは、例えばこんなものでした。
・ジャイアント馬場の保持したチャンピオンベルト(PWFヘビー級、NWAインターナショナル・シングル等)
・ジャイアント馬場愛用のガウン
・ジャイアント馬場が履いた16文リングシューズ
・ジャイアント馬場等身大フィギュア
・ジャイアント馬場愛用葉巻
・ジャイアント馬場名勝負特大パネル
・ジャイアント馬場原寸大手形
ファンならずとも、これを見て、愛でて、一部さわれるという経験(消費)は、まごうことなき体験型マーケティングにほかなりません。
試合観戦以外の周辺に価値をつけて、売れ、それがプロレス流マーケティングだ、と申し上げました。
しかし、ある意味でこのジャイアント馬場ミュージアム計画は、マーケティングという狭い枠ではなく、プロレス界全体のレガシーとして、プロレスの土台に資する、と考えるべきかもしれません。
マーケティングは、考えてみると、業界の土台みたいなものがしっかりしてないともろくも崩れますよね。
歴史というマーケティング価値
プロ野球には野球殿堂という歴史スポットがあり、ファンはそこでプロ野球の歴史に浸れます。たしか、東京ドームのちかくにありますよね。
プロレスにもプロレス殿堂会という組織がありますが、いかんせん「箱」つまりミュージアムがない。
プロレスにも立派な歴史があるのに、人々が五感でそれに触れられるような場所がないのが残念だし、プロレス界全体のマーケティング的にもマイナスですね。
きょうこの拙稿を書いていて、歴史もマーケティングの一部であることに気がつかされました。
今日のプロレス&マーケティングを他業種に応用する
バンドを例にとりましょう。
1.本業以外でお客さんに消費してもらうコト・モノを作れ
たとえばコンサート前の「10分間ギター・コーチング」。
一点に絞ってバンドの2軍がコーチングを担当。1000円でファンとの絆も強化、教えることが上手ければ評判になり、新堀ギターみたいな大ビジネスに化けることも。
2.価値観を本業以外に移植せよ
グッズもタオルやTシャツだけでなく、バンドの価値観を表現したこだわりのカレーうどんを売ったらどうか?競馬場のズラッと並んだ食べ物や目当てに、馬券を買わずに食べるだけの一般ピープルも多い。
3.展示という集客機会が、あなたの会社の製品のマーケティングを上げる
例えばバンドのコンサートの前に「楽器展示」はどうでしょう。
メインギター奏者愛用のギブソンを3台、盗難防止用チェーンを付けた透明の防弾ケースに入れてファンにお見せする。投げ銭入れも用意。
4.歴史はカネになる
バンドの歴史をしっかり記録しろ。
コンサートはもちろん、メンバーの変遷の経緯、脱退や内部分裂の歴史、必ず一冊の本になるストーリーを秘めているはず。バンドマンの芥川賞はあまりないはず。絶対に面白いはず、とれますよ。
今をときめく女子プロレス・スターダムの創設者ロッシー小川は、女子プロレス全試合の決め技と試合時間を調べ、記録したという。
理由は「楽しいから」。記録は喜びでもある。スターダムの誕生と大ブレーク、経済的成功はすべて、「歴史をとどめること」にあった。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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