「名前を覚えること」こそワン・トゥ・ワン・マーケティングの真髄。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:ワン・トゥ・ワン・マーケティングは使えるのか。機械より人間のほうが優秀かもしれない件。記憶力を軽んじるべからず。
ワン・トゥ・ワン・マーケティングの終わり
今日、大学の授業でワン・トゥ・ワン・マーケティングをやりました。
ワン・トゥ・ワン・マーケティングとは、企業が一人一人の顧客に対し顧客データベースを利用し、アプローチするマーケティング手法です。
店頭での営業に、ハガキやカタログの作成に、パソコンにストックした顧客情報をふんだんに使って、特定顧客だけに向けた売り込み、またはマーケティングメッセージを届けることができる仕組みです。
しかし、いま、ワン・トゥ・ワン・マーケティングは実質ウェブ・マーケティングがその役を担っています。
最新のウェブマーケティングは、顧客情報をアルゴリズムでマーケティングの目標別に最適化し、瞬時にウェブ上でワン・トゥ・ワン・マーケティングを実行するのです。
だから、僕は学生に「ワン・トゥ・ワン・マーケティングは終わった」といっています。
ウェブマーケティングが、もっと先進的なやり方でやっているからであり、データベースの時代ではなくなったから、です。
ワン・トゥ・ワン・マーケティングは、でも、使える
しかし、どっこい、ワン・トゥ・ワン・マーケティングは生きているのです。
なぜならば、アルゴリズムよりも処理速度が速いソフトウェアがあるからです。
それは「人間の脳」です。
例えばビックカメラの店頭で、営業マンがデータベースを使って、ワン・トゥ・ワン・マーケティングを行うとしましょう。
営業マンが、目の前のお客さんの購買データをチェックすべく、パソコンを開きますよね、その前にお客さんの名前を聞かなくてはなりません。
この作業に1分はかかるでしょう。
しかし、営業マンがパソコンのデータベースを、そらんじていたらどうでしょう。
お客さんの顔を見たら、瞬時に名前と購買履歴がでてきたらどうでしょう。
瞬時にデータが出てくるので、かかる時間はゼロ秒です。
最高の体験を提供できるのが「人間の脳」
お客さんにとって、どちらの営業マンがより心地よい体験を提供しているでしょうか。
眼の前で名前を聞かれ、パソコンを1分間ガチャガチャやる営業マンと、瞬時に名前を言われ、前回何を買ったかを記憶している営業マン。
後者に決まっています。
読者の皆様は「たしかにそれはそうだけれど、いちいちお客の名前なんて覚えてられないよ」とおっしゃるかもしれません。
そうでしょうか。
一度あっただけで、お客様の名前を必ず覚えるという豪のものがいるのです。
それは、リーガロイヤルホテル、チーフドアマン安岡貞良(やすおか・さだよし)さん氏です。
彼は正面玄関に高級車が付いた瞬間車のナンバーで誰の車か見分け、名前を読んで出迎えるというのです。彼がそらんじることのできるお客様の名前は、5000を超えます。
彼の特技がこのホテルに大きな貢献していることは、火を見るよりも明らかです。
新しいワン・トゥ・ワン・マーケティングとは、つまるところ、お客様の名前をおぼえること、です。
そして、そのワン・トゥ・ワン・マーケティングのもっともすぐれた使い手は、安岡さんなのです。
野呂が学生の名前を覚えられない理由
この動画をご覧ください。記憶力日本一の池田義博先生の、記憶術講義です。
僕はこのビデオを見て、がーんとなったのでした。
それは、「なぜお前が学生の名前を覚えられないのか」の本当の理由がわかったからです。
それは、「そもそも覚える気がないからだ」、そう池田先生はおっしゃるのです。
覚えられないのではない、覚える気がそもそもないのだ、とおっしゃるのです。
覚える気がないというのは、記憶のスイッチが入っていないことだ、というのです。
なるほどなあ、本気で覚える気がないと、覚えるスイッチが入らないのか!
思い当たることがあり、反省した次第です。
名前を覚えるコツ
顔はわかるんだけれど、名前が出てこない。
池田先生は、ビジュアルの形ではないと、人間は記憶ができにくいというのです。
顔はビジュアルだから脳に残影が残りますが、名前はビジュアルにできないので、覚えにくいというのです。
山本ならば、本が山のようにある、というビジュアルにでも変換しない限り、覚えにくいのです。
名前を覚えるには、アウトプットを行うといいらしいです。
例えば田中くんだったら、「田中くんは、どう思う」「田中くん髪切ったね」「田中くん、よくできたね」などと、「田中くん」をつけて呼ぶと、忘れないというのです。
新しいワン・トゥ・ワン・マーケティングとは、なんのことはない、お客さんの名前を覚え、名前で呼ぶことなのです。
それはビジネスのみならず、教育でも効果満点のマーケティングなのです。
野呂 一郎
清和大学教授