岸田内閣経済政策案その8はDXやAIじゃなくて「文化」
この記事を読んで高校生のキミが得られるかもしれない利益:コロナという危機の乗り越え方。精神的レガシーこそが企業を動かすという事実。企業文化を顧みない企業に成長なしという極論。DX、AI<企業文化という不等式は本当か。以上に関する考察。
企業文化とは精神の澱である
リモートワークは便利で、企業もいろいろ都合がいいかもしれない。でも反対だな。それは最近僕がうるさく言っているように、企業文化が失われるからだ。
文化などと言っても、キミ達はピンとこないかもしれないな。
文化っていうのはさ、歴史が創る人間の営みの結晶からくるものだからだ。
キミたちはまだ10数年しか生きてないからなあ。
きょうの、きのうのテーマは、大人の人に回したほうが良かったかなあ。
でもとにかく僕が今日、昨日に続けて言いたいことは、人間の精神的な働き、それは心、といってもいいし、スピリットって言ってもいい、それが組織にへばりついた時、人はその見えない澱(おり)のようなものに取り憑かれて、ある一定の方向に持ってかれる、そんなことがありうる、ということだ。
この澱を企業文化、という。
企業文化って怪奇経営学かも・・・
ちょっと今自分で言っておいて、ふと気がついたんだが、これって怪奇経営学なのかも・・・。
例のシェルドレイクがこう言っている。「人間の思念はエネルギーであり、空間に残り、人を動かす」。企業文化の正体はこれ、かな(笑)
(参考)シェルドレイク(Rupert Sheldrake)の形態形成場仮説 (下写真)
さて、話を戻そう。
結局、昨日話をしたリーバイ・ストラウスがコロナに勝った事例って、結局、企業文化のおかげなんだよね。
リーバイ・ストラウスの企業文化って、結局サスティナビリティ(持続可能性)にこだわることなんだ。それは大げさに言うと、地球を守ることなんだ。
サスティナビリティとは、物を捨てずに大事に使うこと。
それはものの作り手に愛情と丁寧さ、そして原材料の目利きであることを要求する。
もちろん原材料は人工のものでなく、ピュアな自然からのものでなくてはならず、創造物はリサイクルするか、自然に還す。
サスティナビリティを重んじることは、作り手である人間が人間でなくてはならない。
つまり働き手である人間は、人間的に扱われる必要がある。
人間的な人間が自然との共存で心を込めて創ったものは、自然に大事にされ、捨てられずに、いつまでも循環される。
企業文化が戦略を創る、いや、創らせる
リーバイ・ストラウスがコロナで打ち出したマーケティング・スローガンは「安いものを買うな。ちょっと高くても、長持ちするものを買え」ということだった。
周囲は、「そんなことを言うと売れなくなる」と反対した。
でも、このスローガンは企業文化が命じたことなんだ。
でも、結果的にどうなったか、このスローガンは若者に受けた、若者ほど、サスティナブルの意味を深く理解しているからだ。環境運動家グレタさんをみればわかる。
世界中の1995年生まれの人間の3割は環境問題に関心がある、今日の日経にもそう書いてあったな。
サスティナビリティという価値観=企業文化を持っているだけで、この層がファンになってくれるんだ。
リーバイ・ストラウスも労せずして、この層をゲットだぜ!
実は経営的には、リーバイ・ストラウスは別の考えがあった。
リーバイ・ストラウスはまず、コロナ危機を機に、どんな企業に生まれ変わるべきかを決定した。
それは、コスト構造を変革し、キャッシュを枯渇しない財務体質に生まれ変わることだった。
コロナ前の利益水準に戻っても、利益率は以前より上がる、そうならなければならない。
この理想を実現するために、同社は3つの戦略を立てた。それぞれの戦略とその結果はこうだ。
1. ブランド強化
ブランド強化って何か。それはリーバイスがリーバイスのままでいるってことなんだ。サスティナビリティという創業以来の精神は、コロナでbuy better wear longerというスローガンに変わった。今まで正式のターゲットでなかった若者たちはこれを正しくサスティナビリティと理解し、売上は伸び、新しい顧客層が増えた。リーバイスのブランドは、若者という理解者を得てますます強くなった。
2. 消費者への直接的アプローチの強化
コロナ前までは熱心じゃなかったEC(Electric Commerce電子商取引)に多額の投資をした。この投資は大成功で、コロナが落ち着いた今も同社の成長エンジンになっている。
3. 製品群の多様化
アスレチックとレジャーを合体させたathleisure (アスリージャー)というジャンルに進出、スポーツウェアと普段着を兼ねたファッションのラインアップを揃えた。ビヨンド・ヨガ(Beyond Yoga)とのコラボが当たった。
企業を救う目に見えない存在
高校生の皆さんは、なんだ、結局、経営理論の王道に従ってやっただけじゃんか、企業文化は関係ないな、と言うかもしれない。
いや、そうじゃなく、今回のリーバイ・ストラウスの全社員をこの動きに駆り立てたのは、やはり企業文化なのだ。
ある意味、企業文化こそがコロナに苦しむリーバイ・ストラウスを救ったとも言える。
企業文化とは、ピンチの時に企業の構成メンバーを初心に返らせ、何をすべきかを教えてくれる存在なのだ。
高校生のみんなはそれでも「悪い企業文化だってあるだろうに」というだろう。
そのとおり、いい企業文化、わるい企業文化、それは確かにあるし、一つの企業文化の中にその2つが共存している場合もある。
しかし、成功を続けてきた企業には、必ずと言っていいほど、よい企業文化が存在する。
僕が今日言うべきなのはこの辺までだ。企業文化の詳しい理論は、また機会を見てキミ達に教えよう。
岸田内閣の経済戦略その8はよき企業文化の推進
岸田内閣は、経済を成長させることに熱心だ。
でも、具体策は出ていないがDX(デジタル・トランスフォーメーション)とかAI(人工知能)で企業の生産性を上げられるみたいなことは言っている。
でも、本当に企業の力を発揮するには、正しい方向性が必要だ。それはサスティナビリティであり、脱炭素である。しかし、その前提として企業が従業員を大事にすることが欠かせない。
リーバイ・ストラウスの企業文化は、それらをすべて包含していたことになる。
経済成長を可能にするのは、個々の企業が成長すること、つまり生産性を上げることが必要だ。
そのためにはリーバイ・ストラウスのように、明確な改革イメージを持ち、それを実現する戦略が欠かせない。
それを作らせるのが企業文化だ。戦略が先にくるんじゃない、政策が先にくるんじゃない、企業に存在するよき伝統を大事にすることが、先にくるべきなんだ。
だから、岸田さんも、先ず隗より始めよ。
自民党のよき文化で経済を立て直せ。
でもなぁ、自民党にはよき文化があるかなぁ。ないよなぁ。
さて、いろいろ言ったけれど、すこし企業文化のチカラがすこしわかってもらえたかな。
今日も最後まで読んでくれてありがとう。
じゃあ、またあした会おう。
野呂一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?