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コロナ禍のブロードウェイ救済戦略
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:ブロードウェイのビジネス現状。文化と経済どちらを優先すべきか。ブロードウェイ救済戦略。以上に関する考察。
悩みを深めるブロードウェイ
もう40年も前になるでしょうか、シカゴでキャッツを観たことがあります。
ニューヨークのブロードウェイではないですが、ちょっと感激というか、ミーハーな気分を満たされたことを思い出しました。さて、そのブロードウェイがコロナに揺れています。
BusinessWeek2021年8月9日号はBroadway is coming back. Can it stay open?(ブロードウェイが帰ってきた。このまま公演を続けられるのか?)と題し、今年の夏から徐々にワクチン接種が進み、ブロードウェイが再開しつつも、コロナ状況が不安定なことには変わりなく、ブロードウェイはむしろ悩みを深めていることを報じています。
以下まとめてみましょう。
ブロードウェイの悩み1:コロナが長引くと、関係者の情熱が冷めてしまう
オペラ座の怪人が上映休止で1年半、もはや人々の興味も薄れてしまいました。
再開の目処が立たなければプロデュース側、役者たちのモチベーションを維持する困難、物理的コストは大きくなる一方でしょう。
ブロードウェイの悩み2:ツーリスト依存体質
ブロードウェイ演劇の観客構造は、ツーリスト65%、そのうちの外国人ツーリスト比率が15%、残り35%がニューヨークの3つの近隣州からの集客です。
この割合はショーによって違いますが、外国人が自由に入国できない現状は、ブロードウェイにとって大きなダメージです。
ブロードウェイの悩み3:満員が続かないと閉めるしかない
確かにコロナは落ち着きました。しかし、日本の外食産業もそうですが、アメリカの演劇ファンも感染者が激減しても人々はまだ警戒モードで、ぎっしり満員になるかもしれないようなショーに殺到するという状況ではありません。
でも、採算ラインは75%埋まらないショーが2週間続いたら、休止にしなければなりません。そうすると給付金も受け取れません。
ブロードウェイが取るべき戦略
BusinessWeekの記事を参考に考えてみました。
1. ショーをより簡単に見れるような仕組みを創れ
解決策は観客減でも続ける、とか、ショーの回数を減らすことではありません。ショーへのaccessibility(アクセスビリティ接近性)を高めることです。
それは観劇の仕方をもっと簡単にすることです。例えばブロードウェイの生公演をライブで全米の映画館で観られるようにしたらどうでしょう。ストリーミングでオンディマンドのブロードウェイ観劇プランも、アクセスビリティ向上の一つと言えるかも知れません。
2. ターゲットをより若い層に向けろ
ブロードウェイ観劇は150ドル位かかります。もっと安くすれば若い層にアピールできるはずです。ブロードウェイのテイストは変えずに、ラップだけのミュージカル、ビバリーヒルズ青春白書、デスパレートな妻たちみたいな現代的な内容に劇の中身を書き換えたらどうでしょう。
3. 観客層を多様にせよ
これはBusinessWeekが主張していたことです。より多様な民族、多様な文化の背景、を持った人たちにアピールする劇を創ることです。ファン層を拡大しろと言ってもいいですね。
4. ミュージカルに注力せよ
一般的に言って演劇は、一般劇よりもミュージカルのほうが興行成績がいいのです。それは、外国人の観客により効果的にアピールするからです。ミュージカルの真骨頂であるダンスと音楽は言葉の壁をやすやすと超えていきます。
5. ブロードウェイ文化継続への公的援助強化
すでにある演劇関係者への公的援助は2つあります。一つはShuttered Venue Operators Grants(閉鎖会場オペレーター給付金)。これは2020年に通った法案で総額9000億ドルの補助金です。
もう一つはEmpire state musical and theatrical production tax credit program(ニューヨーク州ミュージカル及び演劇プロダクションへの税控除プログラム)は、ショーの製作会社に対し上限25%までの所得税カットの優遇措置を与えています。
しかし、安定した客足が途絶えれば、ブロードウェイはすぐに休演に追い込まれ、こうした補助金をもらえないケースがあるのです。
ブロードウェイの文化遺産の価値に鑑み、コロナ禍で苦しむ演劇関係者へさらなる援助を要求します。
最近こうした現状が表にでませんが、日本の演劇界も、まったく同じ状況に陥っています。
岸田経済成長政策その6は文化立国、だ
日本の演劇界はブロードウェイほど大事にされていません。
僕らも意識の中で、文化は後回しというのがあると思うんですよ。
経済効果?ほら、そういう発想になってしまいます、あなたも私も。
今こそ、文化、芸術こそ人間の根本的な活動エネルギーの根源だと訴えて行くべきでは。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
明日またお会いしましょう。
野呂 一郎