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世界の平和はアメリカに任すしかないのか?
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:隠れた名著Base Nationに見る、アメリカが成功裏に世界に基地を拡張できている理由。かつての世界の警察アメリカは、中東危機をなぜ回避できないのか?
米はガザに基地をおくべきか
久しぶりにBase Nationを紐解きたいと思います。(読者の方が、Base Nation 感想文マガジンをフォローしてくださり、ずっと記事にしてないことに気がついたのでした^^;)
昨日以下の記事で、パレスチナ危機について、乏しい知識を動員して考えてみました。
今日のお話に、ちょっとつながるんです。
昨日の記事では「公平、中立な第三者が、イスラエルvsパレスチナの紛争をウォッチし、必要ならば介入することで、第5次中東戦争の未然防止になるのでは」と拙い考察を展開したのでした。
鋭い読者の皆様は、「結局、アメリカがその役をやればいいんじゃね?」と思われたことでしょう。
Base Nationという本は、アメリカがなぜ、海外45カ国に計514にのぼる基地を展開しているのかの理由を紐解き、分析し、課題をあぶり出します。
17万人の兵士が駐留し、関係者を入れるとその数は45万とも言われます。
海外基地の数ではドイツが194と最も多く、日本が121、韓国が83と続きます。
特筆すべきは下図のように(2017年時点)、中東のイラン、クウェート、アフガニスタン(2019年撤退)のようにテロが起こりうる危険地帯にも、基地をもうけていることです。
![](https://assets.st-note.com/img/1698671970177-Dqc4mrW6ks.png?width=1200)
アメリカは基地の駐留国と協力して、テロの撲滅、テロリストとの戦闘のために情報、技術、訓練を提供しています。
基地を世界に置くのは米の国益
日本の基地問題を考える時、象徴的なのはトランプ大統領が就任した直後、「日本はもっと米基地に金銭的なサポートをすべきだ」と、安倍政権を恫喝したあの一件です。
下のキャプションのように、日米安保条約破棄もチラつかせました。
![](https://assets.st-note.com/img/1698675820899-hlQC78wdJm.png)
アメリカの理屈は、「日本は戦争を放棄している分、積極的な戦闘に関与できない分、アメリカが負担を負っているのだから、もっとカネをよこせ」ということでした。
しかし、これはトランプの一流の詭弁です。
Base Nation によれば、これはアメリカ自体の安全保障政策なのです。
この本にはこうあります。
US national security policy rests on the assertion that forward presence contributes directly to global peace and security. (アメリカの安全保障政策は、世界に基地を配置することである。基地をもうけることが直接的に世界の平和と安全に寄与するのだ)
アメリカは世界の警察では、もともとない
アメリカは世界の警察を辞めてしまった、とはよく言われることですが、元々世界の警察などではなく、自国を守るために、世界中に基地を置くのは必然だったのです。
経済力が弱まってきたので、アフガンから軍を撤退するようなことになっただけなのです。
だってヨーロッパはNATOがロシアの脅威の抑止にはなっているけれど、心もとないから、ドイツを中心にここに基地を置かねばならないでしょ。
韓国は北朝鮮にいつ攻撃されるかわからないから、ここにも基地が必要です。
中国の台頭で防波堤としての韓国、日本は特に強化しなくてはなりません。
世界の覇権を握ったアメリカは、世界中に散在する危険を監視し、必要とあらば武力行使も辞さない構えです。
そして、これは必然なのです。
その理屈で言えば、今回のイスラエルvsパレスチナの事実上の本格開戦は、たいへん由々しきことです。
だから、ガザ地区に基地を置けは、暴論ではないのです。
アメリカを世界を守るカギは兵士の家族
Base Nation は大変面白いことを言っています。
それは「リトルアメリカを作れるかどうかが、国防の、世界平和のカギ」ということです。
リトルアメリカとは何かと言うと、駐留国に建設する、赴任兵士の家族が快適に暮らせるさまざまな環境、施設のことです。
![](https://assets.st-note.com/img/1698676296467-yacGbuAMuE.png?width=1200)
つまり、兵士の家族にもうひとつのアメリカを与えることです。
学校、ボーリング場、映画館、グラウンド、そしてマクドナルドなどなど、です。
赴任地が、ちいさなアメリカでなくては、兵士も家族も居住を嫌がります。
彼の地は、馴染みがない、ともすると地域および地域住民と摩擦やトラブルがおきかねなない土地です。
中東の国々など、反米、嫌米意識が充満しています。
兵士およびその家族にとって、せめて安全で快適な環境は必須なのです。
リトルアメリカを作れるかどうかは、大げさに言えば世界平和にも関係していると言えるでしょう。
いい悪いは、またこのBase Nation のシリーズで論じますが、世界がこの70年間、表面的にせよ平和が保たれてきたのは、アメリカが各地にリトルアメリカを構築してきたから、とも言えるのではないでしょうか。
野呂 一郎
清和大学教授