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マスク氏をめぐる取締役会の責任
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:カリスマ創業者あるある。取締役会はいったい何のためにあるのか。資本主義にあっては、組織の構成員は創業者の奴隷にすぎないのか。
日経記事の指摘
今日12月22日の日経17ページは、「迷走マスク氏市場の圧力」という見出しで、マスク氏の一連の行動を批判しています。
この記事で我が意を得たりと感じた記述は、これです。
「テスラの株価は今やCEO不在の価値を反映している」-マスク擁護派のアドバイザーはこうツイートし、マスク氏と同氏を適切に監督できないテスラの取締役会に苦言を呈した」。
そうなんですよ、テスラもツイッターも、いったい取締役会は何をやっているんでしょう。
マスクさんはツイッター民に自身の続投の可否について投票させ、その結果を踏まえてCEOを辞任するそうです。
ツイッターの投票の前に、取締役会に訊けよ!
東洋経済の慧眼
週刊東洋経済最新号(2022年12月24日号)も、元エコノミスト編集長のビル・エモットさんに面白いことを言わせています。
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「テック業界のスター経営者は裸の王様」(同誌P32)で、エモット氏はカリスマ企業家の作った会社の規模が大きくなると2つのことが起こる、と指摘しこう述べます。
「まず、事業が大規模で複雑になるため、プロフェッショナルな経営人材、秩序だった組織構造、権力を分散しチェックする仕組みが必要になる。
そしてもう一つは、大企業をゼロから作り上げた創業者が『何をやっても許される』という特権意識をあらわにし、企業運営を支える上述の『補強材』を邪魔者扱いすることだ」。
エモット氏の言う「プロフェッショナルな経営人材、秩序だった組織構造、権力を分散しチェックする仕組み」とは、安定した成長を可能にするための理想的というより必須の条件といえるでしょう。
そして『補強材』とは、ずばり、取締役会メンバーのことではないでしょうか。
ビル・エモット氏は、まさに誰かさんのことを言い当ててます。
シンクロニシティかな
きのう僕は、イーロン・マスク氏の一連の解雇騒動にはリーダーシップのかけらもないと、批判しました。
きょう、はからずも紹介した日経と東洋経済が、その真犯人を暴き出してくれました。
取締役会、です。
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取締役会は、企業が正しい方向に行くために忌憚のない意見や提言、ときには法に訴えてでもリーダーを糾すことが役割のはずです。
しかし、しょせん彼ら彼女らも経営者に給料をもらっている身、我が身可愛さが公共の福祉よりも重要なのです。
米最大の企業スキャンダルといわれたエンロン事件も、取締役会そして会計事務所も見て見ぬふりをしていました。
資本主義とは金が正義のシステムのことであり、金にまさる正義なんてないであって、取締役会は「お約束に過ぎない」存在なのでしょうか。
きのうの拙論から日経、東洋経済とつながった、これはシンクロニシティ(意味ある偶然)に違いないなどと、少し喜んでいましたが(笑)、単に冷徹な事実を再確認しただけだったようです。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー