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女子プロレスの経済学 第4戦 「アイスリボン事変」であらわになった女子プロレスの根本問題。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:アイスリボンが事実上の崩壊。ピンチをチャンスに変えるべく、真白選手が立ち上がった。しかし、その後が続かない。ここは「象使い」たる手練れのやり手がぜひとも必要だ。トップ画はhttps://x.gd/SyO6Q
アイスリボンに激震
先日、アイスリボン10・19後楽園ホール大会でICE×∞(アイス・インフィニティ王座=体重無制限)王者となった真白優希がリング上で「五嶋社長と連絡が取れず給料が未払いになっている」と訴えました。
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結局、社長の体調不良で給与の遅延、未払いが発生し、同代表と音信不通になっていることが、同団体から発表されました。
女子プロレス団体に限らず、プロレス団体のいつか何処かで見た光景が、またあらわれたのでした。
団体内の事情は別にして、今回のことは興行が振るわなかったことが原因だと思われます。
根本的な原因は、経営の巧拙よりも、需要が供給を上回らないからです。
プロレス団体が多すぎる
女子プロレス団体がまず多すぎます。
ざっとあげてみてもLLPW-X、センダイガールズ、OZアカデミー、スターダム、マリーゴールド、ディアナ、東京女子、シードリニング・・などゆうに10を超えます。
集客が見込める、東京近辺で試合を組むことが多く、後楽園ホール、新宿FACE、新木場1stRING等では、毎週のように大会が行われています。
これに加えて、男子は全国で100を超える団体があるとされ、これらが定期的に興行を行っていることを考えると、生存競争が熾烈なことは論を待ちません。
プロレス業界は、この供給過多にコロナ禍の客離れが回復せずに、プロレス不況に追い打ちをかけているのです。
ピンチをチャンスに変えろ
真白選手は、今週号の週プロ(週刊プロレス)で「プロレスはエンタテイメントだから、リング外のこともあえて話題にしようとした」というような趣旨のことを言っています。
業界にとって、マイナスの情報には違いありませんが、ピンチをチャンスに変えることこそ、プロレスの真骨頂です。
しかし、真白選手がせっかく作ってくれたきっかけに、第二の矢を放つような援軍が出てきませんね。
今の女子プロレス界に足りないのは、プロレスラーというゾウを使う”象使い”ではないでしょうか。
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プロレス興行がサーカスとすると、主役のゾウは今、疲弊している状態です。
過密日程で疲労がたまり、給与が下がってやる気も失せ、戦いたい相手と戦えずフラストレーションが溜まって、心身ともにぐったりとしています。
女子のカリスマたちが疲れ切っている問題
もっとはっきりいいましょう。
ジュリアは肘を脱臼、中野たむは膝をやられ、林下詩美はスランプ、岩谷麻優はアイデンティティの危機に直面しています。
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元気なのは、Sareeeただ一人。
象使いの心身両面のケア、管理がなってないからです。
特に精神面のケアがなってない、と感じるのです。
美味しいものを食べさせて、おまえならやれると激励し、夢を語らせ、共に女子プロレス復興の青写真を創る、こういうことをやってないのではないでしょうか。
新団体マリーゴールドを立ち上げた、ロッシー小川は、おそらくそれに近いことをやったのでしょう。
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でも、ロッシーがまだ足りません。
アイスがダメだったのは、僕に言わせれば、団体経営者が女子プロレス、女子プロレスラーに対しての理解が足りなかったからです。
女子のプライドを考えてない無能なフロント
いま男子団体が盛んに、女子部を作って、自分たちの傘下に入れようとしています。
IWGP女子王座とか、ノアまでがGHC女子王座とか言ってる。
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違うだろ。
「あたいたちは男子の添え物じゃない!」
だから、ロッシーがマリーゴールドを創ったんだろ?
40年間選手に寄り添ってきた、ロッシー小川が、いやそれを超えた存在が女子プロレス界には必要です。
経営の才と女子レスラーに寄り添う真のやさしさを持った、リーダーが女子プロレス界に待望されています。
先日の「10・19アイス事変」に、女子プロの根本的な問題が隠されているのではないかと愚考した次第です。
野呂 一郎
清和大学教授