コロナ収束、ビジネスランチ復活で真の実力が問われるあなた。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:正しいパワーランチの摂り方。「アメリカ人は、好きなものを頼めていいなあ、俺たちは上司より高いもの頼めないもんなあ」と嘆くアナタは、間違っている件。プロフェッショナルな会食の流儀を伝授する。
就職失敗のホントの理由
読者の皆さんは僕みたいに間抜けじゃないから、こんなことはないですよね。
昔の出来事の真相が今頃わかった、みたいなことです。
今から30数年前、僕がMBAを目指してアメリカの大学で日本語を教えながら、キャンパスを右往左往していたことのことです。
ヘッドハントの声がかかったんです。
当時世界4大コンサルティング・ファームからの打診でした。
ヘッドハンターから、ランチに誘われて行ったんです。
もちろん、就職の話で、結局その話は流れたんです。
そのときは、「まだMBAもとってないし、能力なしと見限られたんだな」、そう思ってました。
しかし、今日のThe Wall Street Journalオンライン版の記事2023年8月2日号、Business meals are back with a vengeance, and everyone feels awkward(パワーランチがあなたに復讐するために戻ってきた、みんな戦々恐々)という記事を見て、「そうか、あれは、俺の食事のお作法が悪くて落とされたのか!」と、気づいたのです。
会食は実は試験だ
そうなんですよ、なぜ、ヘッドハンターが僕をお茶じゃなく食事に誘ったのか。
それは、食事の作法でいろいろ僕を判断するため、だったのです。
その前に、今日のそのThe Wall Street Journalの記事の内容をピックアップしてみましょう。
いま、アメリカの大都会、ニューヨーク、シカゴ、ワシントンDC、フィラデルフィアといった大都会のレストランは、ランチの予約が戻ってきています。昨年度に比較して数十パーセント増です。
もちろん今の働き方の主流はハイブリッド、つまりオフィスワーク+在宅勤務ですが、やはりコロナが収束して街にビジネスパーソンたちが戻ってきているんです。
もう30年くらいたつでしょうか、”パワーランチ”という言葉が流行ったのは。
もちろん、欧米ビジネスシーンの用語ですが、ランチを通じての商談ですよね。
でもそれは「相手を値踏みする」という隠された意図があったのです。
今、そのパワーランチが復活している、というのです。
つまり、その本当の意図である、ビジネスパートナーの真の能力査定がまた始まったのです。
プロフェッショナルな会食の流儀
僕もそうだったんですが、国際派を自負する皆さんも「アメリカ人はだれと一緒でも好きなものを注文して、バクバク喰えていいな」と思いますよね。
でも、記事によるとそれは大きな間違いだと言うんです。
いくつか例を上げて、皆さんの誤解を正しましょう。
1.ランチにはサラダを頼め
相手はこちらが健康に気をつけているかを見ている。まずはサラダを頼んで、サラダから食べ、ヘルシーな食生活してるんだなとのいい印象を与えよ。
2.フォークとスプーンで食べられるものを注文しろ
サンドイッチやバーガーといった、大口を開ける食べ物は、相手にとっていい印象を与えない。パンも注文するなら、一口大に切って食べろ。
3.バターはその都度つけろ
パンをちぎるたんびに、バターを適量つけて食べろ。でっかいパンにドバッとパンを塗るのは、テーブルマナーに反する。
4.赤いソース、青いソースの料理は頼むな
例えばスープパスタのような料理だ。スプーンですくうたびに、途中でこぼしたりして、いちいち「ソーリー」と言わねばならない。
ザリガニのスパゲッティなんて、最悪だからやめろ。
5.オードブルは取るな
立食パーティなどに出てくるオードブル、塩気の多いつまめるアピタイザー、前菜のたぐいだ。あれには手を出すな。
なぜならば、ほぼガーリックが使われているのもあるし、手が汚れる。
あなたがオードブルに手を出してもぐもぐとやっているところに、初対面の人が名刺を持って挨拶に来る。そのとき、油でベチャベチャな手で握手する訳にはいかないだろう。
欧米流、会食で人物を見抜く法
当時の僕はアホでした。
こういうことが全く頭になかったんです。
ヘッドハンターは、会食で僕の履歴などを聞きたかったのではないのです。
食事という、ある意味人間が無防備になる機会を作って、そこでトータルな値踏みをしていたんです。
まあ、いずれにせよ実力が出て、それで査定されただけ、とも言えるのですが。
今回の記事で、最も身にしみた表現があります。
英語でも記したほうが、わかりやすいかもしれません。
It’s a delicate dance of when to listen intently and make eye contact, and when it’s acceptable to take a bite.
うーん、なるほど。
アメリカ人恐るべし、だと僕は心底思いましたね。
っていうか、彼らは僕ら以上に繊細で、人間っていうものをよく知っているんですよ。
皆さん、くれぐれも欧米人との会食には注意めされよ。
野呂 一郎
清和大学教授