カマラ・ハリスの”ジョイ戦略”とは何か。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:トランプvsハリスのテレビ討論会は、米マスコミの調査では30ポイント近くハリスがリード。別に彼女は強い主張を持っているわけではないが、このまま11月までトランプを押し切ることができるか。その裏には民主党のしたたかな戦略が見える。この戦略をカマラ・ハリスに演じさせているのだ。トップ画はhttps://x.gd/26Xy5
米民主党の大統領選への課題
1.接戦州で勝つこと
8年前、勝馬と見られていたヒラリー・クリントンがつまずいたのは、接戦州と言われたミシガン州でトランプに敗れたことがきっかけでした。
その差は、1万票に満たない接戦でした。
民主党がトランプに勝つには、接戦州を制する必要があります。
2.浮動票を獲得すること
ダブルヘイターズ(double haters トランプもバイデンも嫌い)という言葉が話題になりました。実質的な浮動層であり、どちらに入れないとは言うものの、この構図が崩れた今、ハリスがこの浮動票をかっさらっていけるのかに注目が集まっています。
3.ジェネレーション戦略の確立
トランプ、バイデンの対立で、結果的に無視された形になったのは、両陣営のジェネレーション対策が不在だったことです。
特に若いZ世代に訴えるキャラクター、政策がないことが指摘されています。
4.トランプの悪口対策
不法移民対策の弱さ、インフレ悪化、つきつめればトランプの民主党への罵詈雑言はこの2種類です。
本当のことなので、民主党としてはなんとか黙らせる必要があります。
”ジョイ(歓喜)”という意表をついた戦略
結果的に、バイデンを続投させるしか策がなかった民主党ですが、上記の課題をクリアするために、カマラに演技を仕込んだのです。
それがトランプに4%の差をつけた要因です。
その戦略の中心は”ジョイ”(joy歓喜)です。
カマラに常に笑顔を振りまくように指示したのです。
検事出身のカマラ・ハリスは、正義感こそあるものの、副大統領として何の仕事もしてないし、政治家として一家言あって、それを主張してきたわけでもありませんでした。
特に経済については何もわからず、不法移民に対していい加減で甘い政策をとってきた民主党に対しても、何らのリーダーシップも発揮してこなかったのです。
一昨日のトランプとのディベートでも、そこのとこの弱さがはっきりしました。
でも、それも笑顔で巧みにごまかしたのです。(でも、あなたも僕も騙されませんでしたよね)
トランプ襲撃でトランプのプチブームが沸き起こる中、バイデンをあきらめざるを得なかった民主党の切るカードは、副大統領のカマラ・ハリスしかありませんでした。
民主党のジョイ戦略というのは、政策はまるでダメ、政治も音痴のハリスの本質を覆い隠すために、いつも笑顔で民衆に手を振り、意味のないニセの喜びをふりまかせることだったのです。
でも、ハリスは生来の明るさもあり、半分以上作り笑顔ですが、その表情はなかなかに絵になっており、旧ファースト・レディのオバマ夫人は彼女のことを「歓喜の大統領候補」と持ち上げました。
喜びに満ちた米国初の女性大統領候補、整いました。
民主党の大統領選戦略は、ここに完成したのです。
おとといのトランプvsハリスのテレビ討論会では、この民主党の戦略が見事に成功したことが証明されました。
ハリスの笑顔で、トランプの悪口もかすみ、態度を決めかねている接戦州の有権者、浮動票を握る人々に大きなプラスのインパクトを与えたようです。
ジェネレーション戦争にも勝っているカマラ
カマラ・ハリスが、生来的に強いのはトランプ、バイデンに比べダントツに若いことです。
それは、とりも直さず、若いジェネレーションに強いことを示します。
8月に行われたニューヨーク・タイムズとシーナ大学の共同調査(New York Times/Siena College polls)によれば、30歳から44歳の有権者に対して、ハリス支持はトランプよりも12%も上回っています。
若者がその大半を占めるTikTok のユーザーの支持も、カマラがトランプを15ポイントも勝っています。
テレビ討論会が終わった今、若者のカマラ支持は更に広がったことでしょう。
さて、以上はあくまで野呂の個人的見解です。
ついでに言えば、あと9週間でカマラがなにか決定的なヘマをやらない限り、米国初の女性大統領が誕生するだろうことを予言しておきます。(笑)
野呂 一郎
清和大学教授