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なぜ、ニューヨークタイムズは大阪・伊丹の痴呆症の老人を記事にしたのか
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:海外のメディアがなぜ日本を取材するのか。日本の痴呆症患者が世界一という意外。痴呆症をなくすにはどうすればいいのか。
ニューヨークタイムズが日本を取材するとき
ニューヨークタイムズ・ウィークリー、1週間に一回しか来ませんがなかなか読みごたえのある記事が目につきますね。3月6日号は、日本関係の記事もありました。
僕は外国紙で日本の記事を見ると、「なぜこれを載せるのかな」と考えるんです、そしてそこから、海外の目の付け所、日本への興味のありかなどを探ろうとするのです。
案外、日本人が気づかなかった日本の、日本人の問題点、逆に我々の美点などが発見できます。
記事のタイトルは、「デジタル追跡装置が日本の痴呆症の老人を見張り続ける」(Digital tracking keeps an eye on Japanese with dementia)というもので、大阪・伊丹での痴呆症の老人がしばしば行方不明になる事件をレポートしたものでした。
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で、何がニューヨークタイムズ紙をして、この事象を取り上げたのでしょうか。僕は記事を読んでこんなことを考えました。
海外メディアがなぜ、日本をとりあげるのか
こんなことに興味があるんじゃないかしら。
1.世界が驚く日本の異常(意外)な数値
経済協力機構(OECD)のデータによれば、国民全体のなかで痴呆症を患っている人々の割合が世界で一番高いのが日本。総人口の4.3%
2.世界が驚く日本の文化
日本は認知症の老人がいても、それを極力隠す。ご近所に迷惑をかけたくないという理由で。
3.世界が驚く日本の最新テクノロジー
認知症で徘徊する老人が見つかるケースが少なくない。それは伊丹近郊にセンサー付きのカメラが1000台もあるから。徘徊老人発見用のGPSトラッカー(現在地発見アプリ)も日常的に使われている。
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4.世界が驚く日本の意外な変化
認知症の老人たちは、街頭カメラ設置を嫌がるものも多い。プライバシーを気にしているのだ。GPSトラッカーも任意だがいやがる傾向。日本人はプライバシーの意識などなかったはずが、いまやそうでもない。
なぜ、日本に痴呆症の人々が多いのか
医学的なことはさておき、僕らは考える必要があると思うんですよ。
これはれっきとした社会問題ですし、お医者さんや社会学者だけが考えればいいというわけではないと思うんです。
新潟でのある出来事
こんなことがあったんです。僕は6年間新潟の大学に勤めていたことがあって、そのとき、こんな経験をしたんです。
おんぼろアパートに住んでいたんですが、あるとき、隣に80すぎと思われる女性が引っ越してきたんです。
数ヶ月はこちらも忙しいことがあり、顔を合わせることがなかったんですが、ある時窓から顔を出したその女性に声をかけたんです。
「こちらは慣れましたか」。
そうしたら、そのおばあちゃんは、うれしそうに、こういったのです。
「声をかけてくれてありがとう」。
新潟でさえ、このありさま。
人と人とのあいだが遠くなる一方です。
どんなに過疎地域でも、東京化しているのか、
そんな思いでした。
コミニュケーションがなければ、孤独になればなるほど
人が痴呆化するリスクは大きくなるはずです。
孤独に関することを書きましたけれど、孤独から派生する
精神的、肉体的不具合のひとつが認知症だと思います。
なぜ、アメリカの老人は元気なのか
アメリカに4年半いて、様々な老人にお世話になってきましたけれど、
痴呆症の方は見ませんでした。
教会という社交場があるのは大きい、そう感じますし、車社会というのも、彼ら彼女らをアクティブにしていると思うんです。
アメリカ人のキリスト者の%は50数%カトリックが24%、プロテスタントが22%(2004年のデータ)で、国民の約半分が日曜日に礼拝に行っているんですね。
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クルマ社会というよりも、スーパーに行くにも絶対車が必要ですから、もう完全に国民の足、ですよね。
クルマはいやでも反射神経を働かせますから、知らないうちに老化防止担っているのではないかと、愚考する次第です。
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それより何より、自助独立の気風に満ちて、アウトゴーイング(out-going社交的、行動的)な国民性っていうのも、痴呆症を遠ざけているのではないでしょうか。
上下のしきたりや、定年なし、年齢差別が少ないから「年だから」なんていう意識が希薄だというのも、ボケや痴呆が日本人よりずっと少ない原因ではないでしょうか。
コロナで高齢者が苦しむのを目の当たりにし、ウクライナでも老人が逃げ惑う光景を見せられています。
認知症の高齢者に限りませんが、国家的危機のときに、我々は心身に不調を抱えた方々をどうヘルプしたらいいのでしょうか。
なんとか、システムを創らなければと思う次第です。
長くなりました、それではまた明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー