人事の明日を占う⑩今年、人事担当者は、新宿の雑踏と大学キャンパスに出向け。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:聞いたことない人手不足なのに、相変わらず企業は殿様で「苦しゅうない、近う寄れ」という態度だ。そうじゃないだろ。自分で学生に近づけよ。学生側もデジタル情報の海に溺れかかっており、人事のあなたの笑顔とやさしい一言に飢えてますって。トップ画はhttps://tyoudoii-illust.com/9792/
虎穴に入らずんば虎子を得ず
人だって、企業だってひとと同じことをやっているようじゃ、ひとと同じ果実しか得られません。
ひとこそ最大の資産なのに、企業の人事は10年一日のごとく、会社説明会をやったり、企業紹介で何百社も集まるイベントをやったり、ハローワークに学生を紹介してもらうなどのルーティン的な採用しかしません。
人事部のエースのあなたに問いたい、「他社とおんなじことしていて、いい人材が取れるんですか?」と。
「リアクティブな姿勢じゃなくて、アクティブな攻めの採用に切り替えないんですか?」、と。
例えば大学ではなく、高専や専門学校や短大に行くんです。
大学に話をつけて、大学のメインストリートに、採用のブースを出すのです。
もちろん、ガンガン声をかけるんですよ。
なぜ、LAでチェスクラブが流行っているのか
20代のミシェル・コングさん(Michelle Kong)が、チェスクラブを立ち上げたのは、2023年でした。
Z世代の若者とチェスがしたいなと考え始めたのですが、最初はごく少数の若者しか来ませんでした。
しかし、SNSで募集をかけると、どんどん若者が集まってきたのです。
コングさんは最初はLA Chess Clubと名付けたこのクラブ活動をジャズバーで開催していたのですが、昨年末には小さな倉庫に移転しました。
木曜の夜ともなれば、500人の若ものが集結するようになりました。
なぜ、時代遅れのカビの生えたようなチェスゲームに人が集まるのか。
若者は、デジタルのコミュニケーションに息が詰まってきているのです。
企業はもうデジタル募集をやめよ
日本も同じですって。
企業も学生も、もうデジタルに疲れてますよ。
ここ数年間、大学の仕事で1年に一回春から夏にかけて、キャンパス内で学生に「留学しないか?」と声をかけているんですが、思わぬ反応があるんですよ。
こちらから声をかけると、色々相談を持ちかけられたり、話しにくそうにしていた学生が、心をひらいてくれるんです。
これはデジタルではありえないことです。
情報をSNSにアップすりゃ、反応がある?
いやいや、デジタル情報は、SNSの深海に沈んじゃいますって。
それに、若者は声をかけて欲しがっているんですよ、話したがっているんです。
何でもかんでもSNSだ、Zoomで済ませようとする企業は、大きなチャンスを逃してます、って。
見よ、アナログの情報の多さを
ダメなんだよなあ、デジタル情報って。
どんなにYouTube的な映像を作ったって、インスタの見栄えのいい写真を散りばめたって、他社とどこが差別化されている企業PRなんですか?
そこへ行くと、例えば、大学の新歓サークルよろしく、ブースを出したらどうでしょう。
まず人事のあなたの顔が、とんでもない情報源になりますよ。
あなたはまさに企業の顔なんです。
そのいい笑顔、やさしそうな雰囲気、これだけで学生は「あ、この会社いいかも?」」って思いますってば。
こんな学生の知りたい企業情報は、ホームページでは出会えませんって。
そして、学生が質問してくる、それに人事のエースのあなたが答える。
こんな情報機能が、SNSやなんかにありますか?
その結果、学生が受け取る就職情報の質と量は、デジタルのそれを遥かに凌駕するのです。
学生が求める情報は「安心」
学生が企業の関して最も知りたい情報ってね、「安心」なんですよ。
この企業で安心して働けるか、ってことですよ。
そうした情報は、大学に乗り込んでブースを組んで、学生に声をかけて、双方向のコミュニケーションに持っていく以外ありえませんって。
ところが、日本は大企業も中小企業も、受け身なんだよなぁ。
どっか、「俺達のほうが偉い」っていう意識が抜けてないんじゃないかな。
「人と違うことをしろ」、っていうマーケティングの根本ができてないのかも。
別にキャンパスに出店を張らなくてもいいんですよ、新宿の雑踏で店を構えたっていい。
行政の許可さえゲットできりゃ、ゲリラライブみたいなこともできるはずでしょ。
未曾有の人材難の時代、企業はこっちから行かなきゃ。
野呂 一郎
清和大学教授