学生と一緒に成績評価をして能力開発をする
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:試験の評価は教員に委ねられているが、そのプロセスを明らかにして、共有して、議論して、互いに納得することにより、学生の今後の能力開発につながるのではないか。取り組みというほど制度化はしておらず、実験的な試みなのだが、こんなのはダメだろうか。
学生が教師の採点に文句を言えるか
大学は前期試験のシーズンです。
猛暑ですので、学生にあまり考えこませるのは健康上のリスクがあると考え、3題にしました。
学生には試験前にこんなアナウンスをしました。
普通に提出する人は、ここにおいてね。
ただ、以下の4つの条件が揃ったものは、僕に直接渡して、点数に文句を言ってもいいよ。
①授業2ほとんど全て出席し、聴いていたこと
②試験自己採点80点以上
③採点基準を知りたい人
④教師に文句を言いたい人
試験答案を共有することで相互理解が深まる
結果として約半数の学生が、「お願いしますっ!」と元気よく僕の前に答案を持ってきました。
大体どの学生が真面目に授業を聞いているかはわかっているので、最初に嫌味を言ってやります。
「教科書も買ってないのに、よく来れたな(笑)」
「ちゃんと真面目に聞いてたら、もう少し書けたろうが」
「自信がないですけど、だってぇ?自信がなきゃ、俺は見ないぜ。」
そんな意地悪を言ってやるんですが、ここでひるまない学生がいるんです。
「いつもスマホを見てるわけじゃない、ちゃんとあの話も聞いてたし、あんたのnoteも毎日見てるし!」
ほぼ聴いてない、と思っていた僕が間違ってたのかしら?!
答案を介して、お互いの理解が少し深まりつつある、とでも言うのでしょか。
評価基準を話す重要性
教師が学生の答案を評価する権利が、認められています。
それは、合理的だと考えます。
しかし、経営学の立場から言うと、答案の採点であっても「評価」のセオリーに従うべきと考えます。
まずは採点基準を言うべきで、それがなぜかも学生に説明すべきと考えます。
この件については、学生と議論する必要はないものの、教師側の考えを押し付けないのが経営学の流儀です。
僕と学生のやり取りはこんな感じで展開されました。
野呂:うーん、自分の体験に落とし込んで物語を作っている書く力はすばらしい!
学生A:だろっ?俺も我ながら自信があったんだ。100点だろ?
野呂:俺としちゃあ、理論的な理屈っぽいところがないと学問じゃないので、学んだはずのことをもう少し入れてほしかった。
ただ、経営学は自我の強さ、押し切るパワーは悪いことじゃない。
だからおまけで、この答えは満点でいいよ。
学生A:俺もそう思う。
文は人なり
書いた文章には、その人のすべてが出ます。
だから文章を介すると、指導がしやすいのです。
僕の前には答案をもった学生の行列ができ始めました。
一人1分くらいしかかけれず、僕は集中して彼ら彼女らの答案をつぶさに見て、どこかほめるポイントないか必死に探します。
ほめるポイントはさまざまです。
・「字が綺麗だなぁ」
・「字が力強くて、いい」
・「人と違う視点がある」
・「ネットのコピペをせず、自分の言葉になっている」
・「キーワードを発見したな」
・「まとめが上手い」
とにかく、ひとと違う視点、感性、考えを展開したものを、高い評価にすることを説明します。
「経営学とはつまるところ『差別化』なんだよぉ!」と一人叫んでいるとおりです。
とにかく、試験の日は学生の文章に触れて、「おっ、これは!」と直感した文章を探し、ほめます。
それが触媒となって、彼ら彼女の可能性が開けますように。
野呂 一郎
清和大学教授
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