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「似たような業界に転職」を待ち受けるワナ。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:たとえば、ソフトボールからプロ野球に転向した、元日ハム大嶋匠選手。プロ野球から総合格闘技に転向した元ベイスターズ古木克明選手。そして新聞記者から雑誌記者に転向したあなた。ではなぜ失敗するのか?今日の大学スポーツマネジメントの講義の再録だよ。トップ画はhttps://x.gd/mE8ZT
ソフトボールと野球は違う
2011年日ハムのドラフト指名にどよめきが起こった。
早稲田大学ソフトボール部の大嶋匠選手が7位で指名されたからだ。
しかし、7年間で期待された活躍ができず、引退。
なぜだろう?
その答えは、野球とソフトは全く違う競技だからだ。
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ボールの大きさはもちろんのこと、投げ方も違う。
ソフトはスナップを利かすのに対して、野球はそうではない。
バッティングもアッパースィングになりがちなソフトに対して、野球はむしろレベルスイングか、ダウンスイングだ。
大嶋が最も苦しんだのが、キャッチングだった。
キャッチャーミットを下に構えるのがソフト流、上から下に落ちてくるボールに合わせるカッコウだが、プロ野球の変化球にはその構えでは対応できない。
結局大嶋が不本意な成績しか残せなかったのは、ひとえに「ソフトで身についた身体の癖が抜けなかったからだ」。
いや、大嶋だからこそ、それでも、プロに7年間在籍し、今年こそはという熱い期待を周囲からかけられた、ともいえる。
運動神経抜群で、器用だから、ソフトから野球に転向して、野球ファンの注目を集めることができたのだ。
野球と格闘技も、やはり違う
元ベイの古木克明、総合格闘技と野球は似てないじゃないか、でも野球も格闘技、と無理やり共通点を見つけたことにしよう。
同じパターンの転職は、すでにロッテの元四番打者立川 隆史(たちかわたかし)がキックボクサーに転向し、先駆者になっている。
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彼のパンチ、キックを見てみると、野球の身体の使い方が生きていると感じるのだが。
しかし、筋肉の使い方を考えると、野球は屈筋、立ち技系格闘技は伸筋だ。
野球選手のパンチは、ストレートよりフックのほうが向いているのではないか。
コーチの役割も大きいと言えよう。
古木は格闘技挑戦を振り返って、こんな言葉を残している。
「死ぬかもしれない、その恐怖に勝てなかった」。
でも、彼の本音はこうだ。
「格闘技に挑戦して、自分が本当は野球が一番好きだとわかった」。
クセが抜けないと勝てない
僕は、大嶋を指名した日ハムスカウト、日ハム球団を憎む。
素人は、「ソフトと野球は似てるから、なんとかなるんじゃないか」とロマンを掻き立てられる。
でも実際は、大嶋がプロで体験せずとも、この2つは似て非なるものとわかっていた。
そして、なまじ大嶋がソフトで大をなしたゆえに、ソフトの身体の使い方が、抜けなかった。
適応の苦しさに耐えかねて、当時の栗山監督に「捕手をやめさせてください」と懇願したものの、「もう少し頑張ってみろ」と翻意させられる。
守備も打撃も、結局クセが抜けずに、野球で大成できなかった、というふうに僕は見ている。
このシナリオは、手練れのスカウトは読めたはず。
親会社のPR、球団の客寄せのために、やったのかなあ。
転職をするあなたに待ち受けるワナ
古木も同じだ。
やはり、野球の身体の使い方と、格闘技のそれは違う。
クセが抜けないのだ。
今の会社で評価されているあなたに、転職の魔の手が伸びているのを知っているよ。
転職エージェントは「A社のナンバーワン営業社員が、給与が上がらずに腐っている」という噂を聞きつけ、あなたにヘッドハントをかけてきてるんだね。
あなたを欲しがっているのは、同業他社の大手で、ギャラは倍を提示してきた。
でも、あなたは大嶋や古木になるかもしれないことを恐れよ。
似た業種でも、会社が違えば、ルールが変わり、からだの動かし方も変わる可能性がある。
いま働いている中小企業は、自由にやらしてくれた。
しかし、誘われている大企業の営業の流儀は、まず調べることを要求される。
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なぜ、その企業に営業をかけるのかを、営業企画書にまとめなくてはならない。
どうだろう、同じ業界で同じ仕事だと思ったら、ぜんぜん違う仕事じゃねえか、があるのだ。
あなたの営業フットワークが、大企業の官僚主義に足を取られて機能しない。
転職するならば、キャッチャーミットの構え方から直さないとならないような企業には決して移ってはならない。
転職先の流儀は、時間がかかってもしっかりリサーチすべきだろう。
野呂 一郎
清和大学教授