大日本プロレス・吉田和正選手に期待する
ある若手プロレスラーのファイトに惹かれた
今日、新潟プロレス年内最終戦が新潟市東区プラザで行われた。
5試合、いずれも熱戦だったが、僕はやけに第一試合を戦った、
大日本プロレスの吉田和正選手のファイトに、心惹かれたんだ。
そして、彼の将来性を感じた。
吉田選手は今年4月デビューしたばかり、キャリアは8か月にも満たない。
僕はまだ今日を含め彼のファイトは2回しか見たことないが、きょうの試合を見て、この選手は出世する、そう直感したんだ。
吉田和正選手がブレイクするかもしれない4つの理由
その理由は4つある。
1. 185センチ、102キロの立派な体格、がいい
でかいレスラーはリング映えする。
ジャイアント馬場が大きいレスラーを好んで採用したのは、そこだ。
レスラーは大きいだけで、見るものは「おおっ」、となる。
それこそがプロレスの魅力だと、ジャイアント馬場は説いたのだ。
吉田選手はそれに加え、ヌボーっとしているところが、いい。
そこに体格とあいまった、大物感を感じるのだ。
もっとも本人は必死だ。ぼうっとしているつもりなんかない。
「ヌボー」は緊張と闘志が空回りした肉体表現に過ぎないのだが、まじめで必死な中にも、ちょっと鈍感力が見える。それが大物のしるし、だと思う。
2. 「なすすべもない」のがいい
吉田選手の今日のファイトは、対戦相手の橋本和樹選手に足を集中的に攻められた。
大腿部へのドロップキックから始まって、ニードロップ、ギロチンドロップを落とされ、最後は膝十字に決められギブアップ負けを喫した。
もうちょっと我慢しろよとか、同じ攻撃を波状的に正直に受けるバカがいるかよ、とか感じた観客もいたかもしれない。
でも、実力の差があるんだ、しかたがない。
しかし、僕は肉体の一部に集中して攻撃をかけられ、手も足もでずギブアップしたその姿を見て、一つの主張を感じた。
反撃しようと思えばできたかもしれない、しかし、その絵はふさわしくない、そう感じたのかもしれない。
橋本も、容赦なく反撃できないような攻撃を仕掛けたのも事実だ。
ドタバタ反撃せず、なすすべもなく降伏した彼の主張とはなにか。
ただ本人は必死にやっただけだろう。しかし、奴は本能的に「見せ方」を知っているんじゃないか。俺の弱々しい反撃なんて、誰が見たいのか、そう考えたのじゃないか。
結果として、この試合はプロレスの勝負や面白さに欠かせない、
「納得感」が生まれた。
プロレス人気の陰りが言われて久しいが、その原因の一つがこの「納得感」の欠如だと思うのだ。
3. やられ方がいい
吉田選手は試合の間中、ずーっとギャー、とかグァーとか言っている。ほとんど悲鳴に近い。
相手レスラーにやられてばかりで、その都度悲痛な叫びが上がる。でも、見ているほうはこれが新鮮で、面白い。
そしてどれだけその技が効いてるのか、痛いのか、その叫び声が知らせてくれる。
その悲痛な音は、しかし、聞いていて不快ではない。プロレスにはなくてはならない効果音とも言うべき音だ。
吉田選手は、天龍源一郎の言う「痛みの伝わるプロレス」を、教わらなくてもやっているではないか。
橋本選手の執拗な足への攻撃になすすべもなく、最後は膝十字でギブアップして、やっとその悲鳴は止まった。
グァー、ギャーを10分弱でやられるさなか、ずーっと叫んでいた吉田選手。それでいいんだ。プロレスの痛みがよく伝わったよ。
思えば、昔のプロレス会場からは、チョップの炸裂音だけでなく、関節技のきしむ音、苦痛を訴えるレスラーの呼吸音が聞こえていた。
天然なんだけれど、計算してやっていたとしたら、大変なプロレス頭だな。
でもそんなのはないから、いいんだ。
4. 組織に尽くすのが、いい
試合が終わった吉田君。痛む足を引きずりながら、先輩たちの試合のセコンド業務だ。
先輩レスラーのコールが終わったらすかさず、コスチュームを預かる。
試合中に、先輩レスラーに声をかけることも忘れない。
「沼澤さぁん、そこ攻めて」。「大地さん、追い込みましょう」という具合だ。
プロレスなんかわかってないのに、それでも必死に自分の言葉で先輩を激励し、時には指示もする。
観客の安全も守ることも忘れない。
場外にレスラーが落ちると、乱闘を心配しリングサイドの僕の前に立ちはだかった吉田君。
体を張って観客の安全を守る姿勢に、おおいに打たれた。
そんなわけで、きょうの新潟プロレス第一試合に登場した吉田選手の奮闘ぶりを紹介したのだが、その必死で、まっすぐで、バカ正直さのなかに、駆け引きができない素直さのなかに、僕は彼の大物ぶりを見た思いがするのだ。
彼のファイトにプロレスの、忘れ去られていた原点的な面白さも感じた。
吉田和正、必ずいいレスラーになる。
さて、新潟プロレスファンの皆様、1年間、新潟プロレスを応援くださり誠にありがとうございました。
新潟プロレス次回大会は、来年1月23日新潟県黒埼市民会館で開催されます。
メインはシマ重野の保持する新潟無差別級ベルトに緑の魔人・GAINAが挑戦!
また菊水杯初代王者・大日本プロレス・加藤拓歩に、われらが新潟プロレスのホープ、鈴木敬喜が挑戦します。
皆さん、ぜひご来場、応援よろしくお願いします。
野呂一郎
新潟プロレスアドバイザー/清和大学教授