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なぜ、パワーポイントを使う授業はダメなのか

高校生の皆さん、こんにちは。
さて、僕が愛読している本があるんだ。

それは、Real leaders don’t do PowerPoint(本当のリーダーはパワーポイントをやらない)というタイトルの本だ。別に宣伝するつもりも、アフィリエイトとやらをやるつもりもないからリンクとか貼らないけれど、もう10年くらい前に買った本だ。邦訳版が出ているかどうかはわからないが、わかりやすい英語で書いてあるから、買ってもいいかもしれん。

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さて、次回以降この本を参照して一緒に、世界のリーダーになる心得を考えてみたいと思っているんだが、その前に今日は、一つこの件に関係する話をしてみたい。

いま僕は清和大学という千葉にある大学で経営学を教えているんだけれど、その前は新潟経営大学という大学で教えていた。赴任したばかりだったから、もう17年くらい前の話になる。

それは大学の仕事で、京都にある大学で催された、全国の大学から学部長クラスの担当者が集まる会議だった。

そこで、ある人物が話をしたんだ。世界中から生徒が集まることで知られる国際的な大学院で、人材マネジメントも担当していた当時の学部長さんの話だった。

こういう内容だったんだよ。

学生にとって良い講義とは何か、というテーマだった。

その答えは、おそらく多くの大学教員が、「パワーポイントを作り込むこと」と答えるだろう。当時も、おそらく今も。

今のパワーポイントは、というか、パソコン自体がいろいろなプレゼン機能を整えている。動画は当たり前だし、3Dだって映し出せる。色やらグラフやら、ストーリーやらも盛り込める。そんなビジュアル豊かな見せ方が、現代的だし、なにせエンタテイメント的にやらないと、今の学生は聞いてくれない。

そのとおりだと思う。

答えはパワーポイントに決まっている。

しかし、その学部長さんの答えは、違った。

その学部長さんは、こう言った。

日本人の教員の評判は今ひとつ、だ。
それは、パワーポイントでしか講義できないから。

日本人の教員もそうだが、僕ももちろんそうなんだが、パワーポイントって、要するにスライドに絵や写真とそのキャプションを載せて、それを見せて、読むだけなんだよね。

当時の日本人教員は判で押したように、このパワーポイント方式を採用していた。

海外の学生には、このやり方は評判がよくないっていうんだ。

じゃあ、どういうやり方がいいのか。

それは、講義中自由に質問させて、いちいちそれに答えるやり方だと言う。

海外の大学の授業を見たことがある人は、このやり方何となくイメージできるかも知れない。NHKでやっていた、熱血教室だっけ、ハーバード大学の哲学教授のサンデルさんだっけ、あの人がやっているようなやり方だよ。

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なぜパワーポイントがダメか、というと、色んな理由があるし、それはまた次回以降話すけれど、一言で言えば本当にやる気のある学生にとって、ズレてるからなんだ。

本当に聞きたい授業って、ナマのライブ感がないとダメなんだよ。

先生が目の前にいる。なんか今日のオーラは熱い感じがする、ちょっと刺激してやろう。質問だ。教師も教師で、いきなり勢い込んでタリバンの話なんかする。

政治学の先生じゃない、経済学の講義なんだけれど、宗教が経済に与える影響などを話しはじめて、止まらない。学生も引き込まれて、議論が始まる。
こうして、講義は全てタリバンと宗教と経済の話になる。

シラバス(授業計画表)なんか無視だ。でも、これこそがいい授業なんだ。なぜならば、そこには熱があるから。そこには教師と学生の議論があるから。途中で学生同士の議論も入れば、なおいい。

これがパワーポイントでスライド見せる講義になるとどうなるか。

動きがない。リアルタイムがまるでないから、ライブ感もへったくれもない。淡々と単調な絵の説明が続く。

そのパワーポイントは最新作でさえ、前日に作ったものだ。リアルタイムじゃない。下手すると6年前に作ったものを、使い回しにしている。

それをダラダラ見せて、読んでいるだけ。

それなら、そのパワーポイント資料をコピーして配るか、ダウンロードさせてオンラインででも勉強させればいいじゃないか、ってなる。

パワーポイントでは、アドリブができない、つまり、今変化している現状をテーマに反映できないんだよ。

学問、特に経営学は変化の学問なので、パワーポイントではリアルタイムができず、変化の本質を教えられない。

結局、英語力なんだ

また、日本人教員は、まあ僕も含めてだが、英語力が足りないんだ。

雑談でも、学問でも、台本なしに自由に丁々発止と英語で彼らとコミュニケーションができる、そこまでの英語力がないんだ。だから、パワーポイントに逃げるんだよ。

もちろん日本人教員の名誉にかけて言うけれども、彼らは日本人としては一流の英語のスピーカーだよ。だけれども、本当の意味で英語ネイティブの目的意識の高い学生を満足させるには、はるか一段上の英語力が欠かせないんだよ。

手ぶらでやってきて、ニヤリと笑って学生のあらゆる質問にウィットでこたえ、それをまた題材にして逆に質問を投げかけ、教室中をわかせる、それにはとんでもないレベルの英語力が必要なんだ。

どんなレベルか?

はっきり言えば、ネイティブの大学院卒のアメリカ人と同じ、英語力だ。それを読む、書く、聞く、、話すの4技能で持っていることだ。ほぼ日本人にはいないと言っていいレベルだ。

だから僕は、キミたちに、いまから英語力を磨けってやかましく言うんだよ。

もしこのレベルの人が、政治家で一人でもいれば、日本は変わる、そう言い切っていいよ。どんな分野でも、ね。

僕もねえ、情けないことに、英語に関しては本当に不自由をかこっているよ。でも、困難だからこそ、チャレンジは面白いということは言えるけどね。

積極性が全然足りない日本人の大学生

しかし、日本じゃこのやり方はやりたくてもやれないけれどね。どの大学も、学生が質問しないもの。要するにやる気なんかないんだ、普通の大学の普通の授業は、ね。

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それこそが一番の問題なのかも知れない。

それは、僕もアメリカでいろいろな大学の講義を経験して、ほんとに思うことだね。熱度が、やる気がぜんぜん違う。

この連載のテーマは「高校生よ、もっと積極性を持て」ということなんだけど、積極性がないんだよ。日本の高校生は。

少なくとも僕が高校生の時から、日本の高校生は変わってない。

だから、この連載では、キミたち高校生をもっと燃えさせたいと思っている。挑発するよ、また次回から。


昨日一回休んだね、この連載は2日に一回ペースになると思う。明日は大人の連載かな。

今日も最後まで読んでくれてありがとう。

                            野呂 一郎

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