プロレス&マーケティング第76戦 オハイオ・バレーレスリングに学ぶインディ魂。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:オハイオ・バレー・レスリングはWWEの下部団体だったが、今は独立インディ団体として異彩を放っている。この団体に学ぶべきは、WWEと真逆の方向性だ。日本の団体も学ぶことがあるのではないだろうか。トップ画はhttps://x.gd/2k2oD
豚に化粧はいらない
WWEは洗練されすぎていますよね。
あの隅から隅までスキのない演出、洗練されたストーリーライン、ビルドアップされたレスラーのガタイ、テレビ、ストリーミング用の絵の切りとりかたなどなど。
WWEがハリウッドの超大作とするならば、オハイオ・バレーレスリング(OVW。Ohio Valley Wrestling )は場末の見世物小屋です。
しかし、いまその見世物小屋のプロレスが、アメリカで大ブレイクしているのです。
OVWで長年リングアナウンサーを勤める、ブライアン・ケニソンさん(Bryan Kennison)は、自虐もまたWWEへの当てつけもこめて、こんなふうに自分の団体を表現します。
プロレスにやらせはない
今のプロレス界でよく聞かれるのは、「コロナ前になかなか戻らない」という愚痴なんですよね。
いや、WWEもそうだけれど、日本のメジャー団体はプロレスの原点を忘れてるんじゃないでしょうか。
みんなテレビ用のきれいな絵ばかりのプロレスをやっているんじゃないかなあ。
OVWのレスリングは、カッコつけないんですよ、さっきのアナウンサーの言葉を借りれば、「ブタはブタのまま見せる」ってことで、よけいな演出や脚色を加えないんです。
確かにストーリーはありますが、OVWのボスであり、ブレーンであるアル・スノー(Al Snow)さんはこう言ってはばかりません。
「俺達のプロレスにやらせなどない」。
鍛え上げた身体と限界まで自分を追い込む練習で、自分らしさをレスリングを通じて表現する、というOVWのレスリング哲学がこの言葉に表れています。
一部のプロレスファンはご存知ですが、いまネットフィリックスで、このOVWをフィーチャーした番組「レスラーという生き方Wrestlers」が絶賛放映中です。
いかにプロレスというジャンルの可能性を高めていけるか、OVWに関わるすべての関係者の必死の努力を描いた作品です。
僕はおカネがないので見れないのですが、想像するにOVWって、「伝説の最狂最悪団体」と呼ばれたあのW★INGみたいなプロレス団体だと思っています。
ライブだけで稼ぐという方向性
伝説のバンド、ローリング・ストーンズなどはいまもそうだと思うんですけれど、ツアーだけで稼いでいます。
OVWもそうなんですよ、ライブだけでほとんどの収益を上げているそうなんです。
WWEのストリーミング購入者は、僕の調べでは3年前で130万で、この数字はWWEとしても不満だと言います。
いまプロレス団体は日米を問わず、ストリーミング配信に力を入れているようですが、この方向はどうなのかなあ、って思うんですよねえ。
だって、テレビじゃなくてもストリーミングでもパブリック放送には違いないから、自主的なものも含めて放送コードっていうのがあるわけでしょ。
放送メディアの事情もあるし、プロレス団体の見せ方もあるし、要するにどうしても生の会場で見る観客が置き去りにされてしまうわけですよ。
そこいくと、OVWなんかはそんな決まり事なんか無視して、会場の観客を喜ばせることだけに必死ですからね。
会場は盛り上がり、口コミでツアーは毎回大盛況ってわけですよ。
今のプロレスがコロナ前のにぎわいを取り戻せてないとしたら、ライブの客を満足させることよりも、小賢しいマーケティングばかり考えているからじゃないのかな。
野呂 一郎
清和大学教授
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