学生にサンドイッチを食べさせたら、いいことあった件。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:お昼のサンドイッチを取られたが、生き方やビジネスのヒントをもらってかえって得した件。サンドイッチに隠されていた、マスクト・ニーズ(市場が気づいてない隠された消費者の欲求)とは何だ。
サンドイッチに目覚める
朝は7時開店の、東京駅の居酒屋の定食、たとえば納豆定食とか、鮭定食を食べることが多いのですが、5時起きの日は間に合わないので、自分でサンドイッチを作って(自分に)持たせます。
ある日、学校の食堂で朝食べた残りのサンドイッチを食べようとしたら、目ざとく僕を見つけた学生の一団がダッシュでやってきました。
「おい、のろちゃん、そのサンドイッチ美味しそうだな?」
僕としてはそう言われたら、「食うか?」というしかありませんね。
でも、彼らの反応がちょっと意外だったのです。
サンドイッチを取られることは、何回かあったのですが、この子達のリアクションには驚かされたのです!
「あー、これやばくね!うまい、うますぎる!のろちゃん、今度もっと作って持ってきてよ!」
などというのです。
シンプルでおいしいサンドイッチを
小麦胚芽入りのパンを使って、無添加のハム、スライスチーズ、水分をていねいに飛ばしたシャキシャキの少し硬めのレタスを、マヨネーズとあらびきマスタードで味付けした、何の変哲もないサンドイッチです。
あんまり「おいしい、おいしい!」いうので、ちょっといい気になって、うんちくを語ってやったんです。
「ハムは無添加、亜硝酸ナトリウムやアミノ酸とか入ってない、チーズも低殺菌牛乳のみから作ってるし、レタスも有機栽培だから、安心安全の味がするはずだぜ」。
ハム以外はちょっと「盛って」いるのですが、人工的な添加物にむとんちゃくな学生たちへの食育のつもりで、安心安全な材料を強調してやりました。
添加物論争、味の素論争をするつもりはないのですが、より安全な材料を用いることで、食べ物本来の美味しさが出てくる、そう信じているのです。
でも、これだけ飽食の時代なのに、有機栽培の野菜を使ったり、無添加のハムが挟んであるサンドイッチは、見たことがありません。
コンビニのサンドイッチの成分表を見ると、これでもかと添加物のオンパレードです。
「厚生省が許可した安全な添加物だから、身体に悪くないよ、安心してお食べよ」、そう子どもに言ってコンビニのサンドイッチを買って与える親はいるでしょうか。
なんだ、添加物論争しないとか言って、してるじゃねえか(笑)
でも、できるだけピュアな原材料で作った食べ物のほうが、おいしいですよ。
崎陽軒のシウマイ弁当があれほど売れているのは、シウマイに余計なものを入れてないからだと思います。
マーケティングの空白地帯
サンドイッチに話を戻すと、ズバリ、無添加のハム、ソーセージを使ったサンドイッチって、マスクト・ニーズ(隠れたニーズ)だと思うんですよ。
メーカーは、ハムを無添加にしようがしまいが、消費者の大半は気にしないからという理由で、これほど加工食品の添加物問題が取り上げられているのに、きょうもパンに普通のハムを挟んで平気です。
無添加ハム、有機レタス、漂白してない全粒粉を使ったパンを使ったサンドイッチを売ってごらんなさい。
従来品1.5倍位の価格なら、絶対にヒットしますよ。
マーケティングには空白地帯というのがあり、消費者は本当は「ここを変えてほしい」と思っているんだけれど、マーケティングリサーチに引っかからないので、企業は「そんなの関係ねぇ」と一顧だにしない、ということがあるのです。
やる気は変なことから生まれる
今回のことで、気がついたのは、人間ってひょんなことからやる気が出るんだな、ということです。
「のろちゃん、サンドイッチ名人!」などとおだてられて、すっかり、「今度は、もっとうまいサンドイッチをあの子達に持ってってやろう!」などとすっかりその気になってしまっている僕がいます。
パンはトーストしたほうがいいのか、耳は切ったほうがおいしいか、ハムは切るのか、丸いまま乗せるのか、レタスの量は、きゅうりを挟んだらどうか、など研究課題をたくさん抱えることになりました。
ルーティンを見直すことが宝の山
おにぎりだって、コメや塩にこだわるところはあるけれど、コメを炊く水にこだわるところはないし、美味しいシャケにこだわる店は知らないです。
オムライスチェーンでも、主役の卵を有精卵にしているところは見たことないです。
ブームのナポリタンも、作り方が雑すぎます。
ケチャップ味で、ピーマンとハムと玉ねぎを適当に切って炒めれば、そこそこ美味しいことにあぐらをかいているのです。
食べ物だけに限りません、決まり切った材料の選び方、作り方、売り方に、疑問を投げかけることから、製品開発、市場開発は始まるのです。
生成AIであたらしいビジネスを、などと考える前に、あなたの会社のフラッグシップな製品のルーティンを見直すことで、大儲けできるかもしれませんよ。
野呂 一郎
清和大学教授