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日本の観光政策にマーケティングはいらない。

この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:人をだますにはストーリーはもう面倒だ、これからは「ムード」が流行る。ムードを観光業に応用する。快適さが足りない日本のインバウンド産業。

スイスというムード

昨日は、「闇の勢力がでっちあげるストーリー(ナラティブ)にみんなやられている、そう警鐘を鳴らしました。

やれ気候変動だとか、地政学うんぬんだとかのアドバルーンにだまされて、無能な政治家に支配されていることを忘れさせられている、そう主張しました。

しかし、考えてみれば、ストーリーなんてめんどくさいですよね。

ストーリーは、そのお話を聞かせて納得しないと、皆動いてくれませんよね。

もしくは、繰り返して叫んだり、耳元で囁かないと効果がありません。

ストーリーよりも、効果的なのは「ムード」だと思うんですよ。

ムードっていうのは、そこに行けばある一定の気分に強制的にさせられる仕組み、装置のことです。

これは僕が勝手に定義しているもので、経営学や経済学の教科書にはありませんが。

観光の話をしてみましょうか。

例えばスイス。

スイスに行けば、どこに行っても「スイスだなぁ」と思わされます。

広大で美しい湖、美しくそびえ立つ山々、山あいを行き交う路面電車、どこに行っても、誰もが想像するようなおとぎの国がそこにあります。

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観光案内なんて必要ないんです。

情報がなくても、ガイドがいなくても、スイスに行けば人々は、スイスの虜になって、また行きたい、と思うんです。

スイスにはストーリーはいりません。

スイスは説明無用です、そこに行けば、一瞬であなたも中毒になってしまうのです。

物言わぬスイスが、あなたに雄弁に話しかけてくるからです。

これが僕の言う「ムード」なのです。

「快適さ」が足りない日本観光

日本の観光業はムードという発想はありません。

ムードとはマーケティングにない概念、というか、マーケティングとはある種正反対の考えです。

マーケティングとはプッシュです。

言葉で映像で、その対象を押し付けるわけです。

ムードは、そのものの魅力をそのまま出してあげるだけです。

対象をして、語らせるわけです。

京都なら「はい、京都です」と見せればいいし、東京も同じく「はい、東京です」とやればいいのです。

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ムードを最高潮にもっていくためには、しかし、ある不可欠の条件があります。

それは「快適さ」です。

また来たいと外国人に思わせるためには、外国人が各地を旅する際の、快適な移動が必要なんです。

スイスは空港、そして駅には必ず大きなエスカレーターが、時にコンベヤ式の歩道があり、観光客は大きなキャリーケースを持っていても、快適に移動ができます。

しかし、日本はどうでしょう?

新宿駅なんか、どこにエレベーターやエスカレーターがあるんでしょう。

東京駅もひどいものです。

何度外国人の年配の方の荷物を、階段で上げ下げしたことか。

ムードの第一条件は快適さにほかなりません。

「見せ方」で勝負せよ

スイスのようにどこにいても、その国のすばらしさを感じて、理屈抜きに「もう一度来たい」と思わせる仕掛けが、「ムード」です。

スイスがスイスのままでいいように、日本も日本のままを見せればいいんです。

しかし、何かを見て、感じるには、日本の場合足りないものがあります。

それは、エレベーター、エスカレーターだけではなくて、英語の案内と英語でヘルプしてくれる人材です。もちろん、各種外国語に対応できれば、なおいいことは言うまでもありません。

これは各種調査でもダントツの明らかなデータですが、改善される様子はまったくありませんね。

今や日本全土が観光地化されているので、ロボットでも人でも、専従の英語案内役を十分に配置すべきです。

言葉を変えれば、見せるものは十分にあるのだから、見せ方を考えろ、ということです。

モノからコトへ、観光も体験型が全盛です。

武道ツアーから、座禅ツアー、外国人向けにハンコを作るビジネスというのも出てきました。

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ポイントは言うまでもなく「どう見せるか」、その中心はいかに外国語で魅力的な表現ができるか、です。

僕も外国に仕事で行くと必ず武道のデモンストレーションをやらされますが、上手ではないのを補うためには、どう見せるか、が勝負です。

機会があれば、是非見てください。(肖像権の関係で今はアップできないのです)

ムードは日本に向いている発想

日本人はおしゃべりが、宣伝が苦手なんですよ。

マーケティングの本質がプッシュだとすると、元々それができない。

ストーリーを創ることだって、苦手だし、そもそも良しとしないんですよ。

だから、商品を語るのではなく、商品に語らせればいい。

その仕掛けを作るんです、それが僕の言う「ムード」なんです。

例えば、アントニオ猪木。

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猪木の姿を見れば、わかる人が見ればわかる、と思うんですよね。

彼の動きを、ファイトを見るまでもなく、一葉の写真を見れば、非常に多くのことを語りかけている。

それは、外面というのは内面の表出、反映にほかならないからです。

でも、見る人の心が安定してないと、その良さは見えない。

そのためには、まず、快適さが必要、観光で言えば、エスカレーターもなく荷物の上げ下げでへとへとになっている外国人が、日本を愛でることはできない、ということなのです。

野呂 一郎
清和大学教授

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