「大食いスポーツ化」の是非を問う。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:ギャル曽根はすごいねぇ、また屈強なラガーマンたちを相手に余裕の大食いでバカ勝ち・・って「テレビの大食い番組なんて、見てる場合じゃないだろ! 世界中の飢えている人達が、コメがなくて困っている日本人がいるんだぞ!」と読者の皆様に怒られますよね。でもこれを「必要悪」と考えてもいい、かな?
大食いイベントは是か非か
死亡事故が出たのは論外としても、大食いを競うテレビ番組は明らかに食べ物を粗末にしているし、世界中の飢餓問題に真剣に取り組んでいる人たちに対しての冒涜だし、健康によくない食習慣を奨励し、病気の人を増やすだけなのに、まだゴールデンタイムでやってるんですね。
でも、考えようによっては、大食い番組もアリなのかも、と思ったのです。
というのは、偶然目に入ったニューヨーク・タイムズが、こんな意味ありげな見出しで問いかけてきたからなんです。
皆様は、アメリカで毎年行われているホットドッグの大食い選手権はご存知ですよね。
あれは、毎年7月4日の独立記念日に、ニューヨーク・ブルックリンの観光地コニーアイランドで開かれているネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権(Nathan's Famous International Hot Dog Eating Contest)です。
10分間にどれだけ多くのホットドッグを食べられるかを競う大会で、大会記録は76本で、日本人のチャンピオンも出ています。
このイベントを「単なるイベントではなくて、アメリカの伝統」ととらえる向きもあり、ニューヨーク・タイムズも地域おこし、観光の目玉、集客の手段、企業の宣伝にプラスというポジティブなトーンで書いています。
それを読んでいて僕は、日本の「わんこそば」を思い出しました。
あれは別に大食いイベントではありませんが、たくさん食べることを煽ってはいますよね。そして、伝統でもあります。
日本のそばと同様、ホットドッグもアメリカの伝統食であり、両者はちょっと似ているかなと思った次第です。
イベントの経済効果を考えると、全米テレビ中継、ニューヨーク観光収入、食品企業の宣伝、そしてアメリカ全体の広告キャンペーンということも考えると、確かに大きなメリットがありますよね。
大食いのスポーツ化現象
アメリカでは、大食いの科学的な検証が行われています。
先ほど、ホットドッグ選手権のレコードが10分で76本と申し上げましたが、科学者によると「理論的にはあと6本いける」そうです。
大食いイベントをスポーツと考える人達もいて、ニューヨーク・タイムズによれば「スポーツであるならば、訓練で記録は伸ばせる」と信じているとのことです。
大食い選手権の出場者は、それぞれ「胃の容量を拡大し、技術を改善」することに余念がありません。
彼ら彼女らの試みていることは、こんなことです。
・スパーリング・パトナー(大食い練習の相棒)を見つける
・スイカと野菜と水を大量に摂取し、胃を拡大する
スポーツならば、メンタルも鍛えられるはず、ということで、「噛まない練習」をトレーニングプログラムにいれる人もいます。
どこが心の修練かというと、噛むことは人間の本能なので、その本能と戦うことで心が鍛えられるというわけです。(笑)
また、ホットドッグ訓練では、6本、20本、そして72本(笑)という肉体が消費を拒否する限界値があるそうです。
その限界をぶち破るには、精神力が必要、というわけなのです。(笑)
大食いイベント改革案
ニューヨーク・タイムズの記事を読んで考えたのですが、食を粗末にせず、扱いを慎重にしさえすれば、大食いイベント的な催しは、やってもいいのではないでしょうか。
フードロスと、出場者の健康に留意するようなイベントですね。
考えてみれば、大食いである必要もなく、食をテーマにした運動会みたいな感じでもいいですね。
老若男女が参加できる、オリエンテーリング(死語かな)みたいなものはどうでしょう。
3人のチームで探検に出かけ、A地点でクロワッサンを、B地点でアンパンを、C地点でフランスパンを完食し、起点に早く帰ったほうが勝ち、みたいなイベントです。
今日、ついギャル曽根主演の大食い番組を見てしまったのですが、彼女はほんとに美味しくて食べている感がいいですね。
美味しそうに食べている人を見ると、こちらも幸せになります。
食の人を幸せにするパワーは、改めてすごいなと感じた次第です。
野呂 一郎
清和大学教授