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評価面接は制度疲労を起こしている件。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:最新米企業の労務管理のキモである”評価面接”を巡るもろもろ。コロナが、そして未曾有のインフレが従業員の意識を変えているという現実。評価面接は制度疲労しているという指摘。トップ画はhttps://www.elearningmarketplace.co.uk/product/appraisal-interviews/
バック・トゥ・ベーシックス
昨日の続きで、アメリカ企業の評価面接の実態をレポートします。
・マッキンゼーアンドカンパニー のHR(人的資源)担当のニール・ガンディさん(Neel Ghanchi )は、人材育成の専門家です。
彼の言い分を聞いてみましょう。
「企業がいま評価面接に”バック・トゥ・ベーシックス”するのは、成長と発展というあるべき姿に気がついたからです。毎日正しいことに向かって従業員一人ひとりが進んでいく。そして自分たちのために自分たちで立てたゴールを達成するという当たり前にことを認識したということなのです」。
彼は「コロナで大変な従業員に、また意地悪をするのか」という批判にはこう答えます。
「わかっています。従業員たちがコロナ禍でさんざん苦労し、子育てだ、燃え尽き症候群だと大変な思いをしているのは。我々はそうした従業員たちに同情心が足りないというわけではないんです。
「業績評価は、”もうそこにある大変な時代”に対応するツールなのです。
リーダーも、社員ももっと心配な時代が来てます。我々を再生させる、目に見える最初のステップが評価面接なのです」。
カーパーツ・ドットコム(CarParts . Com inc )の新しいCEOデイヴィッド・ミニアンさん(David Miniane) は4月にその職に就いたばかりですが、ここのところずっと従業員におんなじことを繰り返しています。
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「バーを上げろ。パフォーマンスのスタンダードあげろ!」。
彼も評価面接に手をつけました。
年に一回の評価面接(pefromace review)を2回にしたのです。
ミニアンさんによれば
「現下の経済状況では予算を大幅に振り替えなくてはならない。(選択と集中の意味)。だからレビューを二回に増やす。マネジャーはこの変革により、より従業員が何をどうやっているか、彼ら彼女らがしっかり企業のゴールを理解しているかにより思いが至るようになる」
ということです。
「それでこそ従業員が企業にとって、もっとも重要な仕事に常に優先順位をおいて働く」ことが実現できる、という考えです。
変化に気づけ
ミニアンさんは、今そこにある変化に気づけと言うのです。
「リセッション(景気後退期)もしくは、トランジション(移行期)にいるのかはわからん。しかし、環境変化は新しい予算の付け方を要求しているし、新しいメトリック(従業員の業績測定基準)が必要だし、社員全員が同じ方向を向いているかをチェックしているのだ。」
まあ、皆さんいちいちごもっとも。
従業員側の言い分
ミルウォーキー在住の、組織開発部門で10年間働いている女性の言い分。
「レビュー(評価面接)のストラクチャー(構造、やり方)にはもう辟易しているのよ。評価者が恣意的っていうか、勝手にやってるでしょ。それにアンフェアよ」。
ワシントンのサイエンス関係の非営利組織で働く女性は、評価面接にもいいところがあるといいます。
「上司との振り返りの中で、洞察をもらったりするの。私は今どの位置にいるのかを確認できるし、どうしたら私に対しての期待に応えられるかの答えもくれるわ」。
しかし、内心複雑で、ミックスト・フィーリング、いい感情と悪い感情が彼女の中で交錯します。
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「でもつい、評価面接ではパンデミックの前と現在の私を比較しちゃうの。こうあるはずの自分がいまいない、っていうか。コロナがなかったらどうなっていたかしらって考えちゃうの」
現実に打ちひしがれる労働者
労働者はいま、ひどいインフレとリセッションに悩まされています。だからこそそんなときに評価面接はイライラするんです。
先の彼女はこう言います。
「物価は上がりっぱなしだけれど、給料はあがらない。会社は生活費補填なんかしてくれないわ。昇給を勝ち取れるのは、この評価面接だけだから、これを成功裏に終わらせて、せめて能力ベースのいい評価を勝ち取って、家賃を値上げされても家をでなくてもいいように頑張るわ。」
評価面接のリスク
多くの専門家がこう警告しています。
「評価面接は、たしかに経済が下降傾向のときは経営側に有利なツールかもしれないが、企業がこれに傾倒するのは危険だ」。
元グーグルのエクゼクティブで、現在アップル・ユニバーシティで教えている、キム・スコットさん(Kim Scott)さんはこう言います。
「個人のパフォーマンスを、レイオフ(一時帰休)に結びつけようとするのはミステイクよ」。
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しかし、これは”評価面接あるある”の代表的なひとつなんですよねぇ。
キムさんは続けます。
「口先で従業員を追い詰めるのは、逆効果よ。社内全体のモラル(やる気)を引き下げ、トップパフォーマー(やり手社員)たちを離職させる原因になるわ。企業に取って残って欲しい人がいなくなるわよ」。
”あるある”のもう一つの例は、インフォーマルな面接はあるけれども、フォーマルな面接がないことです。
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自閉症をケアする医療機関のチーフ・オペレーティング・オフィサーとして入った女性は、この会社にきてすぐ、フォーマルなパフォーマンスマネジメントシステムが欠如していることに気がつきました。
彼女はこう言います。
「マネジャーは部下に対し、インフォーマルにアドバイスは上げるんです。でも、それは正式な指導でもないし、評価でもないから、社員は昇給の時期になると不安に駆られるんです。リーダーたちにとっても、曖昧な評価基準では評価をどうしていいかわからないし、企業の価値を共有させることなどできないんです」。
さて、皆さんいかがだったでしょうか。
一つ言えることは、評価面接という人事の教科書に書かれている基本が、意外とぶれていたり、重視されてなかったりしている事実です。
それと、この評価面接が概ね従業員から忌み嫌われており、システムとして機能しているのか、甚だ疑問だということです。
企業側、経営側のリクツはそのとおりですが、特にコロナ、そして未曾有のハイパーインフレ、そしてますます不確実性を深める現代において、評価面接は制度疲労をおこしている、こう結論して拙論を終わりたいと思います。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー