プロレス&マーケティング第30戦 ウナギ・サヤカの時代を迎えたプロレス界。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:小資本でも大資本に勝つことができる。ノーフリルズ(一切の飾りなし)というマーケティング戦略。長州力WJが潰れた本当の理由。トップ画はhttps://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwwr-stardom.com%2Fnews%2F220801_unagi_media_info%2F&psig=AOvVaw3fE5Mzu_s2qvS7_vFcMjYq&ust=1683902284146000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwi8_5D9vu3-AhU3hlYBHZDHCDoQr4kDegUIARCXAg
ワンマッチでドーム興行に勝てる
先日、ウナギ・サヤカの言葉を引用し、「資本がない企業でも、ファンの意識を一点に集中させれば勝てる」という話をしました。
ファンの意識を注目を、一人のレスラーに、ワンマッチに集中させるような興行をすれば、小さな資金で大きな成功を収めることができるのです。
例えばエースが一人しかいない団体でも、一試合だけの興行でも客が集まるかもしれない。
じっくりそのレスラーの試合に集中できる、その楽しみはドームで、顔見世だけの10試合も見せられるより、ずっといい。
タイパ(時間と費用の効率)もいいし、Z世代にもアピールするでしょう。
資金のない団体でも、個性のある専属レスラーひとりいれば、メジャー団体と戦えます。
エースと手が合い、いい試合ができる選手の存在とワンマッチというコンテンツを確立すれば、それを手に全国津々浦々回るのです。
実はこれは実際に、新日本プロレスやFMWが辿ってきた道でもあります。
新日本プロレスは、スターは猪木だけ、FMWも大仁田だけでした。
最初からブレイクはしませんでしたが、やがて軌道に乗り、大爆発したのは、エースが一人しかいなかったからです。
一点でいいんです。ワンマッチ、一人のエース、場合によっちゃあ、レスラー一人だけ、相手は箒(ほうき)とか。(笑)
藤波vs木村というノーフリルズ
かつてマーケティングでノー・フリルズ(no-frills)という言葉がはやりました。よけいな飾り(frills)を取っ払うという意味です。
藤波vs木村は、勝負だけ、勝負以外に観客の注意をそらす飾りつけを一切拒否しました。
他の試合は一切なし、入場テーマなんてなし、宣伝もなし、派手なコスチュームも一切なし。
ふたりが黒のタイツを身に着けたことも、戦いだけに観客の注意をひきつけた重要な点です。
よくコテコテの派手なタイツやパンタロンを履いているレスラーが、います。
客の注意は、どうしてもサイケな模様のコスチュームに行ってしまう。ここに、黒のショートタイツの合理性は、客の意識や注意を試合内容だけに集中させるところにあります。
ウナギ・サヤカの逆説
じゃあ、あの極彩色のウナギ・サヤカはどうなんだ、って声が上がると思うんです。
でも、彼女は、お客さんを集中させるんです。
なぜならば、彼女の個性自体が極彩色であるからです。
ウナギ・サヤカという存在自体が、超カラフルという統一感があり、それをファンは受け入れているからこそ、常にウナギ・サヤカに集中しています。
会場ではウナギグッズを握りしめ、おそろいのウナギTに身を包む、ひつま武士(ウナギ・サヤカの信者)がひしめいているのは、ウナギを食べたいくらい、ウナギと一体になりたい願望なのです。
ウナギ・サヤカは自分だけにファンの注意をすべて向けさせるすべを、知っています。
その大事さを本能的に理解しているんです。
だから、時代という空間に焼き付けられた藤波vs木村のメモリーを探し出し、その意味を誰よりも深く理解することができたのです。
WJがつぶれた理由
WJ(だぶる・じぇい)。長州力をエースに掲げ、鳴り物入りで船出したものの、やることなすこと裏目に出て、「呪われた団体」、「長州力の黒歴史」などと、いまだ巨大掲示板で揶揄されている、消えたプロレス団体のことです。
そのWJが旗揚げ当初、「長州力vs天龍源一郎」のシングル7連戦を企画したことがありました。
ファンは待ちに待った黄金カードの実現に沸き立ちました。
しかし、長州力の怪我でこの対決は流れたのです。
WJがなぜ、悲劇の団体と言われるほどの失敗まみれだったのか、それはこのワンマッチが実現せず、ファンの怒りを買ったからです。
ケガであれ何であれ、ファンは、はしごを外されたような気持になったのです。
ファンはそれを期に、「可愛さあまって憎さ100倍」をたぎらせ、ネットなどでアンチ活動を繰り広げるようになったのです。
このネットでのあることないことの暴露こそが、WJ崩壊につながるのです。
ワンマッチのリスキーな側面が、でてしまったのです。
ファンは長州vs天龍に集中してたから、それがダメになったときの失望、怒りは凄まじいものになったのです。
だからワンマッチ興行は賭け、でもあると言えるでしょう。
中止になる、試合がしょっぱかった等、どんな理由でも外したら、目も当てられないからです。
しかし、こうした失敗もプロレスのだいご味なのです。
いい試合、悪い試合なんて実は存在せず、中止になったらなったで、一つの事件として、それも一つの「プロレス」として意味があるのです。
それをやらないことの罪深さに比べれば、どうってことはありません。
しかし、プロレスもネット特有の暗黒に巻き込まれてしまいました。
スターは単数形、一人だから輝く
プロレスファンが一番しびれる言葉は、「旗揚げ戦」です。
ひとり団体を去り、理想に燃えて新しい団体を創った、お披露目の第一戦。
もうこのシチュエーションで、団体を旗揚げしたあの選手は、一皮もふた皮も剥けています。
それはすべてを一人で背負うと覚悟した瞬間から、人間はオーラが出るからです。
責任感が、覚悟が、男を(女を)魅力的にするのです。
例えばかつて、23歳で東京プロレスを旗揚げした猪木は、ジョニーバレンタインとプロレス史に残る激闘をやってのけました。
それまでの輝きとは全く違った輝きが、そこにはありました。
大仁田厚もそうです。
FMWを旗揚げしたとき、全日本プロレスのNWAジュニア王者時代の、パッとしなかった大仁田はそこにいませんでした。
旗揚げは、レスラーを魅力的にする装置なのです。
ウナギ・サヤカもそうです。
男子のデスマッチファイターを相手に、「デスマッチ10番勝負」を終えた、若きデスマッチ・クイーン、鈴季 すず(すずき すず)。
彼女もプロミネンスをやめて、フリーになりました。今、彼女からオーラが匂い立っています。
旗揚げしたレスラーは出世する
しかし、フリーよりも、新団体旗揚げを見てみたいのです。
それは、「団体を生き残らせる、俺に、私についてきた奴らを食わせる」、という背水の陣が、人間の極限を引き出すからです。
一歩踏み出すその勇気こそ、実はプロレスラーの魅力の根源なのです。
皆さんも思いませんか、あの中堅レスラーが、思い切って旗揚げしたら、一皮もふた皮も剥けてスターになったのに、と。
プロレスにおけるスターとは、単に強い、うまいだけではないのです。
やむにやまれぬ思い、理想に駆られ、覚悟を持って一歩を踏み出す、そんな勇気こそ、プロレスラーの魅力なのです。
団体の命令を心ならずも聞いて、どっかのサラリーマンみたいに、会社のルールだからこれできない、あれできない、そんなことをいうプロレスラーが大衆をひきつけるわけがありません。
これこそが俺のプロレスだ、その理想をもって、それをどんなことがあっても実現する、そのスピリットこそがプロレスラーです。
その意味で、ウナギ・サヤカは、男子女子を超えた本当のプロレスラーではないでしょうか。
東京女子を去り、スターダムに入って人気レスラーの座をやっとつかんだ、ウナギ・サヤカ。
中野たむ等と組んでとコズエン(コズミック・エンジェル)でちやほやされていればいいのに、ギャン期(うなぎの反抗期)とか、わけのわからないことを言って、フリーになったウナギ・サヤカ。
でもグッズも、好きに作って好きに売れるし、ウナギカフェだってやっちゃうし、男子の団体だってかまわず乱入するウナギ。
一歩踏み出す勇気、「やってやるよ!」の意気込み、男女を超えて今本当にプロレスしているのは、ウナギ・サヤカだけ。
ウナギはいま、諏訪魔とすっごくいい絡みをしていますよね。
昔のプロレスを思い出したファンも多いんじゃないかな。
諏訪魔を切れのいい悪口雑言で本気にさせ、決めゼリフ「査定してやるよ!」も放ったウナギ・サヤカ。
いま、プロレスファンがしびれるこんな絵をを創れるレスラーは、男女ともにウナギ・サヤカしか見当たりません。
諏訪魔ともっと絡んで、ウナギ×すあま劇場をもっとにぎやかにしてほしいな。
今日のプロレス&マーケティングを他業種に応用する
1. 起業したあなたは、確実に異性にモテるようになる
覚悟を決め、勇気ある一歩を踏み出し、背水の陣をひいたことで、魂が燃え全身からフェロモンという香りが出るからだ。
2. 旗揚げ戦はあなたが生まれ変わるセレモニー。多くの人に見てもらえ
プロレスの旗揚げ戦みたいなセレモニーをやるべき。後楽園ホールを借りて、リングから代表のあなたが決意表明しろ。
自分が変わったことを自覚し、他人の目という証明もつくことで、確実に生まれ変わった確信を得ることができるはずだ。それを自覚することで、成功が確実になる。
3. 藤波vs木村戦で行け
イベントは賑やかである必要はない、目移りするのがよい演出じゃあない。集中させるのがいい演出なんだ。イベントはテーマは一つのほうがドラマチックになる。
4.スターはひとりでいい
スターつまり主力商品だ。プロレス団体ならエース一人で十分だ。つまり醤油ラーメン一本で勝負しろ。塩むすび専門店でいいじゃないか。全国初の素うどんだけ食わせるチェーンはどうだ。
5.ノーフリルズで行け
実力があるなら飾り立てるな。それはあなたの、あなたの商品の実力をかえって見えにくくするだけだ。
今日パンダの刻印がされたカステラを見た。カステラのせっかくの美味しさが、パンダで消されるだけだろう。
6.ねこっぱちのワンマン・ベース奏イベント(仮)
無双のベース弾きねこっぱちが、今回限りのワンマン・ベースショーを行う。今まで見られなかった指さばき、個性的な音、そして聞いたことなかった絶妙トークがファンに衝撃を与えることだろう。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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