新潟プロレス10周年を支えた、もうひとりの男。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:プロレスのレフリーのもう一つの重要な役割。安心、安全こそあらゆる人と組織の活動の前提であるという真理。新潟プロレス10周年を支えた裏方のチカラ。
今年度最終戦で観た、あるリングの光景
先日12月18日に行われた新潟プロレスの今年度最終戦、リング上に展開されたある光景に、僕の目は釘付けになった。
新潟プロレスでメインレフリーを務める、アオ-レ長井が、リングを走っている。
次の瞬間、アオーレがロープに飛んだ。自分の身体全体をロープに委ねて、その反動を使ってまた逆方向に走り出した。今度は向こう側のロープに身体を預けた。
手には何か持っている。スパナだ。そう、ナットやボルトなどの取り付けや付け外しに使われる工具だ。
プロレスファンなら、アオーレが何をしようとしているかがわかったと思う。
凶器攻撃じゃないよ😁
そうだ、アオーレはロープの弾力を自らの身体で確かめていたのだ。
それと同時に、ロープが緩んでないかをチェックしようとしたのだ。
緩んでいたら、持っていたスパナで、鉄柱とコーナーマットをくくりつけている金具についているナットを閉めるつもりなのだ。
レフリーはレスラーと観客の安全も守る
なぜそんなことをするのか。
それは、レスラーの安全を守るためだ。
ロープが緩んでいたら、下手をするとレスラーがロープに飛んだ次の瞬間、リング外に放り出されることだってある。
ロープに飛び乗った途端、ロープが緩んだら頭から場外に落ちるかもしれない。
実はこのレフリーの行動は今回だけでは、ない。
あれは確か、東区プラザホール会場を初めて使ったときだったと記憶している。
第一試合を終えた時、今回のようにアオーレがリングに上って、リングのあちこちを点検し始めたのだ。
どうやらマットの下に敷いていた木材が、ずれたらしい。
リング設営のプロたちも駆けつけ、30分ほどかかったが、リングは原状復帰を果たした。
「早くしろよ」、露骨にそんな気振りを見せる客もいた。
しかし、そんな視線に抗うように、アオーレの表情には「リングをなんとしても元通りにするんだ」の気概が見えた。
それはスパナを持ってリングを走った今回のたたずまいと、まったく同じだった。
安心、安全こそあらゆる活動の基本
今回のアオーレ劇場(笑)は、第一試合が終わったあとだっただろうか。
僕にとってはあのシーンは、一つの見どころのあるプロレスマッチだった。
全5試合じゃなくて、6試合。スペシャルマッチを見せてもらった気がした。
アオーレ長井は、リングの番人として、根本的な部分でレスラーを守っていたのだ。
新潟プロレスが10年続いたのも、こうした裏方の地道だが、厳格な安全管理の努力があってこそなのだ、そう感じた次第だ。
スポーツに限らないが、安心、安全こそすべての原点であり、前提だ。
スパナを持ってロープをチェックする、アオーレ長井。
その態度だけで、名レフリーと言えないか。
今日も最後まで読んでくれてありがとう。
じゃあ、またあすも新潟プロレス最終戦で感じたことを書くよ。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー