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ウルトラマンが予言していたハリウッド・AIストライキの顛末。

この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:昨年、ハリウッドの脚本家、アクターたちがAI使用に反対して立ち上がった、あの件はどうなった?ハリウッドの映画論が突きつけた?AIはクリエイティブにいらない論。ウルトラマンの「AI無用の演劇論」。

クリエイティブは大丈夫

昨年勃発した、AI使用をめぐる、ハリウッドのストライキはどうなったのでしょう。

結論を言うと、ハリウッドの経営者はクリエイティブ、つまり脚本家や役者たちの代わりにAIを使うことはしない、ということです。

しかし、経営者にアドバイスしたコンサルタントたちは、「AIを別のところに使って20%~30%コスト削減できる」と言っているんです。

それはポスト・プロダクションと呼ばれる、映画製作の後で発生するビジネスです。

主に映像編集とマーケティングですね。

映像のダビング作業、撮り直し、映画宣伝広告、宣伝コピー作成といった作業にAIを使うんです。

BusinessWeek2024年1月15日号は、AI affect filmmaking, but it won't replace the creatives (映画作成にAIはネガティブな影響、でも直接クリエイティブな部門には手を出さない) と題して、ハリウッドの経営側がクリエイティブの本丸とも言うべき俳優と脚本にはAIを導入しない意向であると報じています。

記事のニュアンスだと、経営側の本音は最もコストのかかるシナリオ、キャスティングに手をつけたかったのだが、諸事情であきらめたとも読めます。

AIは合気道ができない

今回、ハリウッドが俳優の仕事にAIを介入させないとした背景にあるのは、これはあくまで僕の邪推ですが、ハリウッドなりの演技論だと思うんですよ。

例えばトム・クルーズのAIコピーは技術的には可能で、トップガン・マーベリックの続編のシナリオさえ与えれば、ロボットが脚本通りに演技してくれ、あとはAIで映像を編集すれば安上がりに「トップガン3」が完成するでしょう。

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しかし、ハリウッド制作側はそれをよしとしなかったのです。

結局、エンタテイメント業界というのは、人を感動させてなんぼ、の世界です。

AIではトム・クルーズの代わりはできないと判断したのです。

最近テレビ東京で、昔のB級映画をやっている(笑)午後のロードショーを見てたんですけれど、スティーヴン・セガールが主演の映画で、悪党どもをちぎっては投げしているシーンにけっこうきちゃったんです。

セガールのアクションは合気道ですが、その投げ技がエグいんです。

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合気道は上手に相手の力を利用する武道で、10のスピードやパワーで襲ってきたら、下手をすると100くらいの力で叩きつけられます。

やられ役の俳優は、ものすごい勢いでガラスのドアに衝突していました。

セガールも、相手の捨て身の突進をかわして、ご丁寧に敵のおしりを思いっきり押しているから、凄まじい激突が撮れてるんです。

この迫力は絶対にAIでは表現できないでしょう。

ウルトラマンの演技論

最近まで日本経済新聞の夕刊に、ウルトラマン俳優として知られる古谷敏(ふるや・びん)さんの演技論がシリーズで掲載されていました。

彼の演技のカテゴリーは、「スーツアクター」と呼ばれているのですが、ウルトラマンの着ぐるみの中では、つねに通常の俳優にも劣らない表情の豊かさがあり、役と一体化せんとする真剣さがみなぎっていました。

スーツで表情が隠れる分、ウルトラマンにその表情を移入するのは、通常の演技を突き抜けた、独自の試行錯誤が必要でした。

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スーツの中は40度を超え、逃げられない、まるでセルフ熱中症状態です。

暑さと窒息状態に耐えかね、ワンシーンを撮るたびに何度も吐き、しまいには吐くものもなくなり、それでも気力を奮い立たせて、怪獣と対峙したというのです。

古谷さんは、ウルトラマンの代名詞スペシウム光線の十字のポーズを真剣に300回こなすことをルーティンとしており、どんなに帰宅が遅くなってもそのノルマをこなさない限り、ベッドに入らなかったそうです。

こうした涙ぐましい苦難を乗り越えて、ウルトラマンしかできないパフォーマンスが完成し、世界中に熱狂的なファンが生まれたのです。

スティーヴン・セガール同様、このウルトラマン俳優も、どう考えてもAIに置き換えることはできないでしょう。

AIが教えてくれた「人を感動させるのは人」

ハリウッドのストライキは、演技側が勝って大団円、というわけでありません。

ビジネスとは結局コストのことです。

だから、俳優陣へ払う高いペイを節約しようとする、経営側の圧力は続き、来年あたりまたストライキがおこるでしょう。

今後の映画産業はどうなる?

ディズニーのアニメ的な展開は、今後AIで低コストで映像を創る方向に行くでしょう。

二次使用で稼ぐために、版権の価格はバク上がりします。

日本が誇るスタジオジブリ的な、アナログという手作業に多くを負う芸術は、デジタルとAIに走らない限り、独自のマーケットを守るでしょう。

アニメ以外の通常作品は、冒頭にも述べたように、本映像制作以外のところでAIによる、コストカットの競争が本格化します。

通常映画は、興行収入よりも、映像以外のコストカット競争が勃発しますよ。AIでね。

そして、「いい映画はやっぱりいい俳優」という流れが来るのではないでしょうか。

https://qr1.jp/UmO42z

今回のハリウッドの対AIストライキは、アクターたちの演技がAIなどに代替できない価値あるもの、をはからずも証明しました。

やはり人を感動させるものは、あくまで人なのです。

野呂 一郎
清和大学教授





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