マスク氏のハードコア経営は正しいのか
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:HRMとは何か。イーロンマスクの時代に逆行するマネジメントスタイルは、正しいのか。
経営者としてのマスク氏を評価する
かつてアップルのスティーブ・ジョブズ氏が、カリスマ経営者ともてはやされたことがありました。
自分の理想を押し付け、それに共鳴しない部下を怒鳴り散らし、気に入らなければ無能呼ばわりするのは、イーロン・マスク氏との共通点です。
経営学的にマスク氏の経営の誤りを一言で言うと、”非人間性”です。
かつて私は「HRMとは何か」という本を書きました。
HRMとはHuman Resource Management (人的資源管理)の略で、現代の人事管理の要諦を論じ、その本質は「人間性、公平性、戦略性」と書きました。
3つの中で最も大事なのは、「人間性」なのです。
人間性、すなわち、人としての尊厳を尊重する経営が、経営の正しい方向性なのです。
しかし、マスク氏の経営はこれに完全に逆行しています。
それは、今回の大量解雇にあたって、数々の非人間的な命令、指示,発言から明らかです。以下The Wall Street Journal2022年11月16日号の記事「イーロン・マスクがツイッター社の社員に二択。猛烈に働くかやめるかを最後通告。Elon Musk Tells Twitter Staff to Work ‘Long Hours at High Intensity’ or Leave」からみてみましょう。
1.ハードコア経営宣言
きのう論じた彼の経営スタイルです。ひたすらにモーレツに長時間働けというものです。
2.ギリギリの命令
明日までに退職希望を出せ、というもの。真夜中にメールがきて、早朝までに意思決定しろ、という。そんな無茶振りについていけないというものが多数いる。
3.法の軽視
大量解雇する場合は60日の猶予を与えなくてはならないとの、連邦法を無視。三か月の失業手当は、法の追及を逃れるトリックだと言われる。
4.大量の訴訟を抱えている
すでに解雇された従業員から、何件も不当解雇の訴訟を起こされている
5.専門スタッフの解雇で、ツイッターはヘイト、差別投稿のたまり場になりつつある。
これは予想されたことで、現実になっている。
6.リモートワークの願いを無視。
「リモートワーク?どっかでさぼっているに違いない」と決めつけ発言も。最近は直属の上司の判断に任せると翻意したようだが、働き方はあくまでハードコア。
イーロン・マスク氏のこのような経営のやり方は、経営学の現在の定説である「人間性中心の経営」に逆行しています。
あなたは、マスク流の経営を受け入れますか。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー