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バイデン政権の戦略的言行不一致

ドイツとロシアの間にアメリカが介入

The Wall Street Journal7月22日号は、バイデン政権の外交政策を「口だけで何の実行も伴っていない」と辛辣に批判しています。

批判の対象になったのは一つは、ノルドストリーム(Node Stream)パイプラインの件、もう一つは中国が国家ぐるみでハッキングをしている件です。

ノルドストリームとは、バルト海底を経由してロシア・ドイツ間をつないだ天然ガスのパイプラインで、ロシアが総工費約134億ユーロ(約1兆4500億円)で2011年に操業しました。

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ドイツからロシアに天然ガスを輸送するこのシステムに対し、ドイツは大金を払っているのですが、これをアメリカは「ロシアの覇権を強めるだけ」だと批判してきました。

トランプ政権は特にこの続編というべき、天然ガス輸送量を2倍にするノルドストリーム2にドイツが110億ドルを支払うことに猛反対したという経緯があります。このノルドストリーム2が完成したのをアメリカは黙ってみていた、というのがThe Wall Street Journalの批判なのです。

ただ、バイデン側にも言い分があるのです。

トランプ政権と違い、バイデンさんはドイツとの融和政策を全面に出しています。

トランプさんは「ドイツに米軍基地をおいて守ってやっているのはアメリカだ。それを11億ドルも出してロシアを利しているドイツはけしからん」と言っていました。しかし今回バイデンさんはこう言っているのです。「まずはドイツとの友好関係が第一だ」。

トランプさんは日本にも同じことを言っていましたよね。日本を守ってやってるのは米軍、ありがたく思え。もっと米軍駐留にカネを出せ、と安倍政権を脅したのは記憶に新しいですね。

安倍政権にはみなさんと同じく僕も批判的ですが(笑)、ひたすらトランプのご機嫌をうかがった安倍氏のやり方は、正しかったと思いますよ。やはりトランプでさえ、人間よいしょには弱いから。

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アメリカが世界を支配している理由はこれ

アメリカがなぜいまでも世界の警察と言われるのか、その理由は世界中にベース(基地)を持っているからです。詳しく勉強しようとこの本(Base Nation)を買ったんですがまだ読んでないので、読んで勉強してこの連載に書きますね。


さて、しかし、ドイツ側も言い訳はあるのです。

「確かにこのパイプラインについてはロシアに協力している。しかし、条件をつけたよ。それはロシアがこの天然資源をウクライナを攻撃する兵器として使うならば、制裁を課すよ、と言っている」。

The Wall Street Journalは、「ロシアが笑ってるよ」とこのドイツとアメリカの弱腰を笑うのです。

同紙はこう嘆くのです。「バイデン政権は、ウクライナとヨーロッパのエネルギーの自立を犠牲にして、プーチンに大きな戦略的勝利を与えてしまった」。

アメリカの戦略的二枚舌

もう一つ、中国のハッキングの件ですが、The Wall Street Journalはこうバイデン政権をあざ笑うのです。

アントニーブリンケン国務長官は、先日記者会見でこう述べました。「アメリカ政府はEU と NATO 、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド日本と共同声明を出した。中国語は無責任で破壊的で不安定なサイバースペースにおけるハッキングを繰り返しており、それは大きな我々の経済とセキュリティにおける脅威になっている。責任を取らせる」。

The Wall Street Journalは短くこう揶揄しました。
「責任取らせる?どうやって」。

同紙は何の制裁もアナウンスしていないし、アナウンスするだけで何もしようとしてない、と強く非難します。トドメはこのセリフ。「徒党を組んで声明を出すのは結構だが、どうせ最低の最大公約数的なことしかしないんだろう。それは何もしない、ということだ」。

さて、この記事からどんなことが読み取れるでしょうか。以下野呂の感想を述べてみます。

1. トランプ待望論
2. 脅しか友好か
3. 口だけでも素晴らしい
4. 妥協というアート
5. サイバーセキュリティの重要さ
6. 中国をどうするのか

トランプ待望論

The Wall Street Journalはどっちかというと、共和党よりつまりトランプ支持ですから、トランプが大反対したノルドストリーム2に対してのドイツよりの政策に、反対するんですね。メルケルと大喧嘩をしてまで、アメリカの国益を優先したトランプのリーダーシップを暗に賛美している感じはします。

脅しか友好か

これこそ、トランプとバイデンの本質的な違いでしょうね。

トランプはメルケルを脅したんです。

米軍駐留のおかげでお前らの安全が守られているのだから、もっとカネを出せ。ロシアの利益になる天然ガス配給をやめろ。

メルケルとトランプの対立は結構日本でも報道されましたよね。

トランプは、メルケルが近く首相をやめることも計算してたんでしょうか。

The Wall Street Journalはバイデンを「もうすぐ辞めるメルケルにかまうなんて」と苦言を呈しています。しかし、そのバイデンさんのスタンスっていうのは、友好なんですよね。ロシアの覇権を許してドイツとの友好をとったバイデン。僕は個人的には、こちらのほうが長期的という意味でずっと戦略的だと思うんですがね。ちょっと弱すぎかな。

口だけでも素晴らしい

The Wall Street Journalは「口だけだ」と批判しますが、日本はこんな気の利いたこと、誰も言えないですよ。中国に対するこの非難の言葉、いいじゃないですか。Accountable(説明責任がある)という言葉は巧みな選択だと思います。表現能力は日本の政治家は勉強すべきです。

妥協というアート

僕ら日本人は、そして国際感覚の高い人々もそうなんですが、欧米人て「白か黒か」の人種だと思いやすいですよね。はっきりさせる民族であって、灰色はないんだと。

しかし、そうじゃなくて、灰色つまり妥協の技術は表現と実践両方持っているんです。

今回の2つの件、は実は「妥協のアート」なんです。

口では立派なことを言っているが、実際に何のアクションもしない。そもそも、中国問題なんて、みんな利害があるんです。中国は世界中ほぼすべての国と貿易パートナーという大きな利害を持っているわけですから。

だけど、日本もそうだけれど、アメリカと一緒に中国非難の共同声明くらいはギリやっていいという立場です。それ以上は無理なのです。最初から、喧嘩するつもりはないが、ギリギリの言葉遣いくらいはやりますよ、ということですね。

サイバーセキュリティの重要さ


これはどうしっぽを捕まえるか、です。

証拠がないから、はっきり中国に制裁を課せないということもあるし、また国際的な法律の適用も難しいこともあるでしょう。

サイバー犯罪が中国国家が関与したという証拠をどうだすのか。尻尾を掴まれるようなヘマを中国がするはずもないですよね。

2016年のトランプ勝利に、ロシアがハッキングしてトランプを勝たせたなどという風聞があったけれど、証明が要するに難しいのでしょう。

いや、やっぱりそうじゃないのか、これも妥協のアートで、中国が犯人とわかりつつも、わからないようなふりをして中国にとどめを刺さないのかも知れません。

中国と喧嘩することはアメリカの国益にかなわないからです

さて、今日はこれまで、最後まで読んで頂きありがとうございました。

また明日お目にかかりましょう。

                          野呂 一郎

追伸:最近、フォローしてくださる方が増えました。心から感謝し、毎日いい記事を書くようにがんばります。

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