ryuchellさんが教えてくれた、核兵器よりも恐ろしいのがSNS。
この記事を読んで高校生のキミが得られるかもしれない利益:モラル・パニックとは何か。なぜ、スレッズがツイッターに勝つというのか。デジタルネイティブ世代のみなさんが忘れがちな、SNSがなかった時代はまだマシだったという事実。トップ画はhttps://qr1.jp/xm2YJY
スレッズが勝つかも
メタがツイッターに似た短文投稿アプリ「スレッズ」を市場に出し、5日間で1億ユーザーを獲得したというニュースが流れてますね。
ツイッターはすでに偽物としてメタを訴えているそうですが、スレッズは匿名性を少なくする、つまり実名でやり取りすることで、SNS最大の問題点である匿名での誹謗・中傷を出来なくする狙いと報じられています。
ザッカーバーグさんの勝ちじゃないんですかね。
ツイッターのモデレーション(投稿の適否を判断する機能》は、実にいい加減ですし、ボスのイーロン・マスクさんときたら共和党大統領候補のイベントをツイッターでやっちゃうくらいですから。
マスクさんには、ツイッターが現代で最も重要な公器であるという認識も、それに対する責任感も見られませんね。
ryuchellさんの事件に思う
人気タレントのryuchell(りゅうちぇる)さんが亡くなった件で、彼に対するSNSでの心ない誹謗中傷が今更のように取り沙汰されていますが、関係がないわけがないでしょう。
あらためて、現代におけるSNSのネガティブな影響力がクローズアップされています。
僕はSNSって、使い方によっては人類にとって核兵器と同じくらい脅威というか、たちの悪い発明だと思うんですよ。
モラル・パニックとは何か
ニューヨーク・タイムズWeekly 2023年7月9日号は、Do not panic. It is just moral panic(パニクるな、ただの精神的パニックにすぎない)と題し、現代のSNSのことを、人々にこれまでになかった精神的パニックを与える存在と指摘しています。
その前に、モラルということばを説明しておきましょう。
モラルとは道徳、道徳的、という意味ですが、現代の文脈では主に「精神的な」を意味する接頭辞です。
日本の芸能ワイドショーでは最近よく「モラハラ」という言葉が使われますが、あれはちゃんとした英語なんですね。
モラル・ハラスメントの日本的な短縮形で、精神的な嫌がらせ、という意味です。
英語では、ニューヨーク・タイムズのようにモラル・パニック(moral panic)という言葉が使われます。
モラル・パニックとは、さまざまな不安や心配などに駆られることを指します。
ニューヨーク・タイムズは、以下のようにモラル・パニックの例を上げています。
モラル・パニックは精神的な不安や恐怖を意味しますから、現代は現代ならではのモラル・パニックがあるし、皆さんのご両親の時代は時代でモラル・パニックがあったわけです。
罪深いSNS
しかし、SNSは、モラル・パニックの症例の量と質を劇的に変えてしまいました。
もちろん悪い意味で、です。
SNSを通じての特定個人や組織に対しての誹謗中傷や、虚偽の情報の流布は、人類にこれまでに経験してこなかった苦痛を与えています。
僕も、経験があります。
直接自分のアカウントに来なくても、誰かがその人に関するネガティブなことを書き込めば、見てしまうんですね。
ryuchellさんも生前、「気にしないようにしている」といいつつ「やっぱり傷つく」と言っています。
それが最悪の結果に繋がったかは別にしても、SNS爆弾の威力は人の存在を無にすらしてしまうのです。
プロレスラーの木村花選手も、そうでした。
今のいじめは、SNSが絡んでいるだけ深刻で、その非道な力は破壊的です。
僕らは、そして皆さん高校生は、ウクライナ戦争もどうにかしなくてはならないし、このSNSという核兵器にも匹敵する悪魔の対処の仕方も考えないとなりません。
ryuchellさん、その存在自体がジェンダーを考えさせてくれる、尊いものでした。
僕もファンでした。心からご冥福をお祈りします。
野呂 一郎
清和大学教授