プリンタ設定に悪戦苦闘してわかった、「取説」こそマーケティングの命。
この記事を読んで、あなたが得られるかもしれない利益:プリンタ買ってはみたものの、設定ができずに苦労した話。僕が間抜けなのもあるが、取扱説明書の書き方がずさんすぎる。取説こそマーケティングのカギなのに。
製品とは何か
マーケティングとは4Pである、と教わります。
Product製品、Price価格、Place流通、Promotion販売促進というわけです。
その中で最も大事なのは、製品ですよね、まず売り物がないと話になりません。
この最初のPである製品は、パッケージ、デザイン、名前なども入ります。
しかし、取説はどうでしょうか。
取説も製品のうちですが、ここを論じた理論書は見たことがありません。
しかし、僕は取説こそ製品以上に重要なPの一部ではないかと、今回実感したのです。
取説がすべて
某有名メーカーのプリンタを買って、一通り組み立て、動くようになり、あとはWi-fiでパソコンとプリンタをとつなげれば、完成という段になって、うまく行かず、12時間後にやっと繋がったのでした。
ここの作業がわからず、取説を読んだのですが、ここの部分、完全にスルーしているんです。
「画面の指示に従ってやれ」とか、「オンラインガイダンスに従え」、しか書いておらず、オンラインの説明もデジタル音痴の筆者には超わかりにくいのです。
それでも、オンライン接続が難しいならば、USBケーブルとやらでパソコンとプリンターをつなぐことができることがわかり、偶然持っていたUSBケーブルをつなごうとしたのですが、端子が合わないのです。
ひょっとして、プリンタ本体に入ってるんじゃないかと思って、箱の中を見たのですが、そんなものはありません。
普通、取説には「何が入っているか」書いてあるはずなので、見たのですが、なにも書いてないんですよ。
各部位の名称と機能だけは書いてあるのですが、セット全体に何が入っているのか、書いてないんです。
だから、USBケーブルが付属品として入っているかは、取説ではわかりませんでした。
もちろん、入ってないんだから、入ってないんだろう的なことではありますが、これも基本的な情報がないのは、ユーザーにとって非常に不親切だと感じました。
二言目には、「オンラインガイドを見てくれ」というのも、不親切です。
オンラインでビジュアルがあっても、わかりにくいことも多々あるからです。
全体として、このメーカーの取説は「ユーザーに伝えるべきことを伝えてない」んです。
細部に神が宿る
よく、細部に神が宿る、などといいますが、取説で言うとそれは、一言一句をないがしろにせず、わかりやすく説明することです。
その言葉は適切なのか、もっといい、わかりやすい言い方があるのではないか、ユーザーによっては、メーカーが当たり前と思っていてもわからないかもしれないのではないか。
よい取説とは「ユーザー本位の姿勢」が一言一句に込められているか、につきます。
メーカー側は、ほとんどのユーザーがデジタル環境が万全で、手動でケーブルでパソコンとプリンターをつなぐなどありえない、そう考えているのでしょう。
しかし、そうじゃないユーザーもいるのです。
なぜ、オンライン接続ができないお客さんのために、USBケーブルくらいいれておかないのか、そういきどおった次第です。
取説を見れば、「ユーザーファースト」であるかないか、わかりますね。
取説という「製品」
僕は「取説」は宝の山だと思うんですよ。
取説は単なる冊子だけではありません。
取説とは、広い意味でのカスタマー・サポートのことです。
例えば無料の、迅速に対応するお客様トラブル相談サービス、です。
初期設定で苦労するユーザーが多いはずなので、これは便利ですが、ほとんどのメーカーがこういうサービスをやっていません。
サイトにQ&Aを載せて、それを見てくれ、どうしてもダメならば有料の窓口に電話しろ、みたいな対応です。
ここで、「どんなトラブルでもウェルカム、夜中もどうぞ」などとやったらどうでしょう。
企業の好感度はバク上がり間違いなしです。
コストがかかる、なんて言っているようじゃあ、そのメーカーの将来は?です。
経営学の優先順位は、評判>コスト、です。
加えて、先日お話した、カスタマー・タッチポイントの観点からも、顧客とのオープンなコミュニケーションを打ち出すのは、差別化戦略として間違いないものです。
逆に言うと、取説で細部を蔑ろにしている大企業は、ユーザー本位で細部にこだわる中小企業にやられちゃうよ、ということです。
「取説こそマーケティングの命なんじゃないか」、昨日はそんなことに気づかされた年末の一日でした。
野呂 一郎
清和大学教授
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?