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人事の明日を占う③今年、人事担当者は本腰入れて海外人材を獲得すべきである
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:ついに初任給41万!の企業が出てきた。のきなみ30万超えも、これは大盤振る舞いではなく、優秀な人材を確保するための投資にすぎないと、うそぶく大企業。グローバルな規模での人材獲得戦争の幕があいたのだ。もう海外に行って人材採るしかないって。
初任給ウォーズ勃発
損害保険大手の東京海上日動火災保険が、2026年4月に入社する大卒総合職の初任給を最大約41万円に引き上げる、とのことです。
人材獲得競争が激化する中、大手は力技で攻めてきましたね。
他の保険会社や銀行も、初任給30万超えのオファーが相次いでいるとのことです。
優秀な人材の確保に先手を打ったカタチです。
体力に劣る、中小企業はどうしたらいいでしょうか。
もうこの際、海外人材獲得に舵を切るべきではないでしょうか。
海外人材獲得のリスク
いや、そうは言うけれども、ウチもやってみたんだけれど、うまく行かないんだよ、という企業は多いですよね。
リスクはほぼ言い尽くされていると思うんです。
・言語の問題
・日本の社内文化に適応できない
・給与が年功的
・日本の生活になじめない
・手塩にかけたのに3年以内に他企業に移転
・心身のトラブル
これらは、結局「ストレスによる不適応」によるもの、ではないでしょうか。
これを異文化コミュニケーション理論では、「カルチャーショック」という概念を出して説明します。
カルチャーショック対策が出来てない日本企業
日本語でいう、カルチャーショックとは意味が違います。
カルチャーショックとは・・
ちょっと僕が昔使っていたファイルを2つ、出してみましょう。
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上は典型的なカルチャーショックの段階を示したもので、様々なケースがあることはご承知ください。
いずれにせよ、ストレス、フラストレーションがたまり、不適応になってしまうのです。
人事は海外人材にどんなケアをすべきか
まずは、トラブルの未然防止につとめましょう。
それは、海外人材を採ろうという意欲のある貴社の説明を、徹底的にすることです。
企業理念から、戦略、採用方針、キャリアプラン、生涯賃金、社宅制度、その他の人事制度など貴社全般のことから、日本での生活、日本人とは何か、などなどのレクチャーです。
ただ、最も重要なのはフラストレーションやストレスを極力少なくすることです。
そのために必要なのは、専属メンター(mentorお世話係)です。
外国人人材にメンターを付けている企業は、聞いたことがありませんが、海外人材獲得、そして定着のためには、欠かせない役割だと思います。
これからは、海外人材専門のメンターというジャンルが、出てくるはずです。
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それまでは、人事担当で海外通のあなたが、メンターをやりましょう。
人事担当者は海外の大学へ乗り込め
さて、もうすでに本気で海外の優秀なエンジニアの物色を始めている企業はやっているでしょうが、日本企業の人事は、まず、海外大学のキャンパスに乗り込むべきです。
社内言語が英語である企業は、人事が英語の宣材を持って、許可を取ってキャンパス内でデモンストレーションや説明会を行えばいいでしょう。
英語が共通語でない場合は、日本語学科のある大学に行きましょう。
僕は、ハタチのときに、韓国語を履修していた関係で、釜山女子大学の日本語学科を訪問したことがありますよ。
一昨年も中国の大学の日本語学科を訪問して、学術交換会に参加しました。
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両校とも、学生の日本語能力、日本での就職を希望する熱意は高いものがあるのに、日本からのアプローチはないようでしたよ。
100年の計を考えて先手を打て
冒頭に述べた、東京海上日動火災保険の初任給41万円の件、あれは人材獲得戦争の狼煙にほかなりません。
じゃあ、体力がないことを理由に、中小はなにもせず手をこまねいていていいのでしょうか。
少子高齢化はどんどん進み、若者の数は半世紀前の半分になり、企業はいやおうなく外国人材を活用するしかありません。
ならば、いまから、試行錯誤を繰り返し、失敗というコストを人事予算に組み込みながら、外国人採用、そして育成のノウハウを構築するべきではないでしょうか。
まず、貴社の人事に求められるものは、「覚悟」です。
野呂 一郎
清和大学教授